Yuming Chord
松任谷由実
2017.02.03.O.A
♪Onair Digest♪
何度も大寒波に襲われた厳しい冬を越えて、いよいよ明日は立春です。
とはいっても、実は今が寒さの底!
帽子を深くかぶって背中をまるめて歩きたくなる時期ですが、冬枯れの街に鮮やかな色彩を添えて、心を温めてくれるのが、この花です。
今日のコードは「椿」。


■今週のChordは“椿”

m1 As I Lay Me Down
Sophie B.Hawkins

冬が始まる11月頃から春の終わりまで花をつける椿。
種類を変えながら半年ほどの間咲いている花ですが、木へんに「春」と書くこともあって、春を予感させる花として親しまれていますよね。椿そのものは、一年中緑の葉をつける常緑樹です。
ツバキの語源は葉に光沢のある様子を示す古語「ツバ」からきたという説や、艶のある葉の木だから「ツヤハキ」・・・・・・で、「ツバキ」、分厚い葉っぱだから「厚い葉の木」、アツハギで「ツバキ」・・・・・・などなど、諸説あります。
白や赤、うす紅の花はもちろんのこと、つやつやとした緑の葉っぱも、冬の街に映えますよね。
ちなみに、冬のお茶室によく登場するのが「椿」。
11月の炉開きから翌年の晩春に炉をふさぐまでの間、椿は添えの枝とともに一輪、活けられたりします。
ふっくらとしたつぼみを探して活けて、お手前の間にほころぶような演出をしたりもするそうです。
風流ですね〜!
椿モチーフのアイテムも、いくつか持っていますね。ちなみに、椿・カメリアモチーフといえばシャネルですよね。彼女が最も愛した花が椿でした。その理由は、生涯最愛の恋人だったといわれるアーサー・カペルが、彼女に最初に贈った花が椿だったから・・・そんな逸話も残されています。
そんなシャネルが遺した言葉に、こんな一節があります。
「傑作は一見したところシンプルです。しかしシンプルであることは優美であることの確かな証なのです」。
まさに、椿を愛した彼女ならではの一言ですよね。

『椿姫』というオペラも有名ですが、もとはアレクサンドル・デュマ・フィスの私小説。ジュゼッペ・ヴェルディがオペラ化したことでも有名です。
ヒロインのマルグリットは高級娼婦で、いつも椿を胸につけていました。
ちなみに椿は日本原産。ポルトガルと日本の交易、あるいはオランダとの交易によってヨーロッパに渡った説がありますが、ヨーロッパでは「冬の薔薇」と呼ばれたそうです。
学名は“カメリア・ジャポニカ”。凛とした姿に大和魂を感じたのでしょうか。

そんな椿は、日本原産だけあって、古くからさまざまな使われ方をしていたことがわかっています。
たとえば縄文時代の遺跡からは、石斧の柄やおそらく魚を採るために使われたであろう尖った棒が、弥生時代になると農業のための道具などが出土していて、椿の木で作られていたようです。
さらに、平安時代以降は椿油が食用、薬用、そして灯りの原料として使われていました。
平安の時代から、整髪料や肌荒れ予防に使われていた椿油。今も一本で髪、頭皮、肌にも使える万能ケア商品として販売されています。椿の種子からとった純度の高い椿油、有名な商品のひとつが大島椿の油。
1927年(昭和2年)に伊豆大島に会社が設立されたので、今年で90周年を迎えるそうです。
ちなみに、椿を使った民間療法もいろいろあるようです。
「腫れ物には、葉を火であぶって出た汁をつけるといい」(広島県)
「鼻づまりには、鼻筋に椿の油をつけるといい」(静岡県)
「椿の油をなめると疳の虫が治る」などなど。
椿は、日本人と本当に関係が深かったんですね。
江戸時代になると観賞用として人気を集めた椿。
特に徳川初期の三代将軍が大の花好きで、中でも二代目・秀忠は椿がお気に入りだったとか。
その熱は諸国の大名へ、そして江戸っ子たちに伝染して、椿の花を愛でることや、新しい品種の栽培が大流行したそうです。
でも、椿は花がまるごと落ちますよね。その、首からぼとり、と花を落とす様子が、戦で首を落とされることを連想させる、ということで、武家では決して椿を植えなかったそうです。
そのいさぎよい最期に美学を感じる人も、いるかもしれませんね。


m2 歌劇:椿姫より 乾杯の歌
ルチアーノ・パヴァロッティ,ジョーン・サザーランド & ナショナル・フィルハーモニック管弦楽団

冬の終わりを告げるのは黄色い花が多いんですが、高貴な赤い花をつける椿はめでたさの象徴。
葉の表面がつやつやとして太陽の光をはね返す力強さがあることから、邪気を払う神聖な花としても親しまれてきました。
そんなめでたい花としての椿は、神仏を守るために神社仏閣にも植えられています。
たとえば、島根県松江市にある八重恒神社。
ここでは天つ神(あまつかみ)のスサノオノミコト(素盞嗚尊)と、国つ神(くにつかみ)のイナタヒメノミコト(稲田姫命)がまつられています。
この2柱の神が天の下(あめのした・人間の居る下界)で正式な結婚をしたということで、縁結びの神様として信仰されているそうです。
言い伝えによると、スサノオノミコトとイナタヒメノミコトが、椿を二株、結婚記念に植えたところ、成長して地上で融合して、一株になったそうです。
そこから、二身一体を示す「連理の木」(夫婦ツバキ)とよばれています。
昔の人たちは、椿で天候や稲作に関することを占ったりもしていたようです。
山形県の一部や広島県では、「椿のつぼみが上を向いていると大雪」。
群馬県では「花が下向きに咲けば大雪」・・・などなど。
いずれにしても、椿は雪とセットになっているんですね。
椿は「耐える・冬・花」と描いて、「耐冬花(たいとうか)」という呼び名もあるそうです。
椿の花言葉も諸説ありますが、たとえば・・・
赤い椿なら「謙虚」「控えめな美点」、白い椿なら「申し分のない愛らしさ」「冷ややかな美しさ」など。
“控えめ”というのは、椿の花に香りがないことに由来しているといわれています。
香りがなくとも、その姿は圧倒的な存在感。
凛と咲く椿の花を見つけたら、背筋を伸ばして歩けそうです。


m3 冬の終わり
松任谷 由実

自由律俳句でおなじみの種田山頭火が残した一句をご紹介しますね。
「笠へぽっとり、椿だった」
放浪の旅を続けつつ、冬の寒さに背中をまるめて下を向いて歩いていた山頭火の笠に、ぽっとり、落ちてきた椿。
春の訪れを予感させる一句です。
ちなみに椿の別名は「春告げ花」というのもあるんですって。
新しい季節がきましたよ、という神さまからのメッセージ、見逃さないでくださいね。
そして!立春も過ぎていよいよ来週から始まる、「SURF & SNOW in Naeba Vol.37」!
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