Yuming Chord
松任谷由実
2016.09.09.O.A
♪Onair Digest♪
厳しい夏をなんとかのりきって、ようやくやってきた実りの秋。
季節のうつろいを感じる余裕も出来る頃です。
一度きりしかない今、このときを楽しむなら、和菓子で一服!
美しい色彩や可愛らしい姿、上品な味わいに、しみじみとした幸せを感じます。
そこで、今日のコードは「和菓子」。


■今週のChordは“和菓子”

m1 Sukiyaki
Tuck & Patti

暑い夏の盛りに食べたくなるのは“ひえっひえ”の冷たいもの!または食欲を刺激する辛いもの!
でも、秋の訪れを感じると、ふと、いれたての熱いお茶と和菓子が恋しくなりますよね。
“五感の総合芸術”とも言われる和菓子は、秋にこそ、ふさわしい食べ物じゃないでしょうか。
ひとつで5回の“美味しい”を味わえるのが和菓子、といわれています。

まず最初に、その和菓子の色や形を見て楽しむ。
見た目の美しさ、かわいらしさといえば、茶の湯の席で出てくる上生菓子ですよね。
そして、その和菓子の名前を聴いて、美しい日本語の響きや表現を味わいます。
たとえば、室町時代後期からの老舗「とらや」さんの有名な羊羹「夜の梅」。
これは、切り口の小豆が夜の闇にほの白く咲く梅の花に見立ててつけられた名前です。
生菓子も情緒あふれる名前がつけられています。

さらに、ほのかにただよってくるおだやかな香りを楽しみます。
たとえば、桜もちにうつった桜の葉の香りとか・・・私の大好物!ちょっと焦げたお砂糖の香りとかね。

いざ食べるために触れてみる・・・まさに「もち肌」と呼びたいやわらかな感触や楊枝を入れたときのなめらかさを楽しみつつ、口中に広がる味わいを堪能します!
ぜひ、五感を働かせて5回分の楽しみを味わってください。

実をいうと、本日9月9日は「栗きんとんの日」だって、知ってましたか?
栗きんとん発祥の地といわれる、岐阜県中津川市が制定した記念日だそうです。
JR中津川駅前ロータリーに、「栗きんとん発祥の地」の碑もあるんですが毎年9月9日はその碑の前で“栗節句”の神事が行われるそうですよ。

ところで、甘いものを身体が欲したとき、生クリーム、カスタード、チョコにキャラメル・・・、そんな洋モノ方向に走ると、あとで罪悪感を感じてしまうのは私だけでしょうか。
でも、「和菓子」方向だと、なんだかちょっと、許されている気がするんですよね。
“和菓子は日本の文化だし、芸術だし!”なんて、言い訳してみたりして。

最近食べて印象に残っているのが「月の雫」という、山梨・甲府の銘菓です。
江戸末期にある製菓職人が、甲州葡萄の粒を誤って砂糖蜜の中に落としてしまい、それを拾い上げて食べたら美味しかった!という言い伝えがあるそうです。
種のある甲州葡萄を使って、高級ざらめを溶かした蜜の中に落としては拾い上げて作られるそうです。
果実を丸ごと餡で包んだり、その姿のまま加工する和菓子は、ただいま流行中。
そもそも、かつて果物は「水菓子」と呼ばれていた歴史があります。

この番組でも何度かご紹介している、私の親友のお店。
今日は「栗きんとんの日」ですから、ここをご紹介しないわけにはいきません。
創業は元禄年間という老舗、「すや」の栗きんとん、おすすめしておきます!

中津川は、古くから栗の産地で“栗菓子の里”とも言われるほど。
江戸時代には中山道の宿として栄え、文人、豪商、皇族や幕府の要人などが宿泊し、茶の湯が発達したこともあって、和菓子の文化が発展したそうです。
その「すや」の栗きんとんは、栗と砂糖のみで作られているとか。
栗の粒を残して食感も楽しめるようになっているんです。
なお、9月1日からは新栗で作った栗きんとんを発売しているそうなので、ぜひ、食べてみてください。新栗は香り豊かで格別の風味ですからね!

ちなみに、十五夜の次に美しいといわれるのが「十三夜」。別名「栗名月」と呼ばれて、栗を使った和菓子をいただく風習があります。
今年の十三夜は10月13日。「すや」の栗きんとんをお取り寄せして、お月見を楽しんでください。
“十三夜に曇りなし”という言葉もあるくらい、栗名月はお月見日和の可能性が高い日だそうですよ。


m2 Harvest Moon
Neil Young

和菓子は季節感を映し出す鏡でもあります。
今年の中秋の名月、十五夜は9月15日にあたりますが、この時期に欠かせないのが「お月見団子」ですよね。
もともとはこの時期に収穫した里芋を供えていたそうで、「芋名月」という呼び名もあります。

和菓子のルーツは、果物や木の実。
その後、遣唐使が大陸から持参した唐菓子や、室町時代に渡来した南蛮人によってヨーロッパのお菓子が伝わったことにより、日本の素材をアレンジした独自のお菓子が形づくられていきます。
そして、安土桃山時代には「茶の湯」文化の広まりによってお茶菓子が発展。
さらに江戸時代の安定した平和な暮らしの中で菓子づくりの技術が進んだことによって、庶民の口にも入るようになり、一方で洗練を極めました。

そして、ご当地和菓子の充実に一役かったのが江戸時代の参勤交代制度。
人々の往来が盛んになり、手土産の持参によって和菓子文化に影響を与え合って、郷土菓子が各地で花開いたわけですね。
そんなご当地モノの中で、私が全国的に流行させた!と自負しているのが、仙台銘菓「萩の月」です。
“萩の咲き乱れる宮城野の空にぽっかり浮かぶ名月をかたどった銘菓で、まろやかなオリジナルのカスタードクリームをたっぷり使って、ふんわりとした高級カステラで包んだ”お菓子です。
現代の竹久夢二とも言われる林静一さんの描く少女のイラストが目印。

これまで、老舗の和菓子屋さんとさまざまなご縁もありました。
かつて、神戸風月堂に集まって源氏物語を題材にした和菓子の勉強会を。
和菓子業界に革命を起こした叶匠壽庵も、よく出かけました。
昭和33年に商いを始めた本店は琵琶湖のほとり、大津市長等にあります。
かつて、琵琶湖のほとりで泊り込みのツアーリハーサルをしていた頃、私にとってはテーマパークのような場所でした。
琵琶湖から唯一流れ出る瀬田川のほとり、六万三千坪の丘陵地にある「寿長生の郷」。
ここに梅や柚子などを植え、農工一体の菓子づくりを目指しているとか。

和菓子をいただく時間は、人生ひとやすみ。
心を自由に解き放って、小さな宇宙を楽しみましょう!


m3 満月のフォーチュン
松任谷 由実

今日は「和菓子」というコードでお届けしてきました。
伝統ある和菓子店はのれんを守りつつ、常に時代の空気を感じながら進化し続けているといいます。
老舗だからこその風格を失うことなく、若々しい魂をもって、挑戦を続ける姿勢、見習いたいです!
そして、私にとっても、新たな挑戦がはじまります!
いよいよ、11月2日に38作目となるオリジナルアルバム『宇宙図書館』をリリース。
11月18日から全国ツアーがスタートしますが、これが私史上最多で最長!
80公演を予定しています。

『宇宙図書館』というタイトルを聴いて、みなさんは今、どんな世界を思い描いてくださっているでしょうか。
図書館に行くと出会える、なつかしい過去やわくわくする未来そしてきらきらと輝くいま・・・、時空を超えた魂の普遍性を追求してみました。
まさに、老舗のキャリアを重ねても進化することができるのと同時に、デビューした頃のようなビビッドな表現も取り出すことができる、そんな1枚になりました。
この番組でも、1冊ずつ本のページをめくるように、アルバムのお話をしていきます。
もちろん、収録曲も少しずつお届けしていく予定ですのでお楽しみに!

なお、今月9月22日から公開される映画『真田十勇士』の主題歌を、私が作って歌っています。タイトルは「残火」。
この曲の先行配信が9月21日から各主要配信サイトにてスタートしますので、ぜひ、チェックしてみてください。

アルバム・ツアーに関しての詳細は、私のオフィシャルホームページをごらんくださいね。
随時、最新情報をアップしていきます!




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