ボクの宿ぬしは、27歳の女性です。
彼女が、彼と山登りに来たのは、これで3度目。
標高1000メートルちょっとの山は、二人にとって、程よい高さ。
でも今回、彼女には、頂上に着いてからも、越えねばならない、ヤマがありました。
まだ、彼から言ってもらえていない「好き」という言葉。
今回の山登りに、彼女は自分から伝える決心をしてきました。
頂上について、二人で飲む、ポットの温かいコーヒー。
カップを手渡すときに、二人の手が触れます。
いま、言わなきゃ!
突然降り出した雨。
雨宿りする二人。
ねぇ、今がチャンスじゃない? 言わなきゃ!
帰り道、彼女はまた、彼の背中を追いかけていきます。
彼女が彼の背中を見つめるように、ボクらは、おなかのなかからずっと、彼女を見守り続けます。
ねぇ見て! きれいな虹が出たよ!
いまが伝えるチャンスじゃない?
でも、いっか。
さっきから、ずっと手を繋いでるもんね。
じゃあ、また、日曜のお昼に。