読み活
2015.09.08
「本の傷や線を紐解く、痕跡本の楽しみ方」
ちょっと変わった古本の楽しみ方。それが「痕跡本」。メモだったり、落書きだったり、線ひきだったり、前の持ち主の痕跡が残された本のこと。普通の価値観でいけば「きれいな本」新品同様の本を求めるのですが、あえて前の持ち主の痕跡に注目し、その持ち主がどんなことを思ったのか、どんな人なのか、妄想を楽しむというレアな読書スタイル。そんな痕跡本を楽しみとして提案するのが、古書店オーナーの古沢和宏さんです。

【最初に出会った、不気味すぎる痕跡本】
「僕が痕跡本の面白さに目覚めたきっかけは、ホラー漫画家の日野日出志さんという方の短篇集『まだらの卵』っていう本なんです。買ってくるときはビニールに包まれていて分からなかったんですけど、うちに帰ってからギョッとしました。なんと、表紙から中のページに向かって何百箇所も針でザクザクザクザクって穴が空いてたんです。その穴のせいで、ページが抜け落ちちゃってるところとか、傷んじゃってるところもあって。しかも時間が経つごとにシミとかで変色していって、なんとも言えない生々しさというか、気持ち悪さがそこにはあったんですよ。」
【痕跡本を受け入れた瞬間】
「この本の傷がある部分って表紙のど真ん中なんで、本を読むと必ずそこに指が当たるんですよね。で、中でちょっと怖い話が展開しているわけですよ。鳥肌がたつような事件や、おぞましい出来事が起こる度に、指先に活き活きと針の穴の感触が分かるわけなんですね。そうなると、その中で起こってるものが、よりその指から傷みたいなものが生々しく感じるんですよ。『いやぁ、気持ち悪いなぁ。』『なんで俺こんな本読んでるんだろう』って最初は思ったんですけど。よく考えたら、ホラー漫画で、そういう気持ち悪いのを体感しながら読めるのって、ものすごく必要な読書体験とも言えるわけですよね。この本でしか味わえない『体験するホラー漫画』って言うことが僕の手の中で起こってるってことなんですよ。そういう風に考えた瞬間に、この傷がこの本に無くてはならない存在に、僕には思えたんですよ。」
【妄想はポジティブな方へ】
「僕が痕跡本を読んでいく上で出来る限りした方がいいなと思うのは、できるかぎり無茶でもいいから楽しい方に考えるほうがいいということです。ここに書かれてる痕跡の中で結局正解なんてどこにもないわけで。ということはこの中に残された証拠の中から、いかにその中から物語をより魅力的に妄想して、より楽しく楽しんだほうが勝ちじゃないですか。それが結局この本に書き込んでいる人へのリスペクトになると思うんですよね。その人が何らかの理由でやったものに対して、ネガティブなイメージでそれを読み解くよりも、ポジティブなイメージでそれを読み解いたほうが、絶対その人にとっては、たとえ答えが間違ってたとしても、悪い気はしないじゃないですか。それは僕が痕跡本を楽しむ上での、自分の中での楽しみ方としても、こっちのほうが楽しいよっていう意味もありますし、前の持ち主に対する享受というか、敬意の示し方でもあるかなって僕は思ってます。」
痕跡本の虜になった古沢さん、痕跡本に関する書籍も書かれています。実際の痕跡が詳しく紹介されているので、こちらもぜひチェック。
「痕跡本のすすめ」
(Amazon)
「痕跡本の世界 古本に残された不思議な何か」
(Amazon)

【最初に出会った、不気味すぎる痕跡本】
「僕が痕跡本の面白さに目覚めたきっかけは、ホラー漫画家の日野日出志さんという方の短篇集『まだらの卵』っていう本なんです。買ってくるときはビニールに包まれていて分からなかったんですけど、うちに帰ってからギョッとしました。なんと、表紙から中のページに向かって何百箇所も針でザクザクザクザクって穴が空いてたんです。その穴のせいで、ページが抜け落ちちゃってるところとか、傷んじゃってるところもあって。しかも時間が経つごとにシミとかで変色していって、なんとも言えない生々しさというか、気持ち悪さがそこにはあったんですよ。」
【痕跡本を受け入れた瞬間】
「この本の傷がある部分って表紙のど真ん中なんで、本を読むと必ずそこに指が当たるんですよね。で、中でちょっと怖い話が展開しているわけですよ。鳥肌がたつような事件や、おぞましい出来事が起こる度に、指先に活き活きと針の穴の感触が分かるわけなんですね。そうなると、その中で起こってるものが、よりその指から傷みたいなものが生々しく感じるんですよ。『いやぁ、気持ち悪いなぁ。』『なんで俺こんな本読んでるんだろう』って最初は思ったんですけど。よく考えたら、ホラー漫画で、そういう気持ち悪いのを体感しながら読めるのって、ものすごく必要な読書体験とも言えるわけですよね。この本でしか味わえない『体験するホラー漫画』って言うことが僕の手の中で起こってるってことなんですよ。そういう風に考えた瞬間に、この傷がこの本に無くてはならない存在に、僕には思えたんですよ。」
【妄想はポジティブな方へ】
「僕が痕跡本を読んでいく上で出来る限りした方がいいなと思うのは、できるかぎり無茶でもいいから楽しい方に考えるほうがいいということです。ここに書かれてる痕跡の中で結局正解なんてどこにもないわけで。ということはこの中に残された証拠の中から、いかにその中から物語をより魅力的に妄想して、より楽しく楽しんだほうが勝ちじゃないですか。それが結局この本に書き込んでいる人へのリスペクトになると思うんですよね。その人が何らかの理由でやったものに対して、ネガティブなイメージでそれを読み解くよりも、ポジティブなイメージでそれを読み解いたほうが、絶対その人にとっては、たとえ答えが間違ってたとしても、悪い気はしないじゃないですか。それは僕が痕跡本を楽しむ上での、自分の中での楽しみ方としても、こっちのほうが楽しいよっていう意味もありますし、前の持ち主に対する享受というか、敬意の示し方でもあるかなって僕は思ってます。」
痕跡本の虜になった古沢さん、痕跡本に関する書籍も書かれています。実際の痕跡が詳しく紹介されているので、こちらもぜひチェック。
「痕跡本のすすめ」
(Amazon)「痕跡本の世界 古本に残された不思議な何か」
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