Yuming Chord
松任谷由実
2022.01.28.O.A
♪Onair Digest♪

今日のコードは「世界不思議紀行」!
ゲストは、世界各地の“奇妙なもの”を求めて旅をして撮影し続けているフォトグラファーの佐藤健寿さんです。


■今週のChordは“世界不思議紀行”

ユーミン:今日のコードは、「世界不思議紀行」! ゲストは、フォトグラファーの佐藤健寿さんです。今日はよろしくお願いします。
私はTBS系の『クレイジージャーニー』が大好きで、佐藤さんのこともしょっちゅう拝見していました。佐藤さんは、写真集『奇界遺産』『奇界遺産2』を出されていて、これは異例のベストセラーで“奇界遺産フォトグラファー”として知られているんですけれど、佐藤さんが“奇界”の撮影に挑み始めたのはいつ、どこがスタートだったんですか?

佐藤:僕は日本の美術大学を卒業した後にアメリカの方で美術大学に行っていたんですけど、その時に課題で「何か1ヶ所撮影して来い」と言われまして。“アメリカで行きたい場所ってどこだろう?”って考えたら、昔、子供の頃テレビでよく見ていた「エリア51」っていう場所があって、そこの地下にUFOの基地があって米軍がこっそりUFOを作っている・・・っていうのをよくテレビでやっていたんですね。僕が当時いたのはサンフランシスコだったので、車で行けば行ける場所だな、ということで(「エリア51」に行って)写真を撮ってみたら、旅そのものも面白かったし、写真そのものも“アメリカの奇妙な風景”という感じで面白かったので、それが始まりですかね。

ユーミン:これまで最も絵になった“奇界”、奇妙な世界の風景は、ズバリどこでしたか?

佐藤:1番というのはなかなか難しいんですけども、1つは、中国で洞窟に暮らしてる人たちがいる「洞窟村」というのがあるんですけど。

ユーミン:後でじっくりご紹介しますけれど、『世界』というタイトルの分厚い写真集にその洞窟の写真もありましたね。

佐藤:そうですね。中国の貴州省というところにあります。今でも、例えばヨーロッパとかでも、洞窟を住居にして暮らし ている人はそれなりにいるんですけど。

ユーミン:カッパドキアみたいな。

佐藤:カッパドキアとか、あとはイタリアにマテーラという場所とかがありますね。そういうところはまだ珍しくはないんですけど、この中国の村というのは、洞窟を丸ごと1個くり抜いて、その中に村が全部入ってるっていう場所なんです。訪れたのはもう15、6年前なんですけど、そこはやっぱりすごく衝撃を受けましたね。

ユーミン:何かそれも宗教と関係あるんですか?

佐藤:いえ、宗教はまったく関係なくて、むしろそこに暮らせる苗(ミャオ)族という人たちが・・・。

ユーミン:外敵から守るため?

佐藤:そうですね。貴州省というのが、平地がほとんどなくて、山がすごく多いんですよ。かつ、年間の降雨量が中国で1番すごくて、とにかく暮らしづらい場所だと。それで、彼らの先祖から、ずっと代々洞窟を渡り歩いて生きてきたそうで。90年代に入って、中国政府が「いい加減に外に出ろ」ということで建物、家を作って彼らに提供して、みんな喜んで引っ越したんですけど、1ヶ月もしないうちに「やっぱり洞窟の方が暮らしやすい」ということで、洞窟に戻っちゃったという(笑)。

ユーミン:佐藤さんに比べたら大学院生と幼稚園生ぐらいの差があるんですけれど、私も若い頃は変なところにけっこう行っていて。写真集を見て“あ、ここにも出てる!”と思ったところがあるんですよ。

佐藤:どこですか?

ユーミン:日本だと「戸来村(へらいむら)」(現在は新郷村)とか。海外ではバイコヌール(宇宙)基地も行ったことがあります。

佐藤:存じてます。僕も2回撮影で行ってるんですけど。

ユーミン:ちょうど秋山(豊寛)さん(が乗った宇宙船が打ち上げられる)時で。

佐藤:“あの時、松任谷さんが打ち上げを見て涙した”いう話はいまだに語り継がれています(笑)。

ユーミン:そうですか(笑)。

佐藤:ご自宅に、バイコヌールの、ソユーズか何かの遺物があるという・・・。

ユーミン:はい。まだ放射能を帯びていたら怖いんだけど、ソユーズの破片があります。あとね、隕石もあるんですよ。この間、ある番組で自分のお宝を出して見せるっていうコーナーがあって、そこでナミビアから持ってきた隕石を出したら、「鑑定のしようがないから使えません」って言われたんですけど。ずっしり重たくてね。
写真集を拝見していても、“どうやってこの見開きの構成をしたのかな”っていうぐらい、全く違うベクトルの作品が隣り合わせになってるんですけれど、取りも直さず、佐藤さんの中に関連性なり意味付けがあってそうされてるんですよね。

佐藤:そうですね。

ユーミン:奇妙に見えて、実はすごく日本の風景とリンクしたり。大分の風景がよく出てくるんですけど、大分ってどんなところなんですか?

佐藤:大分って、大分の方には失礼かもしれないですけど、ちょっと地味な印象があるかもしれないんですけど、よくよく行ってみるとすごく変なものがたくさん残ってるんですよね。特に、北の方に国東半島ってありまして、あの辺りだと、昔ながらの変わった、なんと言うか日本の鬼じゃないバリ島みたいな鬼のお面をつけたお祭りだったり、いわゆる“来訪神”という、なまはげのような鬼が出てくるお祭りがあったりとか。
あとこの本の中で扱っているのは、これも都市伝説的ではあるんですけど、平家の生き残り、残党的な人たちが作った町で、今も続いているちょっと変わったお葬式とか。お城みたいなジオラマを1年間かけて作ってそれをお盆の時に燃やすんですけど、なぜお城なのかというと、その昔、平家の生き残りの人たちが大分のかなり辺境まで逃げてきて、そこで京都を想ってそういうものを作っていたとか。確かに大分には、そういう、わりと奇妙なものが多いですね。

ユーミン:さっき青森(戸来村)の話もちょっと出ましたけれど、キリストの墓があるとか、キリストの弟のイスキリの墓もあるとか。

佐藤:お詳しいですね(笑)。

ユーミン:話は飛びますけれど、海外でもそういう隠れ里的な、本来そこにいるはずのない人種が何かを作ったり・・・というのもあるんでしょうね。

佐藤:そうですね。いろんなパターンがありますけど、この本にも載ってる中で言うと、1つはインドのカシミールというパキスタンとの国境辺りに、頭に花を飾る民族がいまして。彼らの顔は、いわゆるインド人ではなくて東ヨーロッパ系の顔をしているんです。これも、あくまで都市伝説みたいなもので裏付けはまだないと思うんですけど、一説には、彼らはヨーロッパとかギリシャ方面からかなり昔に来た民族なのかもしれない、ということが今出てきていて。色々調べた学者の話によれば、その昔、アレキサンダー大王が侵攻してきた時に、その辺りまで行ったらしいんですよ。その兵士の生き残りの人たちの村なんじゃないか、という。「最後のアーリア人」とも言われているんです。

ユーミン:こうした文化を撮影される、その時のポリシーってありますか?

佐藤:そうですね。「分かったような気持ちにはならない」というか。僕の場合、秘境の少数民族とかをいきなり訪れて写真を撮らせてもらうことがけっこうあるんですが、いわゆる民族学者のように長期で滞在するわけじゃないので、あくまで「自分はよそ者だ」という立場で撮らせてもらう。変に「あなたたちのことを理解している」というポーズは取らないようにしています。

ユーミン:普段はネット検索してもヒットしないような、世界中の“奇妙な場所”へ出掛けて撮影されている佐藤さんなんですけれども。今は何と言っても撮影旅行に出られないコロナ禍で、これまでずっとされてきた作業をご自分の中で反芻したり・・・という時間に当てていらっしゃいますか?

佐藤:そうですね。今までは逆に、ひたすら撮影していかないと、と思っていたので。この10年ぐらい、スマホとかインターネットの普及で、秘境みたいな場所がどんどんなくなってきているので、急かされるように撮影をしていて、全く自分の撮った写真とかも見返すことがなかったんですね。それが(コロナ禍になって)やっと2021年ぐらいから写真を見返して、それを本にして・・・ということをやるようになりました。

ユーミン:この『世界』という分厚い写真集を見ても、クリエーションと同時に整理整頓も大事だってすごく思ったんですよ。今パッと見たのは、両方にモニュメント的にタワーがあるページを開いちゃってますが、こういう風に、空に向かって伸びている者同士、全く違う都市、違う場所で並べてあると、人間って空に空に向かってるんだなって考えさせられたりね。
都市伝説どころじゃなく突拍子もないですが、神々の指紋的に“元のカルチャーは一緒だったんじゃないか”と思うこととかはありますか?

佐藤:まさにそういうところがテーマというか。全く土地も場所も違うのに不思議と似てくるものがあったり、あるいは、全く同じことをやっているのに全然違うとか。わりとそういう、「似ている部分」と「全然違う部分」というものを基準にページを構成しています。

ユーミン:今見ているページが、西安?

佐藤:兵馬俑ですね。

ユーミン:兵馬俑と、右側のページは香港のアパートが並んでるんですけれど、こういうたくさんの思惑って言うのか、全然違うはずなのにリズムがつながっている。すごく美しいなと思います。

佐藤:ありがとうございます。

ユーミン:ユーミン:今日は佐藤さんの写真集『世界』を見ながら、バーチャルな「世界不思議紀行」に出かけた気分を味わいましたけれど、もっと遠くへもっと深く潜入したくなってきました。来週もぜひイマジネーション豊かな旅に連れ行ってください。
では最後に、「世界不思議紀行」というコードにちなんだ私の曲を。


m4 不思議な体験
松任谷 由実

今日は、世界各地の奇妙なものを追い続けるフォトグラファー佐藤健司さんをお迎えして「世界不思議紀行」というコードでお話を伺ってきました。
曲がかかっている間ですけれど、「僕は、あんまりそういう不思議なものに入り込んじゃうと写真を撮れなくなっちゃうから、そういう感受性は鈍いんですよ」なんておっしゃっていたけれど、すごく冷静な目で不思議なものを美しく撮ってらっしゃるなっていうことが、お話をしていてもよくわかりました。
佐藤さん自ら厳選した作品を集めた永久保存版、見応えたっぷりの豪華な写真集『世界』は、朝日新聞出版より発売中ですので、ぜひそちらもご覧ください。
そして来週も引き続き、さらにディープな“奇界”の撮影秘話を伺っていきます。どうぞお楽しみに。

そして私は来月2月7日から『SURF & SNOW in Naeba vol.42』のステージがスタートします。コンサート期間中は、インターネットでライブ映像や苗場情報など盛りだくさんのコンテンツを配信する期間限定スペシャルサイトも見られます。チ ケットはすでに発売中ですので、ぜひ!

そのほか、私の最新情報や近況は、私の公式ホームページツイッターインスタグラムなどでお知らせしています。
ぜひ、チェックしてみてくださいね。



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