Yuming Chord
松任谷由実
2016.08.26.O.A
♪Onair Digest♪
高い空を横切るとんぼ、ぽとりと落ちた線香花火、いつの間にかコンビニに並ぶおでん・・・。
2016年の夏も、少しずつ終わりを告げようとしています。
時はとどまることなく、色鮮やかだった日々も永遠には続きません。
でも、色あせたからこその美しさは、いとおしさにつながります。
音楽もまた、空へと消えてしまうけれど、心にしっかり刻まれるもの。
そんな曲を集めてお送りする今日のコードは「WABISABI SOUND COLLECTION」です。


■今週のChordは“WABISABI SOUND COLLECTION”

m1 Photograph
Ed Sheeran

2014年にリリースされた2ndアルバム「X(マルティプライ)」からの1曲。
彼は今年、第58回グラミー賞で「年間最優秀楽曲」と、「最優秀ポップ・パフォーマンス(ソロ)」の2部門を受賞しました。
この曲は、“2人の思い出を閉じ込めた1枚の写真”がモチーフ。
「この写真はあの本のあの箇所に挟んでおいて、そうすれば忘れはしないから」・・・と歌う、わびさびワールド全開の1曲です!
「さび」とは、時間の経過によって、ものごとがさびれてゆく、さびてゆく、つまりは劣化する様子のことで枯れた渋い趣や、古びて味わいのある風情には奥深さや豊かさがあります。
「わび」とは、動詞「わぶ」の名詞形。
わびしさや心細さ、不足のなかに満ち足りた境地、美しさや充足をみいだそうとする意識のこと。「さび」を受け入れて自分のものにしよう、という前向きな形が「我がさび」つまり「わび」。「わびさび」とは表裏一体の価値観なんですね。
不完全であり、未完成であるものに美しさを見出す感性ともいわれていてそれを受け入れたとき、つつましく、満たされた存在になる。
これは、ある程度の年齢を経て、自分自身に「さび」を感じたときにこそ、実感できることかもしれません。
特に、夏の盛りを過ぎたいま。この時期“祭りの後”に、最もさびしさを覚えますよね。
「わびさび」を意識する瞬間です。


m2 A Horse With No Name
America

ロンドンで結成され、1971年にデビューした3人組「アメリカ」。
メンバー全員が父親がイギリス駐留軍のアメリカ人で母親がイギリス人。彼らはほとんど馴染みのない故国の名前をとってバンド名にしました。
デビュー当時、デューイ・バネルとダン・ピークが20歳、ジェリー・ベックリーが18歳でした。
1972年にシングルとしてリリースしたのがこの曲で、世界的ヒットとなり、グラミーの最優秀新人賞を受賞しました。
「ぼくは砂漠地帯を渡っていた、名前のない馬にまたがって 砂漠の中でなら人は自分の名前を忘れずにいられる なぜってそこには誰もいないから」・・・そんな風に歌っています。


m3 Chasing Pavements
Adele

この曲は彼女自身が浮気されたときの経験から書き上げられたとか?
彼にパンチを食らわした帰り道
「私、何を追い求めているの?何もならない道を捜し求めてるんじゃない?」・・・そう思ったことがきっかけでこの曲ができた、とか。
“ここであきらめたほうがいいのか?それともこのまま頑張って続けたほうがいい?”
そんな、行きつ戻りつする心が歌われています。


m4 少年時代
井上陽水

「夏が過ぎ 風あざみ 誰のあこがれにさまよう 青空に残された 私の心は夏模様」・・・そして八月は夢花火、あっという間に過ぎていきます。
これは藤子不二雄Aさんの作品を映画化した『少年時代』の主題歌でした。
藤子さんが、友人の井上さんに主題歌を依頼してできたそうです。
最後にお届けするのは、私の新曲です!
9月22日に全国公開される堤幸彦監督の最新作、『真田十勇士』の主題歌として私、松任谷由実が書き下ろした新曲「残火」です。
天下の名将と呼ばれた戦国武将・真田信繁幸村が、実は“腰抜けの武将”だった・・・そんな設定のもと、彼を支えるために集まった10人の勇士が活躍する姿を描く物語。
中村勘九郎さん、松坂桃李さん、大島優子さん、ほか豪華俳優陣が出演します。
映画の主題歌を手がけるのは16回目となりますが、時代劇の主題歌は今回初めてのチャレンジでした。
今日のコードにもなっている「わび・さび」。
実は静かな表現のその裏に、生命力やエネルギーが凝縮されているそうです。
まさに、この曲にはその境地が封じ込められているような気もします。


m5 残火
松任谷 由実

「わび・さび」というのは、説明するのはちょっと難しい、日本独自の美意識ですよね。
時の経過とともに移りゆく姿、消え去る運命にあるものを美しく、いとおしむ心。老いて枯れる、という姿の裏には、豊かな世界が広がっています。
これは、成熟しないと実感できない、特別な境地。
日本文化論の第一人者・栗田勇さんは、『日本文化のキーワードー七つのやまと言葉』の中で、こう説明しています。
「枯れ枝が一本。そこには春を迎えようとする生命力が、凝縮しておさえにおさえられた姿、生き生きとした力に溢れた情景が浮かび上がってくる。永遠の生命がそこにある」
「わび・さび」の裏にあるエネルギッシュないのちの燃焼、その美しさに気づいたら、人生がもっと、楽しめるかもしれません。
今日初オンエアした私の最新書き下ろし曲「残火」は、映画『真田十勇士』の公式サイトの予告編映像にて、聴くことができます。よかったら、もう一度映像とともにお楽しみくださいね。




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