Yuming Chord
松任谷由実
2014.09.19.O.A
♪Onair Digest♪
透明なせせらぎ、緑のゆらぎ、木の肌のぬくもり。呼吸がゆったりとしたリズムを刻みはじめる。細胞のひとつひとつが、みずみずしさを取り戻してゆく。木漏れ日の中で瞳を閉じて、遠い記憶の回路をつないでみる。人間はかつて、森に守られて暮らしていたという。森は、食べ物や薬や暮らしの道具も与えてくれた。そして森にやさしく抱かれて、生きる力を何度も取り戻してきたのだ。


■今週のChordは“森の恵み”

m1 Was There Nothing?
Ásgeir

山、森、海と素晴らしい自然に囲まれた国アイスランド出身、Ásgeirのアルバム『IN THE SILENCE』からの1曲。
日に日に秋も深まって、お散歩やウォーキングにちょうどいい気候になってきました。たまにはちょっと遠くまで足をのばしてもいいかもしれません。
食欲の秋に「森の恵み」と聴いて真っ先に思い出したのは、きのこ。今はきのこ狩りに行かなくても、様々な種類のきのこが気軽に手に入ります。ありがたいですね。しいたけ、しめじ、えのき、まいたけ、マッシュルーム、エリンギなどなど、料理にもよく使います。
ヨーロッパでももちろん、きのこは古くから食べられてきました。「神様の贈り物」と呼ばれて珍重されてきたきのこは、食べ物としてだけでなく、幻覚作用をもたらすきのこは宗教儀式にも用いられてきたようです。
古代エジプトでは“不死の植物”と信じられていて、ファラオたちが野生のマッシュルームを独占して食べていたそうですし、中国では“不老不死の薬”として霊芝(マンネンタケ)を口にしていたとか。 現代でももちろん、それぞれのお国柄を反映しつつ、多くの人から親しまれています。
通称“黒いダイヤ”、トリュフはフランス料理の高級食材。このトリュフ入りのバターやオイルがあれば簡単に絶品料理が楽しめます。ロシア人は日本人に負けず劣らずきのこ好き。秋になると家族できのこ狩りに出かけるそうですし、田舎から都会へきのこをどっさり運ぶ「きのこ列車」が秋の風物詩なんだとか。ロシア人が特に好きなのがポルチーニ。日本でも食材として使いますよね。
国土の7割が森林の日本では森林性のきのこが人気です。しかも日本人は毒キノコにあたっても食べるのをやめない国民性。イギリスをはじめアングロサクソン系の国は毒キノコへの恐怖感が大きいため、あまり冒険はせず、もっぱらマッシュルームを食べているそうです。
そんな森の毒きのこ、モチーフとしてはヨーロッパでも人気で、真っ赤な傘に白いイボのあるベニテングダケはなぜか幸福のシンボル。1940年代のディズニー映画「ファンタジア」には踊るベニテングダケが登場したり、イギリスの童話「不思議の国のアリス」では、このベニテングダケをアリスが食べて、自分が大きくなったり小さくなったりするシーンが出てきます。
ベニテングダケは実際に食べると視界がゆがむような幻覚作用があるため、作者のルイス・キャロルはそれを知っていて作品に生かしたのでは、と言われています。
毒キノコの話へと脱線してしまいましたが...きのこは、“森の掃除屋さん”とも言われていて、枯れた植物や動物の死骸を分解して、土に返してくれます。樹木とも栄養のやりとりをしながら共生しているし、最近では有害物質でさえ分解する力がある、という研究結果も出ています。きのこはとっても働き者なんですね〜。
食欲の秋で思い出す「森の恵み」といえばジビエ。
ジビエとは、狩猟で捕った天然の野生鳥獣の食肉を意味するフランス語。かつては自分の領地で狩猟ができるような上流階級の貴族が食べるものでした。日本では90年代半ばくらいから、フレンチのお店を中心に広く浸透してきましたよね。日本国内でも11月半ばから2月半ばまでが狩猟の解禁シーズン。森の中を駆け巡り、空高く舞い飛ぶ動物たちの肉は、脂肪が少なくて栄養価も高いとか。まさに、「森の恵み」といえそうですね。


m2 Why
Annie Lennox

ユーリズミックスのアニー・レノックスの楽曲。幻想的に広がる歌声は、「森」にもピッタリではないでしょうか。
日本人に身近な森といえば「鎮守の森」、いわゆる神社やお寺、鳥居を守っている森です。いにしえの人々が集落や町を新しくつくるときに、地盤のゆるみやすい場所、急斜面や水辺などに、補強の意味をこめて残した森だったりもします。しかも、土地本来の常緑広葉樹はしっかりと根をはるから自然災害からの逃げ場にもなる。すばらしい知恵のたまものなんですよね。
森林浴という言葉が80年代はじめに生まれて以降、森の中を歩いたり、ゆったりと過ごしたりすることで心身共に良いとされていますよね。ストレスホルモンが減少するとか免疫力がアップするとか、そんな研究結果も出ているようです。
欧米の森の場合はまた雰囲気が違います。
たとえばヨーロッパは城壁と城壁の間に深い森があって、ちょっとミステリアス。童話なんかでも、魔女が住んでいる設定だったりしますよね。アメリカの森で思い出すのは「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」という映画。こちらも魔女伝説を題材にしたドキュメンタリーを撮影するために森に入った学生3人が消息を絶って、のちに彼らが撮影した素材が出てきたそれを映画にした...という設定でしたけど、これがまた怖かった!
いずれにしても、国を問わず森には何か神秘的な力がある、そう信じられてきたわけですよね。現代を生きる私たちも、森への敬虔な気持ちを忘れちゃいけませんね。


m3 Glory Birdland
松任谷 由実

「森の恵み」で、もうひとつ思い出したのが、森のバターと言われるアボカド。これも人気の食材。あとは、木の実も森の恵み。これからの季節だと栗が旬を迎えます。今年は「和栗」が人気のキーワード。“和栗味”のアイスにチョコ、キャンディなどなど...。
つい、食べ物の話が多くなってしまいましたが、しっかり食べて、来月は舞台に備えなくてはなりません!
私が帝国劇場で座長をつとめる舞台「Yuming sings...『あなたがいたから私がいた』」。10月8日から31日までの長丁場です。同じところでひと月近く舞台に立つ、というのもまた違った意味で緊張感たっぷり。無事、初日を迎えてみなさんにお会い出来ることを楽しみにしています!

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