年末年始に楽しみにしている人も多い、この冬のお正月映画。注目作は？見どころは？お話をお聞きしたのは、映画ライターのよしひろまさみちさん。今年2015年の映画界についても教えていただきます。



【大作の続編ラッシュだった2015年】
「2014年末からずっと言われていたんですが、今年2015年は、ハリウッド大作の続編ラッシュの年。そして、その全てがメガヒットでした。例えば、今年の興行収入のトップ、92億円を突破した『ジュラシック・ワールド』。同じハリウッド大作の『ミッション・インポッシブル』も、続編が同時期に公開されたんですが、『ジュラシック・ワールド』に軍配が上がりました。『ジュラシック・ワールド』が勝った理由はズバリ、『３D・４Dにものすごく人が集まった』ということに尽きるんです。『アトラクションムービー』というジャンルを築きあげた、今年らしい現象ですね。『スターウォーズ』の影響もあって、これからまた来年以降、３D・４Dの劇場が増えると思いますよ。」

【予習してからだと倍楽しい！「007スペクター」】
「大人気スパイ作品の最新作『007スペクター』です。すでに世界中で大ヒットスタートを切っています。主役がダニエル・クレイグになった『007カジノ・ロワイヤル』からの特徴が、連作であるということ。話が全部繋がっていて、前の作品の最後を噛ませて始まっていくというスタイルなんです。ですので、『007スペクター』を観る前に、『007カジノ・ロワイヤル』からの3作品を観て行ったほうが、より楽しめると思います。もちろん、これまでのシリーズを観ていなかった人でも入りやすいです。世界中で活躍するスパイの話なので、世界中でロケをするんですね。今作の冒頭で、メキシコシティの「死者の日」というお祭りのシーンが出てきます。数千人のエキストラを集めて再現したド迫力の映像で、いきなり引き込まれるんですよ。注目すべきは、今作に登場する2人のボンドガール。1人は、レア・セドゥという、いまハリウッドで大注目のフランス人女優。もう１人はイタリア人のモニカ・ベルッチ。撮影当時、50歳というボンドガールとしてはありえない年齢なんですが、とてもそうは見えないんですよ。2人とも、ボンドに対して影響力の高い立ち位置なので、女性目線で楽しめると思います。」

【絶対に自分が見つかる群像劇「恋人たち」】
「橋口亮輔監督の『恋人たち』という作品です。ピンと来ないと思いますが、確かに大作系ではないんです。ところが、今年11月に公開されるやいなや、毎回立ち見御礼の大ヒット。橋口亮輔監督は、作品数は少ないながらも素晴らしい映画を撮っている方です。長編で言うと『ぐるりのこと。』以来の作品で、3人の主人公が各々、恋をしたり、恋に敗れたり、というのを描いていくのですが、必ずそこには社会に潜む落とし穴があるんです。貧困だったり、生活に苦しんでいたり、トラウマを抱えていたりして、社会で上手く生きていけない、ちょっと人には言いにくい悩みを持った3人の群像劇です。タイトルからはちょっと想像できないですよね。ものすごく深い映画で、上映時間も140分とかなり長いんです。でも、その140分の中で、必ずどこかに自分を見つけることができると思います。人は誰だって1つくらいは悩みがあるじゃないですか。その中でも、特に人に相談しにくいような悩みがこの作品では描かれています。ちょっと心が痛くなる映画ですが、今を生きる大人が観るべき映画だと思います。ちゃんと集中して2時間過ごしていただくと、持って帰るものも多い作品だと思います。１人で観に行くのも良いですし、気の知れた仲なら、友だちとでも良いですね。デートには向いてないと思います。長年付き合ってるなら、まぁ、いいかも。責任は取れませんけど。（笑）」

今日ご紹介いただいた作品はすでに公開されていますので、ぜひ劇場で。

【００７スペクター】 http://www.007.com/spectre/?lang=ja

【恋人たち】 http://koibitotachi.com/