yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百四十六話 他人と分かち合う -【愛媛篇】脚本家 早坂暁-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百四十六話他人と分かち合う

愛媛県松山市出身の脚本家が、3年前、88歳でこの世を去りました。
早坂暁(はやさか・あきら)。
テレビや映画の脚本、舞台の戯曲、ドキュメンタリーに小説、書いた作品は1000本以上と言われています。
ライフスタイルは、極めてシンプル。
敬愛する俳人、種田山頭火のように、ものを持たないことを流儀としました。
劇作家の三谷幸喜は、早坂の『天下御免』という作品を見て、脚本家を目指したとコメントしています。
「笑いを表地にすれば、同じほどの悲しみの裏地を付けなければならない」
そんな思いが、早坂脚本全てに通底しています。
代表作のひとつに、1981年2月からNHKで放送されたテレビドラマ『夢千代日記』があります。
主人公の夢千代は、母親の胎内にいたときに広島で被爆した胎内被爆者。
主演の吉永小百合は、夢千代を演じたことがきっかけで、のちにライフワークとなる原爆の詩の朗読を始めました。
早坂にとって原爆は、人生を通して向き合ったテーマでした。
最愛の妹を被ばくで亡くし、終戦後、焼野原の広島を見たときの衝撃は、生涯、彼の創作の根幹に根差したのです。
もうひとつ、早坂作品をひもとく重要な因子に、お遍路があります。
彼の生家は遍路道に面していて、生まれて最初に聴いた音は、通り過ぎていくお遍路さんの鈴の音だったと言います。
その音は、傷ついた心の音。
その音は、弱きもの、儚きものの音。
終生、平和の大切さを謳い、温かい眼差しで人間を見つめた偉大な脚本家・早坂暁が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

『夢千代の日記』や『花へんろ』の脚本家・早坂暁は、1929年8月11日、愛媛県温泉郡北条町、現在の愛媛県松山市に生まれた。
瀬戸内海に面した、小さな港町。
生家は、商いをしていた。
お店は、四国八十八ヶ所をめぐるお遍路さんの通り道に面していたので、絶えず白装束のひとたちが行き交う。
お遍路さん…病を治したい、大切なひとを供養したい、家族の幸せを願う…
中には表立って言えない悩みを抱えるひとも多数いて、遍路道には、哀しみや祈り、願いや葛藤が渦巻いていた。
早坂は、生まれながらの虚弱児。産声もなかった。
3歳になっても歩けず、母は心配した。
実家の菩提寺に相談に行くと、住職は言った。
「できるだけ早く、八十八ヶ所、寺を回りなさい」
母は、早坂を乳母車にのせ、およそ2ヶ月半、1200キロの旅に出た。
出発は薫風が心地よい春だったが、やがて陽射しはキツクなる。
早坂の記憶は、知らない男性におんぶしてもらったこと、知らない女性にもらい乳のおせったいを受けたこと。
たくさんのひとたちの世話になり、助けられ、ひとさまのおかげで、母は八十八ヶ所周り切った。
帰るとすぐに我が息子は歩いた。
その姿を見て母は、号泣した。

愛媛県出身の脚本家の巨匠、早坂暁が3歳のとき、妹ができた。
できたと言っても、母の子ではない。
お遍路道に、そっと置かれた捨て子だった。
早坂の家が大きな商店だったからか、前にも捨て子が置かれた。
そのときは母親がほどなく現れたので、今度もそうだろうと、母は面倒を見ることにした。
季節が春だったので、春子と名付ける。
結局、親が店を訪れることはなかった。
早坂と春子は仲がよかった。
早坂は実の妹ではないことを知っていたが、春子は知らずに育つ。
二人の成長と共に、戦争が激化。
早坂は、海軍兵学校に入隊した。
長崎から山口県防府市の部隊に移る。
春子は母に、「お兄ちゃんに、どうしても、どうしても会いたい」と言った。
空襲警報が鳴り響く中、母は春子に、早坂がほんとうの兄でないことを告げた。
春子は、目を輝かせて喜んだ。
「好きになってもいいのね、あたし、お兄ちゃんを好きになってもいいのね」
1945年8月。
大好きな兄に会うため、防府に向かう春子。
広島駅に着いたのが、8月6日だった。
原爆投下。
早坂は二度と、春子に会うことはできなかった。
防府から焼野原の広島に降り立ったときは、夜だった。
無数の燐が空中に浮かぶのを見た。
そのひとつが、春子だと思った。

早坂暁は、50歳のとき、癌で余命1年半の宣告を受ける。
病の源が、被ばくにあると確信した。
「そうか、オレは死ぬんだ」
ビバルディの「四季」を聴けば気持ちが安まるかと思ったが、泣けた。
上野に出て、博物館に入ろうとするが、やけになって展示物を壊したら大変だ。
ふらふらと辿り着いた池袋。
高層ビルの水族館に入った。
そこには、水槽から出られないのに、悠々と堂々と生きている魚たちがいた。
ただただ群泳するアジ。ひらひら泳ぐエイ。
中でも感動したのが、タカアシガニだった。
海底にたたずんで、動かない。
見事に平気な顔をして生きている。
平気で生きていければ、平気で死ねるのではないか。
そう思った。
以来、38年間。
病の苦痛と寄り添いながら、早坂暁は書き続けた。
たくさんの賞をもらい、多くの賛辞に包まれても、関心があるのは次の作品だけだった。
血の執着より、水の連帯を重んじた。
『夢千代日記』では、家族より、たまたま知り合った他人同士の情愛を丁寧に描いた。
早坂暁は、中学生にこんなメッセージを残した。
「人間が一番学ばなければならないことは、どうやって助け合い、どうやって分かち合うかということです」。

【ON AIR LIST】
船出の歌 / 山口崇、林隆三、津坂匡章(『天下御免』主題歌)
みんな夢の中 / 玉置浩二(『花へんろ 特別編「春子の人形」』エンディング)
夢千代日記 / 吉永小百合
平和の鐘が鳴る / サザンオールスターズ

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとなすの山椒炒め

今回は、松山市の特産野菜、なすを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとなすの山椒炒め
カロリー
107kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • なす
  • 2本
  • ごま油
  • 大さじ1
  • しょうが
  • 1片
  • 【A】ポン酢
  • 大さじ2
  • 【A】砂糖
  • 大さじ1/2
  • 【A】山椒(粉)
  • 小さじ1/2
  • みょうが
  • 2個
  • 長ねぎ
  • 1/4本
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、なすはヘタを取り縦4つに切る。
  • 2.
  • しょうがはみじん切りにし、【A】と合わせる。
  • 3.
  • 長ねぎは千切り、みょうがは輪切りにする。
  • 4.
  • フライパンにごま油を入れ、なすを焼き、霜降りひらたけを加えて炒め、(2)で調味する。器に盛り、ねぎとみょうがを飾る。
  • recipe LIST

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ARCHIVE

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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