yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百十二話 笑顔を絶やさない -【新潟篇】歌手 三波春夫-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百十二話笑顔を絶やさない

新潟県長岡市出身の、昭和を代表する大歌手がいます。
三波春夫。
彼は、1964年の東京オリンピックのテーマソング『東京五輪音頭』を生涯、歌い続けました。
この歌に込める思いを、こんなふうに語っています。
「戦後初の日本の大イベントである、この東京オリンピックは、世界に向かって日本が『日本は、日本人は、こんなに頑張って復興しましたよ』と示す、晴れ舞台なんです」
戦争で戦い、シベリアで俘虜(ふりょ)になって、言葉では言い表せない体験をした三波には、特別な思いがあったのです。
さらに1970年に開催された大阪万博のテーマ曲も、彼が歌うことになります。
『世界の国からこんにちは』。
この歌でも、彼がいちばん言いたかったことは、日本ってすごいんだ、日本人はほんとうに頑張って生きているんだ、という強い思いでした。
内面に激しい葛藤を抱えながら、三波春夫は笑顔でした。常に、満面の笑顔でした。
「男の顔には、二種類あると思っています。苦労を刻んだ顔、もうひとつは、苦労を乗り越えた顔。私は、できれば後者を目指したい。顔に苦労を貼り付けて生きるのは、恰好悪いんです。平常心さえ保てていれば、自然と笑顔になる。私は、笑顔でいたい」
シベリアで囚われの身になっているときも、仲間を元気づけるために、喉から血が出るまで浪曲を歌い続けました。
笑顔になってくれさえすれば、それでいい、そう願いながら。
新潟が生んだ希代の演歌歌手、三波春夫が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

三波春夫は、1923年7月19日、現在の新潟県長岡市に生まれた。
父は、地元の「なんでも屋」。
書籍、文具、瀬戸物、印刷まで請け負う、言葉どおりの、なんでも扱うなんでも屋だった。
家には本があふれている。
三波は、物心がつくと、『少年倶楽部』を読んでいた。
本も好きだったが、外を走り回ることも大好きなガキ大将。天真爛漫な子どもだった。
しかし、7歳の秋、突然母が亡くなる。
哀しさより先に、驚きがきた。
「お母さんがいなくなるって、どういうこと?」
やがてやってくる、絶望的な喪失感。
父は、夜になると子どもを集め、母の仏壇の前で民謡を歌った。
「さあ、おまえたちも歌え。悲しんでいると、お母さんがあの世で泣いちゃうからな、さあ、歌え!」
末っ子の三波が、いちばん大きな声で歌った。
「いいぞ、それでいいんだ。笑おう、笑顔になろう。お母さんもそのほうが安心するからなあ」
仏壇の母の写真も心なしか、微笑んで見えた。

三波春夫が、9歳のとき、父が再婚。
継母は、優しいひとだった。
三波は、この義理の母になついた。
夜なべをする母に、本を読んで聞かせた。
「おまえは、声がいいねえ。お母さん、おまえの話を聞くのが大好きだよ」
そう言われて、うれしくなる。
学校でも、朗読を褒められた。
いちばん好きだった話が『俵星玄蕃と杉野十平次』。
晩年、三波春夫の真骨頂として大絶賛された長編歌謡浪曲の原体験は、このときにあった。
少年時代得意だったのは、スキーと相撲。
小柄ながら、がっしりとしていたので、相撲は強かった。
小技を繰り出し、大きな体の相手を負かす。
県の対抗試合に代表で出るほどの実力だった。
家に帰れば、すぐにラジオをひねる。
浪曲を聴くのが好きだった。
継母には言えなかったが、浪曲を聴くと、実の母を思い出す。
仏壇の前で歌っていた頃のせつなさと、あったかい気持ちがやってくる。
いつしか、何曲も暗唱できるようになった。
田んぼのあぜ道を歌いながら歩いていると、田植えの老人たちが笑顔になってくれた。うれしかった。
学校の帰りは、ラジオ代わりにあぜ道で歌った。
三波の声は、山間を抜け、真っ青な空に舞い上がった。

三波春夫の父は、ひとが良すぎて、売掛金を取り立てることができなかった。
苦しい家計。つい、株に手を出す。
大損した。
家業は倒産。
まわりのひとは、冷たかった。
夜逃げ同然で、東京に向かう。
夜汽車でふるさとを離れるしかない。
硬い三等車。
一家は無口だった。
「これ、食べなさい」
母が子どもたちに、お菓子をすすめた。
自分もお腹がすいているのに。
車窓から、暗い中、ポツンと灯りがついている家が見えた。
あったかいオレンジの灯り。
それを見て、三波の目から涙がこぼれた。
父が突然、浪曲を歌い始めた。
三波も続く。
家族みんなが笑顔になった。
「歌はいいなあ」父が言った。
三波は、思った。
一生、歌って生きていきたい。
歌でみんなを笑顔にしたい。
自分にできることは、それしかない。
東京に着くと、すぐに米屋に奉公に出される。
夜通しの米の選別は、13歳の子どもにはきつかった。
米の配達も重労働。
でも、配達途中、レコード店の前を通るのが好きだった。
流れてくる、広沢虎造の『次郎長伝』。
わくわくした。頑張れた。笑みがこぼれた。
芸能の世界に身を置きたいと、心から思った。
三波春夫は、いちばん哀しいときこそ、笑顔になることを覚えた。
心がついてこなくてもいい。
まずは笑ってみる。
そうすれば、やがて心も笑顔になる。

【ON AIR LIST】
東京五輪音頭 / 三波春夫
俵屋玄蕃 / 三波春夫
赤とんぼ / 三波春夫+コーネリアス
世界の国からこんにちは / 三波春夫

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今週のRECIPE

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秋のふわふわオムレツ -霜降りひらたけと蓮根のミルクソース-

今回は、長岡市の特産でもある、れんこんを使った料理をご紹介します。

秋のふわふわオムレツ -霜降りひらたけと蓮根のミルクソース-
カロリー
353kcal (1人分)
調理時間
25分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 4個
  • れんこん
  • 50g
  • 厚切りベーコン
  • 20g
  • 牛乳
  • 1カップ
  • 小さじ4/5
  • こしょう
  • 少々
  • バター
  • 大さじ1
  • 【A】片栗粉
  • 大さじ1/2
  • 【A】水
  • 大さじ1
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、れんこんは薄切りに、ベーコンは細切りにする。
  • 2.
  • 卵は卵白と卵黄を分けて、卵白に塩(小さじ1/4)を入れ角が立つまでしっかりホイップし、卵黄を1個ずつ加え、全体を混ぜる。
  • 3.
  • フライパンを中火で熱し、バター(小さじ1)を溶かして(2)を流し入れ平らにし、フタをして中火で2分程蒸し焼きにする。
  • 4.
  • フタを開けヘリが外れるようになれば、バター(小さじ1ずつ)をヘリから2か所入れ込む。フタをし弱火で3分程、様子を見ながら加熱する。
  • 5.
  • 中央に穴が開いてきて、全体がしっかりしてきたら火からおろし、器に盛る。
  • 6.
  • (5)のフライパンにベーコンとれんこん、霜降りひらたけを入れて炒め、残りの塩とこしょうを入れさらに炒める。牛乳を加え、ひと煮立ちしたら【A】の水溶き片栗粉でまとめ、オムレツの上からかける。
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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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