yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百三十五話 誰かを励ます生き方 -【山梨篇】翻訳家 村岡花子-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百三十五話誰かを励ます生き方

山梨県出身の文学者に『赤毛のアン』を日本に広めた翻訳家がいます。
村岡花子(むらおか・はなこ)。
2014年の3月から9月まで放送されたNHKの朝ドラ『花子とアン』は好評を博しました。
ドラマの原作になった村岡恵理(むらおか・えり)著の『アンのゆりかご 村岡花子の生涯』は、彼女の人生をつぶさに描いています。
村岡にとって、山梨県甲府市に生まれたことは、運命を左右する重要な要素でした。
明治時代前半の、海外への輸出品目の筆頭は、お茶と生糸。
その生糸の生産で、甲府は、日本一の一角を担っていました。
甲府にはさまざまな外国人が出入りし、その中には、カナダのメソヂスト派教会の宣教師の姿がありました。
生糸商人たちの間に、信仰を持つものが増えていきます。
村岡の父もまた、カナダ人との精神的な結びつきを強くして、洗礼を受けました。
メソヂスト派教会は、日本人女性の教育レベルの低さに着目、社会進出や自我の形成をする暇もなく、家にしばられて一生を終える女性を憂いました。
東京、静岡、そして山梨に、英和女学校を創設。
女子教育の重要性を訴え続けたのです。
そんな機運の中、村岡は父に連れられて2歳で洗礼を受けます。
カナダとの深い関係は、ここから始まっていたのです。
のちに翻訳することになる『赤毛のアン』の作者、モンゴメリもカナダ出身。
その原書は、第二次世界大戦勃発を受け、本国に戻るカナダ人宣教師から手渡されました。
『赤毛のアン』の原書を、村岡は風呂敷に包み、大切にしました。
戦時下、火の海を逃げるときも、原書だけはしっかり胸に抱きかかえ、守り抜いたのです。
灯火管制の中、少しずつ翻訳をしました。
不安と絶望に押しつぶされそうになると、アンに出会い、アンに励まされ、彼女は自分を保ったのです。
「私が励まされたこの本で、日本中の女性を元気にしたい」
その思いはやがて、彼女のライフワークにつながりました。
『赤毛のアン』の翻訳者、村岡花子が人生でつかんだ明日へのyes!とは?

『赤毛のアン』の翻訳者で知られる村岡花子は、1893年6月21日、山梨県甲府市に生まれた。
父の実家は、静岡でお茶の商いをしていたが、父はすでに熱心なクリスチャンで、カナダのメソヂスト派教会の活動が盛んな甲府にやってきた。
そこで母と出会い、母の実家で暮らした。
父は無類の文学好きで、当時としては珍しいほどリベラル。
女性にも教育が大切なことを知っていた。
「健児くんはすごいぞ、花子、健児くんのようになりなさい。健児くんに負けないように頑張りなさい」
それが、花子が聴いた、父の最初の口癖だった。
健児くんとは、メソヂスト派教会の牧師の息子。
神童とうたわれ、6歳にして大人顔負けの短歌を詠んだ。
ひとと比べられるのは辛かったが、父を喜ばせたくて花子は頑張る。
結果を出せば、父はいつも褒めてくれた。
「すごいじゃないか、花子。先生が褒めてたぞ。このままいけば、いつかあれだな、健児くんに追いつけるな」
父の考え方、ふるまいは、昔ながらの母の親戚には受け入れられなかった。
「女に学など必要ない」という古い考えが色濃く残る。
いつしか父の存在は浮き、家族の中で透明人間のように無視された。
繊細な花子は、そんな不穏な空気を感じながら育つ。
「私は、ほかの子どもと違う」
小さな違和感というヒビは、やがて、花子の心という器を壊していく。

『赤毛のアン』の翻訳家、村岡花子は、5歳のとき、東京・南品川に移り住む。
父が旧家の古い因習に息をつまらせ、思い切って上京を決断した。
海が見える高台にある尋常小学校に通う。
花子は放課後、ひとり砂浜にいった。
水平線を眺めながら、夢想する。
「わたしは大きくなったら、ひとりで家を建てて、ひとりで住むの。きれいにお掃除して、朝から晩まで本を読んで暮らすの」
物心ついて最初に体験した家族の違和感、不協和音は、花子に孤独というタネを植え付けた。
「ひとは、誰もひとを理解できないし、そもそも理解しようなどと思ってなどいない」
たったひとりで生きていく覚悟をした少女は、病に倒れると、辞世の句を詠んだ。
『まだまだと おもいてすこしおるうちに はや死のみちへ むかうものなり』。
それを見つけた両親は、号泣した。
病は治り、花子は元気になったが、彼女の心に巣食う闇は消え去りはしなかった。
家は貧しかったが、父は利発な花子の将来のために、出来る限りの教育を受けさせてあげたいと願った。
10歳で、東洋英和女学校に編入。花子は、寮生活を送ることになった。
この年、日露戦争が始まり、ひとびとの生活は戦火に飲み込まれていく。

東洋英和女学校の寮に入った村岡花子は、まず、恵まれた環境に狂喜した。
彼女の心をワクワクさせたのが、2階の書籍室。
古今東西の本がビッシリと並ぶ。
「これ、ぜんぶ、読んでいいんですか?」
寮母にこうたしなめられた。
「読んでもよろしいのですか?と尋ねるものですよ」
ここは、華族士族出身者の娘が学ぶ場所。
やがて、文化の違いを思い知ることになる。
立ち居ふるまいの違いにとまどう。
さらに彼女を困惑させたのが、英語だった。
尋常小学校では、アルファベットも習っていなかった。
でも、ここで生きていくには、英語ができなければ話にならない。
猛勉強する。
消灯時間になっても、窓からこぼれるわずかな灯りを頼りに、英単語を覚えた。
英語を話せるようになると、不思議なことが起きた。
世界が拡がる。
今まで凝り固まり、勝手に閉じていた重い扉が、いとも簡単に開く。
「そうか…世界は、私が思っているより広いんだ」
後日、村岡花子は『赤毛のアン』を翻訳したとき、主人公のアンも自分と同じような体験をしたことに感動する。
読書の体験は、素晴らしい。
この世に、自分と同じ考えのひとが、他にいることがわかるから。
幼くして感じていた違和感も孤独も、アンと共有できた。
「この素晴らしい体験を、たくさんのひとに味わってほしい」
『赤毛のアン』は、花子のバイブルになった。
彼女は、アンを通して、日本中の読者を励ます。
「忘れないで、その孤独を抱えているのは、あなたひとりじゃない」

【ON AIR LIST】
にじいろ / 絢香
トロイメライ / シューマン(作曲)、伊藤恵(ピアノ)
孤独な心(HEART WITH NO COMPANION) / RON SEXSMITH
ORDINARY MIRACLE / SARAH McLACHLAN

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと鶏ひき肉のごまみそ炒め

今回は、甲府市で盛んに生産されている野菜、なすを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと鶏ひき肉のごまみそ炒め
カロリー
273kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • なす
  • 2個
  • ピーマン
  • 2個
  • サラダ油
  • 大さじ2
  • 【A】長ねぎ
  • 5g
  • 【A】生姜
  • 5g
  • 【A】鶏ひき肉
  • 80g
  • 【A】みそ
  • 大さじ2
  • 【A】酒
  • 大さじ1
  • 【A】砂糖
  • 小さじ1/4
  • 【A】ごま
  • 小さじ2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。
  • 2.
  • なすは乱切りにする。
  • 3.
  • ピーマンはヘタと種をとり、2cm角に切る。
  • 4.
  • 【A】を混ぜ合わせておく。
  • 5.
  • フライパンに油を温め、(1)~(3)を炒める。全体がしんなりしたら【A】を加え、鶏肉に火が通るまで炒める。
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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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