yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第三百五十話 鈍く平凡であることから始める -【山口篇】経済学者 河上肇-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第三百五十話鈍く平凡であることから始める

大正デモクラシーの最中にあって、いち早く格差社会、貧困について論じた経済学者がいます。
河上肇(かわかみ・はじめ)。
彼が書いた大ベストセラー『貧乏物語』を題材にした舞台が、先月、紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで上演されました。
このこまつ座の公演は、劇作家・井上ひさしが24年前に書いた戯曲の再演。
河上肇をめぐる、妻、娘、女中など、6人の女性の生きざまを描いた秀作です。
大正5年、第一次世界大戦の好景気に沸く日本に、少しずつ、でも確実に押し寄せる貧富の差に翻弄される人々。
河上は、「貧富のない世界は、実現できないのか」、それでいて、「頑張ったものには、頑張っただけ富がもたらされる社会」は、存在しえないのか。
悩み、苦しみ、その答えをマルクス経済学や無我の愛、利他主義に求めたのです。
いま、なぜ河上肇なのか。
いま、なぜ『貧乏物語』なのか。
あらためて、時代や作品を繙くと、今、私たちが直面している問題に重なるものが見えてきます。
全てのひとが公平に扱われる平等な社会。
その持続の背景にある、経済の発展。
そのために必要な開発という名の欲望。
河上肇は、さまざまな先人の影響を受けつつ、人類永遠の命題ともいえる「貧困」を、生涯のテーマにしました。
戦争の渦の中、危険分子のリーダーと目され、検挙、投獄。
牢獄の中でも、経済や哲学を学び、真理を追い求める姿勢を崩すことはありませんでした。
彼は、最初から頭脳明晰、才気煥発な人物だったのでしょうか。
自叙伝では、自らを、鈍い根っこと書く、「鈍根の私」と称しています。
「鈍く、平凡だから、私は誰よりも時間をかけるしかないと悟りました。私は優秀でも天才でもないところからスタートしたのです」
山口県岩国市出身の唯一無二の経済学者・河上肇が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

大正時代の名著『貧乏物語』で知られる経済学者・河上肇は、1879年10月20日、現在の山口県岩国市に生まれた。
旧岩国藩士の家柄。
父は、村長、町長を歴任する、辺り一帯の名士だった。
しかし、不器用で実直な父は、お金とは無縁。
貧しさはいつも傍らにあった。
肇が母のお腹にいるとき、両親が離縁。
彼は、産みの母を知らずに育つ。
父はほどなく、再婚。
すぐに男の子を出産すると、継母は、肇をいじめた。
片手を持って井戸につるす。
肩が脱臼し、大騒ぎになる。
祖母は肇をひきとることにした。
肇は、祖母に甘えた。片時も離れない。
夜も祖母の隣でないと、眠れなかった。
自分の存在理由に負い目を感じる。
村長だった父は、肇の小学校進学をなぜか急いだ。
4歳5か月で、初等科入学。
このことが、肇のコンプレックスをさらに強くするとは、父は思いもしなかったに違いない。
習字、読み書き、算術。
何をやっても、同級生に負ける。
うまくいかない。
彼はその理由を、おのれの愚鈍さゆえだと思った。

明治、大正、昭和の激動の時代を生きた経済学者・河上肇は、幼少期、わがままに育った。
祖母は、痩せて病弱で不憫な肇を、とことん甘やかした。
肇はたいへんな癇癪持ちになる。
泣きだすと手がつけられない。
あまりの凄さに、大人のほうが離れの小屋に逃げる始末。
学校では、おとなしく、誰かと仲良くなることができない。
ただ、先生が村長である父に忖度し、成績はいつもよかった。
年長になると、肇は世の中のしくみに気づく。
「ボクは、相変わらず、鈍くて平凡だ。
なのに、みんながすごいという。天才だ、神童だとまつりたてる。
そんなことはない。
ボクは、ひとつのことを成し遂げるのに、誰よりも時間がかかる。そのことを覚えておこう。
くれぐれも、誰かより優秀だと思わぬようにしよう」
中学校は、全寮制だった。
食事どき。肇の味噌汁には、具が入っていなかった。
食事の鐘が鳴り、寮生はいっせいに食堂に向かうが、おっとりした肇は、いつも最後。
味噌汁に具は残っていなかった。
誰もが、自分の味噌汁に具をたくさん入れたい。
自分の欲を消す、無我、利他の気持ちがないと、平等に具が配分されることはない。
河上肇は、具のない味噌汁をすすりながら思った。
「人間に、自分の利益より他人の利益を尊重する心を持つことは、可能だろうか。
でも、それをしなくては、誰もが幸福な世の中は訪れない」

河上肇は、東京帝国大学在学中に、衝撃的な演説を聞く。
足尾銅山鉱毒事件に関する救済の会。
田中正造らの話す言葉に、体を撃ち抜かれたような感動を覚え、その場で、まとっていた外套、マフラー、羽織などを寄付。
寒空の中、まるで身ぐるみをはがされたような恰好になる。
「東京毎日新聞」は、「特別な志のある大学生」として取材。
河上は、新聞に取り上げられた。
その後も、内村鑑三を尊敬し、キリスト教にものめりこむ。
「右の頬を打たれれば、左の頬を差し出しなさい」という教えを座右の銘として、絶対的利他主義を打ち立てた。
時には、まわりの賢人の影響に振り回され、自らの主張を、修正、訂正、謝罪することもあったが、基本的に、ぶれない一点があった。
それは、どんなに鈍く、平凡で、むらの多い性格であっても、いまの日本を少しでもよくしたいという理想は、決して失わない。
彼は、こんな言葉を遺した。
「辿りつき振り返り見れば山河を越えては越えて来つるものかな」
ひとによって目指す山は、違う。
でも、山を越えようと思った志は、永遠に心に刻まれる。

【ON AIR LIST】
貧乏ブルース / 桑田佳祐
WISE EYES / Linda Lewis
YOUR MIRROR / Simply Red
HIGHER THAN THE WORLD / Van Morrison with George Benson

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけとれんこんの洋風きんぴら

今回は、山口県岩国市の特産でもある食材、れんこんを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけとれんこんの洋風きんぴら
カロリー
207kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • れんこん
  • 200g
  • にんじん
  • 1/4本
  • にんにく
  • 1片
  • ベーコン
  • 2枚
  • 大さじ1
  • 粉チーズ
  • 大さじ1
  • ふたつまみ
  • 黒こしょう
  • 適量
  • オリーブオイル
  • 小さじ2
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。れんこんとにんじんは半月切りにし、れんこんは酢水にさらす。にんにくは薄切りにし、ベーコンは短冊切りにする。
  • 2.
  • フライパンにオリーブオイルとにんにくを加え弱火で加熱する。香りが立ってきたらベーコン、水気を切ったれんこん、にんじん、霜降りひらたけを加えて炒める。
  • 3.
  • 全体に油がまわったら、酒を加えてフタをし、蒸し焼きにする。
  • 4.
  • 火が通ったら粉チーズを加え、塩と黒こしょうで味を調える。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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