Yuming Chord
松任谷由実
2022.02.04.O.A
♪Onair Digest♪

今日のコードは「世界不思議紀行」!
ゲストは、先週に引き続き、フォトグラファーの佐藤健寿さんです。


■今週のChordは“世界不思議紀行”

ユーミン:今日のコードは、「世界不思議紀行」!ゲストは、先週に引き続き、フォトグラファーの佐藤健寿さんです。
佐藤さんは、世界各地へ出向いて、奇妙に見える風景や見たことのない文化、人々の暮らしぶりを、博物学的かつ、美学的視点から撮影されていますが、行く場所の選定は、ご自身で決めるんですか?

佐藤:そうですね。基本的には全部自分で決めていて、本とかで名前を知っていただくようになってからは、わりと、どこかの地方の自治体とかから問い合わせが来て、「私たちのこの地方でこういうちょっと変わったお祭りがあるんですけど、ぜひ(来てほしい)」とか。

ユーミン:村おこし的な?

佐藤:そういう時もありますね。

ユーミン:遠く旅に出て、奇妙なものを撮影しようとしたのに、「これ、どこかで見たな」とか、懐かしさを覚える場所もありますよね?

佐藤:そうですね。もう20年近くこういうことをやってるんですけど、やっぱりどうしても、何を見ても何かと比較してしまうということはありますね。「前にこういうのを見たな」とか、相当変わったお祭りを見ても、大体類似例が自分の頭の中にあったりとかして。

ユーミン:類似例があるってことは、また文化人類学みたいなところに立ち返って、「これはつながってるぞ、面白いな」ということもあるわけでしょう?

佐藤:そうですね。例えば、この『世界』という本にも載せてるんですけども、マダガスカルに「ファマディアナ」というお葬式の儀式がありまして。ファマディアナというのは、お墓の中から遺体を持ち出して、みんなでお神輿みたいに担いで踊る儀式なんですけど、それに近いものと言うと、インドネシアのスラウェシ島というところに、トラジャ族という民族がいるんですけど。

ユーミン:コーヒーで知ってます。

佐藤:まさに、「トラジャコーヒー」の。そのトラジャ族も(ファマディアナと)似たような儀式をするんですよね。色々調べていったら、マダガスカルの先祖は、昔インドネシアから船で渡った民族だった可能性があるというのを見て、「ああ、やっぱりそういうところに文化って残るんだな」と思いましたね。

ユーミン:海上交通を使うと、とんでもない季節のとんでもない潮流に乗って、とんでもないところに共通点が生まれたりっていうことがあるみたいですよね。
「遺体を担ぐ」というので、ブードゥーとかそういうのも繋がってるのかな、なんて勝手に思っちゃいました。

佐藤:そうですね。

ユーミン:見てはいけないものを見ちゃった、とかってありますか?

佐藤:例えば、パプアニューギニアとかに行くと、パプアニューギニアもある程度観光慣れしてるんで、例えば「お面を買いたい」って言うと、そういうお面を売ってる場所を教えてくれるんです。村の中心にある神社のような場所の中にズラーっとお面が並んでるんですけど、1ヶ所だけ、中央に椅子があったんですよ。で、「これは売ってるの?」って聞いたら、「これは絶対ダメ」って言われて。「写真も撮るな」って言われて、「なんで?」って聞いたら「ここは神様が座る場所で、先祖代々伝わる大事なものだ」と。僕はそういうことをわりと真に受けて、写真は撮らないタイプなんですけど。
あとは、アフリカのトーゴというところに、呪術師が集まる市場があって。

ユーミン:呪術師ばかりが集まるんですか!

佐藤:「呪術師の処方箋薬局」的な(笑)。動物のミイラとかがすごくたくさん売られてる場所があるんですよ。例えばアフリカだと、「メンタル的な問題でずっと気持ちが落ち込んでる」とか言うと、呪術師に相談に行って、「じゃあ、ジャガーのこれをこうやって煎じて飲みなさい」とか、そういう処方があるんです。そこを撮影した後は、なんかさすがにちょっと肩が重くなるような感じはありましたね。

ユーミン:私は、猿の取材でタンザニアに行ったことがあるんですけど、チンパンジーの生息地で、そこのお祭りに出たら、シャーマンが、黒檀の椅子みたいなのを黒檀の鎖で身体に巻きつけているまま、10センチぐらい飛ぶんですよ。椅子ごと。
それで、どんどん夜が更けてきて。シャーマンが、だんだん祭りが盛り上がってくると、「お前!」「お前!」って指名する感じなんですよ。で、(シャーマンが)こっちを向いたので、「これ、帰れなくなる!」と思って。本当に“魂を持っていかれる”というのかな。だからもう目が合わないようにして人影に逃げて、日本人の一行はある時間で引き上げたんですけれど、まだまだこれは序の口で、ずーっと一晩中盛り上がるんだろうなって。船でそこから立ち去りながら、青く光っているその中腹の村の光を見て、「これ、タンザナイトっていう宝石の色だな」って思いました。

佐藤:松任谷さんみたいな、“お仕事”って言うのも変ですけど、ああやって、ステージで何万人とかの前で歌って大衆を陶酔させるというのは、すごくシャーマン的な、というか。そういうものを感じたりするんですか?

ユーミン:以前は、そういうことを言うとすごくバッシングされた時もあったんですけれど、もうしょうがないですね。そういう立場だから。・・・と、思います。
今はちょっと行けないけれど、体力的にも多分難しいけれど、すごく土俗的なところに憧れて行ったりしていた時期って、“セラピー”みたいなところもあったんですよね。で、東京に戻ってくると、「あれは切り取られた夢」みたいな。東京って、なんて脆弱な・・・でもその、一発で壊れちゃうような美しさ。時の流れが本当に小刻みで。それはそれで、そこで生きていけるっていう感じがあったりして。

佐藤:でもみんな、もしかしたらそういうものを求めてるのかもしれない。(東京には)ああいう、シャーマン的なものとかがないわけじゃないですか。だからみんな、そういうものをコンサートとかそういう場所で代替している部分も無きにしも非ずなのかな、と。

ユーミン:そうかもしれませんね。(ステージでは)自分でも、自分じゃない人格になるから。そこの場に立たされる前はすごくチキンなんですけど、パン!と切り替わって、それをすごく冷静に、俯瞰で見ている自分がいます。人が思うほど、陶酔なんかはしていないですね。
・・・という時があります。もう認めちゃいます(笑)。
今日は「世界不思議紀行」というコードで、これまでの撮影エピソードを伺ってきましたが、パンデミック状態になる前、最後の撮影旅行はどちらへ行かれていたんですか?

佐藤:2020年の2月にサウジアラビアに行ったんですけど、それが最後でしたね。

ユーミン:ちょうどこの『世界』という写真集の中で、私が「美しい1作品」を挙げるとしたら、サウジアラビアの写真なんです。私が好きな、この砂漠の村。

佐藤:「アルウラ」という場所ですね。

ユーミン:そして、画面の3/4が夜空なんですが、実に色彩といい、構図といい、美しくて。古代と宇宙が両方あるような、どこかの惑星の基地のようにも見えるんですけれど。砂漠って、不思議な魅力がありますよね。
なぜこの写真は、ここでシャッターを押したか覚えてますか?

佐藤:サウジアラビアって、2019年まで観光客のビザを出してなくて、旅行者は行けなかったんですよ。巡礼者ぐらいしか行けなくて。それでたまたま急にビザが出たので行ってみたら、この写真は町というか村の中のカフェみたいな場所なんですけど、本当に他の国では今まで見たことがない、砂漠の中にぽつんぽつんと、席というか飲むところがありまして。

ユーミン:これ自体がカフェなんですか。すごくfuture(フューチャー)な感じがして。

佐藤:そうですね。別の惑星って感じですよね。

ユーミン:これからやりたいこと、どんなことですか?

佐藤:フォトグラファーとしては、今まではとにかく旅をして、自分が子供の時に気になったものとかをずっと撮影してきたんですけど、今後は、まだしばらくこの状況が続くのであれば、自分が子供の時に想像していたものとかをセットアップして写真を撮ってみるのも面白いかな、と思ったりとか。

ユーミン:例えば?

佐藤:例えば、昔、70年代に「雪男が歩いていた」とか、怪しい映像があったじゃないですか。あれをちゃんと再現して写真を撮ったら面白いかな、とか(笑)。ツチノコとか。本当くだらない話ですけど(笑)。

ユーミン:いやいや(笑)。そして、今後のご予定を、具体的なことが決まっていたら教えていただきたいんですけれども。

佐藤:4月2日から、西宮大谷記念美術館というところで、『佐藤健寿 奇界/世界』という写真展が2ヶ月ぐらいあって、その後、また違う美術館などを巡回していくので、ぜひ見に来ていただければと思います。

ユーミン:私もツアー中なので、どこかで見れたらいいなと思います。
さっきの続きになっちゃいますけれど、例えば、旅に出なくても被写体は見つかると思っていますか?

佐藤:そうですね。どこにでも被写体はあるとは思いますけど、コロナ禍になって、東京を撮ることがすごく増えまして。今まで東京から逃げていたというか、「晩年でいいかな」と思ってたんですけど、向き合わざるを得なくなって。
改めて東京を撮ろうと、まずヘリコプターで空撮とか色々やってみたんですけど、やっぱり世界でこれだけ変わった街はないなと。さっき松任谷さんが「繊細で壊れそうだ」と言ってましたけど、ヘリで飛んで見てみると、ちょっと「巨大な墓場」みたいに見えたんですよね。湾岸部のビルとかが、墓地みたいに見えて。でもそれは暗い意味だけじゃなくて、これだけの規模の街って、世界には(他に)ない。

ユーミン:そうですよね。最も“メガシティ”ですよね。あと、この国って稲作から始まってるらしいけれど、独裁者が出ないから、都市計画もナポレオンやスターリンの時みたいに整然としてないところが、東京の 特徴かもしれない。
さっき、「歳を取ってからでいいかなと思っていた」とおっしゃってましたけど、その年齢その年齢で、見え方が違うんでしょうね。

佐藤:だと思いますね。

ユーミン:きっと、「今、撮りなさい」っていう思し召しなのかも(笑)。

佐藤:そうですね(笑)。

ユーミン:というわけで、2週に渡ってお話を伺ってきて、まさに「世界不思議紀行」に出かけた気分!
とっても楽しかったし、消化不良です、私(笑)。永遠に話していたいテーマです。
では、コードにちなんだ私の曲を聴きながら、佐藤さんとはお別れになります。ゲストは、フォトグラファーの佐藤健寿さんでした。どうもありがとうございました!

佐藤:ありがとうございました。


m4 時はかげろう
松任谷 由実

ユーミン:お送りした曲は、“滅びゆく種族のうたを おぼろげに口ずさむ”というフレーズが出てくるんですけれど、本当に、年間にたくさんの言語とかが失われてるらしく、民族もどんどん減ってるらしく・・・そういう情景を込めた歌です。送りしたのは、アルバム『天国のドア』から「時はかげろう」でした。




今日は、世界各地の奇妙なものを撮り続けるフォトグラファー、佐藤健寿さんをお迎えして、「世界不思議紀行」というコードでお話ししてきました。この『世界』という写真集をもう一度復習で見ながら、「ここに行ったことがある」とか「行ってみたい」とか思いながら、もう、話は尽きませんでした。

佐藤さんの記憶をさらけ出した見ごたえたっぷりの写真集『世界』は、朝日新聞出版より発売中ですので、ぜひ、手にとってみてください。めくるめく世界旅行が楽しめます!

そして、私もいざ、雪山へ!いよいよ2月7日から、『SURF & SNOW in Naeba vol.42』のステージがスタートします。
明日、2月5日からはひと足早く、期間限定スペシャルサイトNET RESORT 【Y-topia】を開催!
ライブの生配信・オンデマンド配信はもちろん、ミニライブ企画もパワーアップしてお届けする予定です。
ここでしか見られない充実のコンテンツの公開、お楽しみに!
チケットはすでに発売中です。

なお、新型コロナウィルスの感染状況をふまえて、スケジュールほか、最新情報は随時、アップデートされます。
スケジュールほか、私の最新情報や近況は、私の公式ホームページツイッターインスタグラムなどでお知らせしています。
ぜひ、チェックしてみてくださいね。



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