yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第二百七十二話 自由を手放さない -【鳥取篇】写真家 植田正治-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第二百七十二話自由を手放さない

今年没後20年を迎える、世界的に有名な写真家がいます。
ふるさと鳥取県を活動の拠点とした、写真界のレジェンド、植田正治(うえだ・しょうじ)。
福山雅治のシングル『HELLO』のジャケット写真を撮影。
以来、植田の写真に感動した福山は、カメラの師匠として植田を慕い続けました。
鳥取県西伯郡伯耆町にある植田正治写真美術館を訪れると、彼の足跡がわかります。
コンクリート打ちっぱなしの美術館は、自然豊かな大山山麓にあり、建築家・高松伸の設計による館内からは、水面に映る“逆さ大山”が楽しめます。
植田の独特な写真は「植田調」と言われ、今でもフランスでは、アルファベットでUEDA-CHOとして写真家の間でリスペクトされています。
植田は、砂丘を愛しました。
「砂丘は、巨大なホリゾントである」という言葉どおり、海のそばの砂丘にさまざまなひとを配し、写真におさめたのです。
彼にとって、鳥取県の境港で生まれたことは、重要でした。
日本海側で最大の水産都市。
江戸時代は、千石船が行き来して、日本中の物資や文化が集まった場所。
写真がまだ日本で珍しかった頃に、港には、真新しいカメラが陳列されていました。
植田は19歳の若さで、この街に写真館を開くのです。
以来、70年間近く、彼は世界的に名を馳せても鳥取に残り、「写真屋のおじちゃん」として街の人々に愛され続けたのです。
えらそうにせず、撮りかたを聞かれれば、子どもだろうが老人だろうが懇切丁寧に教え、いつもカメラが大好きだった少年の心を忘れませんでした。
彼が最も大切にしたのは、プロ、アマチュアなど関係なく、自由に写真を撮る、ということだったのです。
鳥取が生んだ伝説の写真家・植田正治が、人生でつかんだ明日へのyes!とは?

今も世界にその名を刻む写真家・植田正治は、1913年、大正2年に、鳥取県西伯郡境町、現在の境港市に生まれた。
父は、履物を作り販売する店を営んでいた。
兄と妹がいたが、早くに他界。
ひとり息子のように育ったが、ともに成長することのできなかった兄と妹は、植田の心にしっかりと生き続けた。
小学校では、算数は苦手だったが、国語と図画工作が得意。
クレヨンをいつも持ち歩き、暇を見つけては絵を画いた。
10歳のとき、衝撃的な出会いがあった。
斜め向かいに住んでいる青年が、座敷に暗室を作っていた。
見学させてもらう。
電球にまかれる赤い布。
怪しい雰囲気の中、写真を焼き付ける。
何もない紙に、ふわっと人間の顔が浮かび上がってきた。
驚いた、魔法のようだと思った。
「これが写真だよ」
青年の優しい声が、耳に残った。
いま自分が見たものを、この世に残すことができる。
モノクロの風景に自分の好きな陰影をつけて。
写真の魔力に少年の心は、ふるえた。

写真の魅力にとりつかれた植田正治は、中学に入ると、さらに夢中になった。
授業中、カメラ雑誌を読んでいて、先生に怒られる。
家でも、台所の押し入れの中を暗室に見たて、現像。
父にひどく叱られた。
「写真は、道楽だ! そんなものにかまけてどうする!」
それでも、一日の大半を写真のことだけ考えて過ごした。
あまりの熱意に、父が折れた。
父が示したとおりの成績をおさめたので、カメラを買ってもらう。
うれしくてうれしくて、片時もカメラを離さなかった。
寝るときも、手をのばせば触れられるところに置いた。
被写体には困らない。
路地裏の猫、港で働く男たち、駄菓子屋の看板…。
写真の構図は、絵を画くことに似ていた。
ひとり息子だった植田にとって、職業として写真家になるという選択はなく、跡継ぎになるというレールを外れるわけにはいかない。
鳥取にいながら、カメラ雑誌の懸賞に応募。
18歳のとき、「浜の少年」で初入選を果たした。
フランスに新しい写真芸術の波が来ていることを知り、ワクワクする。
前衛的な写真。
そこには、なんでもありの自由な風が吹いていた。
ただ、自分はここにいるしかない。
今、ここでやれることはなんだろう…。
なんでもありだからこそ、何か原点になる場所がほしい。
植田は、砂丘に立った。
空と海と砂だけの世界。
「ここを自分のスタジオと考えよう」
そのとき、写真家・植田正治が誕生した。

世界的な写真家・植田正治は、19歳で地元・境港に写真館を開く。
七五三、入学や卒業式、お見合い写真や結婚の記念、さまざまなポートレートを撮りながら、時間があれば砂丘に出かけた。
興味を持った被写体は、子ども。
でも、そこに日常性や生活感、彼等の環境を映し出す気はない。
あくまで重要なのは、ただの被写体としての子どもだった。
植田は思っていた。
「僕は、汚いものは撮らない。可哀そうなものは撮れない」
対象を肯定すること。
泣きべそをかいた男の子を撮っても、構図がスタイリッシュでクール。
感情移入が目的ではなかった。
リアリズムの湿った空気感を排するには、砂丘というシンプルな舞台がちょうどいい。
灰色の空と、灰色の砂。
ここに立ってもらうと、被写体は素になった。
引き算の果てのモノクロ写真は、見るひとに不思議な想像力を与えた。
「ひとは、シンプルに削ぎ落された場所でこそ、最も自由になれる」
植田正治は、写真を撮り続けた。
鳥取の砂丘は、そんな彼を見守り続けた。

【ON AIR LIST】
HELLO / 福山雅治
KAMERA / Wilco
自由を求めて / Chris Rea
3びきのくま / 大貫妙子、坂本龍一

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけのマヨわさサラダ

今回は、境港市の特産でもある、マグロを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけのマヨわさサラダ
カロリー
205kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 100g
  • アボカド
  • 1/2個
  • 生マグロ
  • 50g
  • 【A】
  • わさび
  • 5g(お好みで)
  • マヨネーズ
  • 大さじ2強
  • しょうゆ
  • 少々
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。
  • 2.
  • (1)を器に入れラップをし、お湯を張った深めのフライパンに入れてフタをして中火で3分程蒸す。
  • 3.
  • アボカドとマグロを食べやすい大きさに切る。
  • 4.
  • 【A】を混ぜ合わせ、(2)(3)と和える。
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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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