yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百五十四話 まず人として生きる -【大分篇】小説家 野上弥生子-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百五十四話まず人として生きる

大分県の東海岸に、今もなお城下町の佇まいを残す、歴史ある街があります。臼杵市。
この街に生まれ、99歳で亡くなるまで、生涯現役の作家として活躍した小説家がいます。
野上弥生子(のがみ・やえこ)。
実話をもとにした問題作『海神丸』や、戦争に傾いていく時代に抗う青年の苦悩を描いた『迷路』、女流文学賞を得た『秀吉と利休』など、重層で骨太な作品群は、のちの作家たちにも多くの影響を与えました。
彼女の流儀は、小説家である前に、まず、ひととしてどう生きるかでした。
いい作品を書くためであれば、なりふり構わず破天荒に生きるという無頼派とは、一線を画したのです。
ただひたすらに規則正しい生活をおくり、母として3人の息子を育て上げました。

晩年のインタビューでは、こんなふうに答えています。
「私を、小説家、作家と呼んでくださるのですが、私は今も、自分が作家だと名乗るのをおこがましいと思っているのです。
まだまだ、修業が足りません。まだまだ、作家と呼ばれるには足りません」
臼杵市にある野上弥生子文学記念館は、彼女が暮らした生家の一部を改装したもので、少女時代の勉強部屋が展示されているほか、多くの遺品に出会うことができます。
中でも、彼女の師匠、夏目漱石からの手紙は、貴重な資料です。
漱石は野上の作品に対する感想と共に、こんなアドバイスをしています。
「美文的なものを書き、漫然と生きず、文学者として年を取ることをおすすめします」
ひととしてまっとうでありながら、文学者を貫いた作家・野上弥生子が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

今年生誕135年、没後35年を迎える女流文学の文豪・野上弥生子は、1885年5月6日、現在の大分県臼杵市に生まれた。
臼杵は、穏やかな入り江を有する漁業や造船の街。
そして、醤油や味噌の醸造どころでもあった。
白壁の城下町は歴史の重みを受け継ぐとともに、港から西洋のさまざまな文化が入ってくる不思議な街だった。
野上の実家は、醤油の醸造元。裕福だった。
家ではたくさんの従業員が働き、ひとの出入りも多かった。
幼い彼女は、家の中の床の間や襖や袋戸に画かれた絵を見るのが好きだった。
中国絵画の影響を受けた南画。
そこに描かれているのは、美しい自然と寄り添う風流な家。
家では唐人が茶をたてたり、琴を弾いている。
質素で、揺るぎがない。
誰もいない座敷で座布団にちょこんと座り、その絵をじっと眺めているうちに、まるで自分も滝の音や川のせせらぎを聴いているような気持になった。
いつか、自分もこんな家を持ちたい。
小さくていい。こんな家で暮らしたい。
それが少女の夢になった。

99歳まで現役作家として書き続けた野上弥生子にとって、野上豊一郎(のがみ・とよいちろう)と結婚したことは、人生の大きな転機になった。
上京して明治女学校に入学した弥生子は、本郷にある伯父の家に下宿。
英語の家庭教師をしてくれたのが、豊一郎だった。
彼は、2学年上の、同じ臼杵出身。
早くから文学に目覚め、第一高等学校、東京帝国大学と、夏目漱石に師事した。
まもなく夫となった豊一郎から、文学の仲間のこと、漱石のことなどを聞く。
ワクワクした。
文章を書くことで人生と向き合えるなんて、こんなに素晴らしいことはない。
家事の合間に少しずつ、小説を書くようになった。
あふれてくるアイデア。
想像力は絶え間なく彼女の頭を駆け巡る。
ある夜、自分の書いた作品を夫に読んでもらう。
柱時計の音だけが鳴る時間が過ぎて、やがて夫が分厚い原稿用紙をとんとんとそろえた。
「いいね、弥生さん、いいよ。夏目先生に読んでもらおう」
こうして野上弥生子は、漱石の推薦で『ホトトギス』という文芸誌に『縁(えにし)』という小説を発表した。

ある日、野上弥生子は、夫に呼ばれた。
「小説は、弥生さん、キミに譲るよ。僕はもう小説を書くのをやめる。これからは能の研究と英文学に人生を捧げることにするよ」
以来、夫は、執筆を応援してくれた。
ただ、家事や炊事、育児も弥生子の仕事。
それでも、弥生子は書き続けた。
体を壊しては子どもたちを育てることができないので、徹夜はしない。
無茶をせず、毎日毎日コツコツと書く。
頭のどこかに、幼い頃見た南画の世界があった。
川のほとりで小さな家に住む。
茶をたて、琴を奏でる暮らし。
茶や琴の代わりに、自分は小説を書いているのだ。
この小さな家での暮らしは、守りたい。
守ってこその、小説だ。
声高に男尊女卑を訴えることもしなかった。
ただ、知識と教養を持ちなさいと後進に伝えた。
怒鳴っても、わめいても、何も変わらない。
大切なのは、精神的に自立すること。
そのためには、知識と教養が必要だ。
一方で、知識人の葛藤や挫折も描いた。
理想と現実は、永遠のテーマ。
まず大切なのは、日々の暮らし。
ひととしての生活をないがしろにしないこと。
作家・野上弥生子が、なぜ100歳近くまで書き続けることができたのか。
それは彼女が、生活を重んじ、小説家としてより、人間としてまっとうに生きたいと願ったからに違いない。

【ON AIR LIST】
THE NEARNESS OF YOU / James Taylor
OUR HOUSE / Crosby, Stills, Nash & Young
THE COLOR OF ROSES / Beth Nielsen Chapman
NEVER CRY BUTTERFLY / 竹内まりや

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとかぼちゃの甘辛炒め

今回は、大分県臼杵市でも盛んに栽培されている野菜、ピーマンを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとかぼちゃの甘辛炒め
カロリー
250kcal (1人分)
調理時間
10分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【4人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 牛切り落とし
  • 120g
  • かぼちゃ
  • 120g
  • ピーマン
  • 1/2個
  • 【A】砂糖
  • 大さじ1
  • 【A】しょうゆ
  • 大さじ1
  • 【A】酒
  • 大さじ1
  • 【A】みりん
  • 大さじ1
  • 少々
  • 小麦粉
  • 適量
  • サラダ油
  • 小さじ2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは食べやすくほぐす。
  • 2.
  • かぼちゃは5mm厚さの一口大に、ピーマンは1cm幅に切る。牛肉は塩を振って、小麦粉をまぶしておく。
  • 3.
  • フライパンにサラダ油小さじ1を入れて熱し、かぼちゃを並べてフタをし、焼きつける。火が通れば一度取り出し、残りの油を入れる。
  • 4.
  • 牛肉、霜降りひらたけの順に炒め、さっと火が通ればかぼちゃ、ピーマンを入れる。
  • 5.
  • 合わせた【A】を回しいれ、からめ合わせる。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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