語り手:乳酸菌

トンネルを抜けるとそこはおなかの中だった…。 乳酸菌は今日も人と生きている。 ボクらは乳酸菌。古くからこの星に住み、 人間や動物の体に宿り、日々活動しています。 そんな乳酸菌たちが宿主と一緒に喜んだり、悲しんだり。 時には励ましたり…おなかの中から 語りかけるストーリィをお楽しみください。

メッセージ

番組ではメッセージを募集しています!番組の感想や乳酸菌くん(語り手)へのメッセージをお寄せください。

2011年10月23日(日)

山登り

ボクの宿ぬしは、27歳の女性です。
彼女が、彼と山登りに来たのは、これで3度目。
標高1000メートルちょっとの山は、二人にとって、程よい高さ。
でも今回、彼女には、頂上に着いてからも、越えねばならない、ヤマがありました。

まだ、彼から言ってもらえていない「好き」という言葉。
今回の山登りに、彼女は自分から伝える決心をしてきました。

頂上について、二人で飲む、ポットの温かいコーヒー。
カップを手渡すときに、二人の手が触れます。

いま、言わなきゃ!

突然降り出した雨。
雨宿りする二人。

ねぇ、今がチャンスじゃない? 言わなきゃ!

帰り道、彼女はまた、彼の背中を追いかけていきます。
彼女が彼の背中を見つめるように、ボクらは、おなかのなかからずっと、彼女を見守り続けます。

ねぇ見て! きれいな虹が出たよ!
いまが伝えるチャンスじゃない?

でも、いっか。
さっきから、ずっと手を繋いでるもんね。
じゃあ、また、日曜のお昼に。