Yuming Chord
松任谷由実
2016.06.24.O.A
♪Onair Digest♪
本格的な雨の季節は、できることなら家の中でのんびり、過ごしたいですよね。
アクティブな予定はあえていれずに、ふだん出来ないことをやってみるのも、気分転換になります。
たとえば、お裁縫箱をあけて、好きな色の糸を取り出して、気の向くままに手を動かしてみる。ひとつのモチーフが出来上がる頃、心は晴れ晴れしているかも。
今日のコードは「Embroidery〜刺繍〜」です。


■今週のChordは“Embroidery〜刺繍〜”

m1 New Romantics
Taylor Swift

刺繍をはじめ、手芸って、始めてみると時間を忘れてハマってしまうものですよね。
心が落ち着くというか、無心になれるというか・・・・・・、はっきり成果が見えるのもうれしいものです。
何より、針と糸と布さえあれば簡単に始められる、という手軽さも魅力です。

当時、よくやっていたステッチを思い出してみると・・・
シンプルな並縫いに似たランニングステッチ、面をうめてゆくサテンステッチ、糸を交差させてバッテンを作って図案を作るクロスステッチなどなど。
こうして口にするだけで、なんだか懐かしい気分になってしまいます。

刺繍は世界各国にあって、素材や技法は実にさまざま。
例えばヨーロッパ刺繍の場合、そのルーツは古代エジプト時代の墓やピラミッドからの発掘品で、ビーズを施した布だったといわれています。
その後、古代オリエントで盛んに行なわれ、バビロニア人によって完成されたヨーロッパ刺繍。
さらにギリシアのヘレニズム文化と融合され、僧院や宮廷芸術の一端として栄えました。
近世になると、刺しゅう工芸は工業化され、美術品としては衰退していきますが、特別な階級のステイタスシンボルだった刺繍を、誰もが楽しめるようになって現在にいたります。
日本では“フランス刺繍”と呼ばれて、人気がありますよね。

そしてご存知、私の実家は呉服店。
日本の伝統刺繍、いわゆる“日本刺繍”というのもしょっちゅう見ていましたね。
絹の布地に金糸や絹糸で刺繍する“日本刺繍”は、着物に代表される刺繍で、京都や加賀、江戸刺繍などが有名です。
経済力のあった江戸の町人たちが染色技術に刺繍をくわえて生み出した江戸刺繍。
図柄を置くときに、空間を楽しむような刺繍の入れ方をするのが特徴だそうです。

こうした繊細な日本刺繍のルーツは飛鳥時代、仏教伝来とともにもたらされた「繍仏」といわれています。
刺繍の「繍」に「仏」と書くこの「繍仏」とは、仏像そのものや仏教的題材を、刺繍によって表したものをさすそうです。
1000年前にそれを目にした人々は、“仏教って凄い!”と、圧倒されてたちまち傾倒してしまったことでしょう・・・。
やっぱり、人は繊細なもの、美しいものには心をわしづかみにされてしまうものなんですよね。


m2 Hands to Myself
Selena Gomez

糸と針で自由に文様を描く「刺繍」は、古くから世界各地で行われていて、その歴史は染めや織りよりも古いといわれています。
渡辺剛博さんの『刺しゅうの本』には、
「母から娘へと代々受け継がれる家庭刺繍から宮廷文化を絢爛に彩った高度な刺繍まで、いずれにせよ人々がひと針ひと針心をこめて文様を描くことによって、それぞれの地域や民族の美意識を表現し、アイデンティティーを示してきた」のが刺繍、とあります。
まさに、各地の民族衣装は、刺繍の美しさや力強さが表現されていますよね。

私の印象に残っているのはロシアの「サラファン」。
17世紀までは男女兼用の服で、足がすっぽりと隠れる長さで、リンネル製の長袖ローブだったようですが、18世紀初めにかけて女性用の服に。肩つり紐のついた長いドレスへと変貌したそうです。
組み紐、レース、リボンや刺繍が施されたサラファンを、主に長いローブの上に着用していたそうです。
メキシコの刺繍も多彩ですが、どれも色鮮やかでパワフルですよね。
ボリビア・アンデス村の素朴な刺繍、アメリカ先住民のビーズ刺繍、モロッコの青いフェズ刺繍や防寒のためのベルベル刺繍など・・・。

有名な刺繍どころで言うと、中国のスワトウ刺繍のハンカチを持っています。
中国・汕頭は広東省の東、東シナ海に面した港町。
18世紀にキリスト教宣教師が、当時の上流階級の女性の間で流行していた、レースのデザインの刺繍技術を伝えたことが始まりと言われています。
中国の繊細な手刺繍の技術と融合して出来たスワトウ刺繍は、吸水性もよくて実用的ですが、かなりの高級品です!

作り手の魂が宿る刺繍。職人芸も、身近な人が施してくれたものにも、どれもみな愛を感じます。


m3 ハルジオン・ヒメジオン
松任谷 由実

刺繍の目的は装飾のほか、布地の補強・修復、民族性の表現以外に、「魔除け」「厄除け」といった信仰的な意味もあったそうです。
日本では縫い目や結び目に呪力が宿るとされていて、小さな子どもや危険な仕事に出かける夫の服に、せっせと刺繍を施したとか。手作りのものって、祈りがこめられているんですね。
私もずいぶん、荒井呉服店の娘時代に洋服を作ってもらいましたが、それに守られて、すくすく育ったんですね。あらためて感謝です。

ひと針ひと針、刺繍をするように、私もただいま、アルバムを制作中です。
無事のリリースとツアーのスタートに向けて、今年の夏もコツコツ、創作活動を続けていきますね。

そして、この夏はオープンエアーでのイベントにも出演します。
今年創業130周年を迎えた老舗百貨店、伊勢丹。
記念イベントを続々と開催中ですが、なんと、私、7月22日・23日の2日間にわたって、伊勢丹新宿店の屋上庭園、アイ・ガーデンの特設ステージに登場いたします!
かつて、「避暑地の出来事」という曲を伊勢丹のイメージソングとして作ったご縁もあって、ハワイアンフェスティバルの一環で、お招きいただきました。
そんなわけで、何曲かライブで歌います。きっと、お客様との距離も近いはず。今からどんなステージにしようか、わくわくしています。私自身も楽しみです!




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