Yuming Chord
松任谷由実
2015.03.13.O.A
♪Onair Digest♪
新年度の準備に忙しくなる頃、社会人デビューのみなさんはスーツをそろえる時期でしょうか。新人じゃなくても春のスーツを身にまとって、気分を一新したくなる季節。今日のコードは「スーツ」です。


■今週のChordは“スーツ”

m1 More Than This
Roxy Music

1982年のアルバム「アヴァロン」に収録。Roxy Musicのボーカリスト、ブライアン・フェリーはまさにスーツが似合う人代表!
私の場合、撮影やステージで着ることはありますが、ふだんのお仕事着とはちょっと違うスーツ。でも、今、私たちが一般的に「スーツ」と認識しているものって、もともとは「くつろぎ服」だった、って知ってますか?
男性の昼間の正装服のひとつ・モーニング。日本だと「燕尾服」のことを指しますが、このスーツの長い裾の部分を切り落としたものが、通称「ラウンジスーツ」。これが、現代のスーツの祖先といわれています。今からおよそ150年前、ドレス・コードがきっちりと決められていた時代、食後にラウンジルームに移ってくつろぐ時に着るものとして登場したスーツなんですね。ソファに座るときに邪魔な尾っぽ(テイル)もないし、窮屈なダーツもない、そんなゆったりとしたジャケットと、それにあわせたゆとりのあるズボン。これを上下同じ素材で作ったものが、現在のビジネス・スーツの原型なんだそうです。本来はくつろぐための一着だったスーツ、しかもイギリスでは低い階級の人たちが着ていたものが、階級も職業も問わず、昼間のフォーマルウェアとして世界中へ広まったんですね。今や、改まった席ではとりあえず着ておけば間違いナシ!というスーツ。男性も女性も、大人になると一着くらいは持っていますよね。
お仕事用の服、と割り切っている人も多いけれど、モノに凝るのはおもに男性。スーツに思い入れのある人は、本当に細部にいたるまでこだわりますよね。いわゆる基本のスーツスタイル、上着にベスト、シャツにズボンにネクタイ・・・。このひと揃えばかりはファッションに男女の垣根がなくなりつつある時代でも、唯一、男の聖域といわれています。


m2 Sweet Dreams
Eurythmics

スーツの聖地といえば、ロンドンのメイフェア地区にある「サヴィル・ロウ」。日本語の「背広」という言葉のルーツという説もありますよね。でも、実は明治期のラウンジジャケットは背中が一枚で仕立てられていたことから、「背が広い」で「背広」、と職人が言っていた説も濃厚です。
ここに『SAVILE ROW』というタイトルのビジュアルブックがあるんですが、それによれば、過去200年以上にもわたる軍隊からの定期的な受注のおかげで、サヴィル・ロウのテーラリングハウスは莫大な利益をもたらす磐石な顧客の基盤を築きあげます。
大英帝国の拡大とともに任地が世界中へと広がっていった将校たち。あらゆる気候や局面にふさわしい軍服を必要とした彼らの要望に応えて腕を磨いたといいます。同時に、軍関係者以外の顧客のための紳士服をめざすテーラーも登場して、現在に至るまで、熟練のクラフツマンシップが継承されている場所なんですね。
完全注文の紳士服のことを、サヴィル・ロウでは「bespoke(ビスポーク)」と呼びます。これは、話し合うという意味の「be-spoken」が由来。顧客と店が話し合って作り出されるのが本来のスーツだったんですね。
写真家のブルース・ウェバーは、軽くてしなやかなスーツ作りが得意の老舗店、『アンダーソン&シェパード』のことを、「どんな精神科医よりも私を理解している」と語ったとか。確かに、スーツを含め身につけるものの採寸は、素の自分をさらけ出すことになります。
女性の場合"サヴィル・ロウでビスポークスーツ"というわけにはいきませんが、やっぱり一度は着てみたい・・・と憧れるのはシャネルのスーツだったりするんでしょうか。女性を窮屈な服装から開放するため、イギリスの紳士服の仕立てや素材を応用して、シンプルなのにエレガントなスーツを生み出したと言われています。
少し前に話題になって、そのときに「これは買わねば!」と思ったスーツもあります。ジル・サンダーとユニクロのコラボスーツ。しばらくファッションデザインの現場から離れていたジル・サンダーが、自らの目でユニクロの生地や縫製技術を確かめてそのクオリティに驚き、実現したそうなんです。
ちなみに、18世紀末から19世紀初頭にかけて登場したイギリスのお洒落男、当時の上流階級の人々から「客間の法則」とまで言われたボー・ブランメル。後世に渡るまで紳士服の世界に多大な影響を及ぼした彼のポリシーは「さりげなさ」。身支度に二時間、手間暇をかけた完璧な着こなしでも、“人から振り返られるようでは失敗”という教えだったそうです。
スーツはとくに、型が決まっているものなので、自分らしさをどこでどうやって表現するか、スパイスをどうまぶしていくか・・・というのは細心の注意が必要です。お洒落道はやっぱり奥深いですね!

m3 ランチタイムが終わる頃
松任谷 由実

1920年代から30年代にかけてハリウッドで活躍した俳優、アドルフ・マンジュウは、逆境にあればあるほど身だしなみに気をつけて、なけなしのお金をはたいてスーツを新調したそうです。彼いわく「新しいスーツが私に自信を与え、成功の原動力となった」とか。背筋を伸ばしてスーツを着て歩けば、気持ちは後からついてくるかも。やっぱり、身も心もちょっとだけひきしまりますよね。新年度の始まりこそ、フレッシャーズに負けないように、私たちも初心に返るためにスーツを着てみてもいいかもしれませんね。
真新しいスーツ姿が街にあふれる春ですが、新しい、といえば明日、3月14日には北陸新幹線 富山・金沢間がいよいよ開通します。金沢といえば、私の大好きな街ですから、これは・・・乗らないわけにはいきません!
そこで、明日、北陸へ春を探しに出かけてくることにしました!その模様をスペシャル番組としてオンエアします。
タイトルは『FM石川/TOKYO FM共同制作 北陸新幹線開業記念特別番組 「金沢花紀行」』
私、松任谷由実が、金沢の街を少しずつ染めてゆく春の気配をお届けします。話題の車両、グランクラスから見る車窓の風景にも触れつつ、私自身も大好きな金沢のさまざまな魅力をご紹介します。
『北陸新幹線開業記念特別番組 「金沢花紀行」』3月22日の日曜日、オンエア時間はお聴きの放送局にてお確かめくださいね。

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