Yuming Chord
松任谷由実
2016.03.11.O.A
♪Onair Digest♪
誰かと連絡をとりあう手段はメールやSNS、いまやそれが当たり前の時代。
でも、文字にできない想いって、ありますよね。
言葉にならない息遣いから伝わってくるものも、きっとあるはずです。
離れている人と、今このときを共有する、アナログだけれど確かな方法。
今日のコードは「電話」です。


■今週のChordは“電話”

m1 I Just Call To Say I Love You
Stevie Wonder

音は、空気の振動によって聴こえるもの。
その振動が電気の信号におきかえられて、電線を伝わって相手に届くというシステムが電話です。
受けた電気の信号はふたたび空気の振動、つまり「声」に戻されて相手に伝わるんですね。
これまでにも色々な国で研究はすすめられていたんですが、人の声が電線を使って直接伝える原理を思いついたのはアメリカのグラハム・ベル。
1876年・明治9年、対話のできる電話機を発明したのがその始まりといわれています。
この番組を聴いているほとんどの人は、固定電話が普通の時代の人ですよね?
黒電話が家にあった、という人もきっといるはずです!
その後、列車内や電車内に電話が設置されて、わざわざ車の中から自慢げに電話してくる人が居たりしつつ・・・、やがて携帯電話の発売へと続いていきます。
小型化・軽量化された携帯電話の一般発売は1987年、昭和62年のことです。
私は、昨年スマートフォンへと切り替えました。すっかり使いこなしています。
電話と私の歴史をざっとふりかえってきたわけですが、用もないのにかけられる相手っていうのは、とっても貴重ですよね。
沈黙がもつ、沈黙も会話になる、っていう相手かどうかがポイント。
昭和を代表する大女優・高峰峰子はこんな名言を残しています。
「他人の時間を奪うことは罪悪である」。
電話魔の方は、ほどほどに。


m2 Hello
Adele

東日本大震災発生から5年目の3月11日のコードを「電話」にしたきっかけは、岩手県大槌町にある、「風の電話ボックス」の話を知ったことからでした。ご存知の方もいらっしゃるでしょうか?
ガーデン・デザイナーの佐々木格(いたる)さんがご自宅の庭の一角に造ったもので、線のつながっていないダイヤル式の黒電話を置いたボックスです。
これは、突然の震災で言葉を交わせないまま大切な人を失った人々に、心の内にためたままの“言葉”を、なつかしい人に語りかけてほしい・・・、そんな趣旨のもとで、開放されているそうです。
ボックスの前でただ立ち尽くして帰る人、受話器をとって誰かに話す人、連日、被災者の方々がこの電話ボックスを訪れているとか。
ふと、自分だったら誰のところへ電話をかけようか、考えてしまいますよね。
電話にまつわる不思議なエピソードもありますよね。そろそろ連絡しなくちゃ、と思っていた人から電話がかかってくる、とか。
状況はまったく違うけれど、お別れしたまま音信不通になってしまった人・・・、具体名は出さずとも、もう一度電話でゆっくり話をしたい人、誤解を解きたい人、お礼を言いたい人、謝りたい人・・・いますか?
テクノロジーの産物ではあるけれど、手にとって、相手の番号をプッシュして、「もしもし?」と話し始める。
電話って、肉体を使うリアルなコミュニケーションの道具ですよね。
だからこそ、交わした言葉が心に深く刻まれます。


m3 Midnight Scarecrow
松任谷 由実

5年前のあの日、被災地の様子を伝える映像を見ながら、東北に住む知人や、コンサートで訪れた東北のファンのみなさんのことを、ただ案じていたことを思い出します。
あのときほど、つながらない電話が不安だったことはなかったな・・・。
そして、心配していた人の声が聴けたときの、ひざが抜け落ちるような気持ち、月日が経てばたつほど、記憶は遠のいてしまうもので、それは薬になることもあるんですが・・・、でも、忘れちゃいけないですよね。
今日はあらためて、そんな気持ちを新たにしました。
いま、あるものが永遠ではない、ということを肝に銘じながら、一日、一日を大切にする。
それが、生かされている私たちの使命なんじゃないかな、と思います。
そして、その中で見た風景、感じたことを歌に封じ込めて、これからもみなさんへお届けしていきたいと思います。





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