Yuming Chord
松任谷由実
2022.04.08.O.A
♪Onair Digest♪

今日のコードは「Great Ape」。
ゲストは、40年以上の間、大型類人猿の飼育や研究に携わってきた、日本オランウータン・リサーチセンター代表理事、黒鳥英俊(くろとり・ひでとし)さんです。


■今週のChordは“Great Ape”

m1 Animal
AURORA

ユーミン:オランウータンをはじめ、大型類人猿の飼育・研究に携わってきたという、黒鳥英俊(くろとり・ひでとし)さんに、ひとことQuestionです!
これまで関わってきたGreat Ape、大型類人猿たちの中で、意思疎通ができて、最も気が合ったのは、誰でしたか?

黒鳥:いろいろいるんですけども一番は上野動物園にいたゴリラの「ブルブル」ですね。

ユーミン:どんな風に通じ合ったというエピソードは何かありますか。

黒鳥:最初はすごい脅かされて大変だったんですけども、そのうち1年、2年、5年、10年と経ってくると、だんだん向こうも飼育してるとか、されてるとかそういう感じじゃなくて、毎日顔を見て一緒にいる動物なので。

ユーミン:同胞みたいな?

黒鳥:いつもいるような空気みたいな感じで、「うーん」と言うと、向こうも「うーん」という感じでそれだけで通じるんです。
そんな中で、彼も(年をとってきて)だんだん体の調子が悪くなった時に薬を飲みに来てくれた時を思い出すんです。足が痛くて動けなくて、1週間くらい餌も食べてなかったんですけど、その時に這って来て鎮痛剤を飲んでくれて、それで良くなったんです。
あと、葉っぱとかちょっとしたいろんなものを僕にプレゼントしてくれました。

ユーミン:「うーん」という音でいかに通じ合っているか分かる気がしました。


ユーミン:今日のコードは、『Great Ape』。
ゲストは、40年以上の間、大型類人猿の飼育や研究に携わってきた日本オランウータン・リサーチセンター代表理事、黒鳥英俊さんです。
先生、ただ「猿」って言うと、多くの人がニホンザルを連想したり、しっぽがあって木に登って・・・というような。“類人猿”と“猿”との違いを簡単に教えていただけますか。

黒鳥:一言で言えば、“尻尾があるか無いか”なんですね。類人猿の場合は尻尾が無いです。日本ザルとかはしっぽがあります。

ユーミン:MonkeyとApeの違い?

黒鳥:そうですね。英語は2つの言葉に分かれてますけど、日本語には無いので、「猿」としか言えないんですけども。

ユーミン:実は、私も「Grate Ape」、とっても興味があるんです。実際に野生のチンパンジーの生息地に行くというラッキーな話が来て、「行きます!」って行った時に、野生は輝きが違うから、“すごいな、動物”って思っちゃうんですけど。猿だけじゃないんですけれどもね。
先生はそもそも、どういうきっかけがあって類人猿に魅かれたんですか?

黒鳥:僕は北海道の函館の出身なんですけども、父親が仕事で世界中に行っていて、いつも変なものを色々買ってきたり、持ってきたりするんです。その時も「オランウータンはいらないか?」とか「カニクイザルはいらないか?」という手紙が来ましてね。

ユーミン:すごい!当時ですから許されますけども、今はそういう生体を持って来てはダメですね。

黒鳥:ワシントン条約でね。当時はそんな世界で、小さいカニクイザルを持ってきてもらって飼い始めたんですよ。それが高校2年の17歳の時で。

ユーミン:可愛くて仕方ないでしょう?

黒鳥:僕にだけなついて、グルーミングという毛づくろいも一緒にやってたんですけども。

ユーミン:そうですか!

黒鳥:そんなことやっていたら、“将来は猿を飼育したいな”って強く思いましたね。

ユーミン:そうした経験から飼育員を目指された、黒鳥先生。飼育員になりたての時は色々ご苦労されましたか?

黒鳥:まず、動物園で「猿(の飼育)をやりたい」ってずっと言ってましたら、本当にやらせてくれました。それで、担当はゴリラだったんですね。とにかく大きいですし、最初は向こうも脅かすんですよ。“また新人が入ってきたな”くらいの感じで。
体当たりするわ、いろんな物を投げるわ、うんこを投げるわ、とにかく連日すごかったですね。

ユーミン:キャラクターがそれぞれ違うんですよね。

黒鳥:メスの方がちょっとネチネチした意地悪をしてましたね。

ユーミン:本当に!?

黒鳥:そのうちオスの方は僕のことにすごい興味持ってくれまして。変な話、僕の顔を見るとマスターベーションを始めて・・・。

ユーミン:(笑)。

黒鳥:チンパンジーの「ビル」というのがいまして、ちょうどこの時期になると上野公園は桜が咲くんですよね。そうすると、周りが全部ピンク色になるんです。彼はメスと交尾が出来なかったんですけど、ピンク色にはすごい反応するんですよ。
メスのチンパンジーは発情するとお尻がピンク色にパンパンに腫れ上がるんですよ。

ユーミン:私、同性として恥ずかしかったです(笑)。
タンザニアのマハレという所で実際に見た時にびっくりしちゃって。太いホースみたいなものが本当にお尻から出るんですよね。

黒鳥:そうです。それがメスがオスを受け入れるOKのサインで、普通は交尾をするんですけど、ビルは桜の花にすごい反応してマスターベーションを始めるんですけど、そのうち僕の顔を見たら始めるようになってきまして。

ユーミン:それは研究材料や人工授精として貴重なわけですよね。

黒鳥:はい。当時、上野動物園ではチンパンジーが1度も産まれていなかったんですよ。それでビルが簡単に出してくれるなら、当時の獣医だった増井さんが「(人工授精を)やろうか」ということで、8回精液を採って、やっと産まれたんですよ。

ユーミン:今だったら冷凍保存をしたりするわけですよね?

黒鳥:そうですね。

ユーミン:それは、ものすごい信頼関係が出来てたってことですよね。

黒鳥:そうですね。飼育係で動物とうまくいかないと悲惨ですよ。飼育係は獣医の方ではなく、向こう(動物)側につくくらい仲良く、“一緒だよ”というような感じでやっています。

ユーミン:「ハズバンダリートレーニング」といって、医療を受けさせやすくするトレーニングもあるらしいですね。

黒鳥:そうですね。最近、すごく盛んになってきて、飼育員の人が合図をすると、耳を出して体温を測るとか、授乳をするときもメスからお乳を採ったりとか。最近は精液も採るんですよ。

ユーミン:そういうトレーニングは子供の頃からするんですか?

黒鳥:そうですね。子供の頃からの方がやりやすいかな。他にもいろんなトレーニングをやってますね。


実は、黒鳥先生が昨年12月に出版された書籍、『恋するサル 類人猿の社会で愛情について考えた』(CCCメディアハウス)にも、そのエピソードが書かれているんですけど、まだまだこの後も色々伺っていきたいと思います。


m2 未来は霧の中に
松任谷 由実

ユーミン:「Yuming Chord」。今日は「Great Ape」というコードでお送りしていますが、お話を伺っているのは、日本オランウータン・リサーチセンター代表理事の黒鳥英俊さんです。
大型類人猿を40年近く飼育してきた黒鳥先生ですが、ここで改めて、今日のコード「大型類人猿」とは、どういう種類があるんですか。

黒鳥:一般的にチンパンジーとゴリラ、オランウータン、あと非常にチンパンジーと近いボノボという、4種類が大型類人猿ですね。それ以外に小型の類人猿がいまして、それはテナガザルなんです。

ユーミン:そうなんですか。

黒鳥:尾っぽがないんですね。

ユーミン:そんな中で大型類人猿たちの未来が危ぶまれているんですけれど、黒鳥先生はどう予測されていますか。

黒鳥:「20年後ぐらいには絶滅するんじゃないか」ということも言われています。その中で一番心配なのが、オランウータンとゴリラですね。
実は4年くらい前にインドネシアのスマトラ島で新種のタパヌリオランウータンが発見されたんですよ。
発見されたのはいいんですけど、既に800頭ぐらいしかいなくて、しかもその周りで今、ダム工事をやっているんですね。その工事現場にも現れるぐらいで・・・。

ユーミン:多分、猿の里山みたいなものがもう無いんですね。

黒鳥:ええ。タパヌリオランウータンが1番心配ですね。

ユーミン:そうですか。他の類人猿はアフリカ中心ですから、部族の紛争とか環境破壊とか人間とリンクする気がして、猿を知ることは人を知ることだっていう感じがするんですけれど、どうしても環境のこととか考えてしまいますよね。

黒鳥:そうですね。アフリカもアジアも彼らが住んでいる所はどこも野生じゃ良い状態じゃないです。それを何とかすることは私達しか出来ないので。

ユーミン:近年では動物園のあり方も変わってきたそうですね。

黒鳥::動物園も随分変わりまして、希少動物を増やすということは非常に重要なことなんですけども、今、みんな力を入れているのは生息地の保護なんですね。
現地の保全を世界中の動物園が今、一所懸命やってます。

ユーミン:私、先生のご本を読んでいて、「オランウータンが死について考えるのだろうか」っていうところがとっても気になったんですけど、死というものをどう捉えるのか、それとも捉えてないのか。

黒鳥:私も多摩(動物園)と上野(動物園)でオランウータン(の飼育)をやってたんですけど、僕の目の前で死んだというのはゴリラで経験したんですね。その時は関係の深かったメスとかは、そこから離れなかったですね。
多摩で若いオランウータンが亡くなった時も、(関係の深いオランウータンは)1週間ぐらいずっと気にしてましたね。

ユーミン:人間だったら涙を流すとか、表情が全部分かるじゃないですか。何より言葉がありますよね。先生のご本のあとがきに「人間は言葉というすごいコミュニケーションツールを得た分、すれ違いや争いも起きてしまった。言葉を持たない分、人間にとても近い類人猿は、まっすぐに向き合う」というところに感動したんですけど。

黒鳥:そうですね。実際飼ってみて本当に相当頭が良いというか、想像以上に死についても考えているんだなというのをびっくりしましたね。

ユーミン:人間の世界とリンクしたり、やっぱり違ったりとか。どうまとめていいかわからないけれど、すべてが興味深いし、環境の変化とかこの先の私たちの世界を暗示させるようなことが出てきて、本当に人間界の話を聞いているようです。

黒鳥:私も長い間飼育していて、特にゴリラ、オランウータンは本当に平和的な動物なんです。自分たちの群れやファミリーを守るし、争いはどちらかというと避ける方向に行動します。オランウータンは個々で生活してますけども、心優しい動物だなあというのはつくづく感じますよね。

ユーミン:まだまだ伺ってみたいことが尽きないんですけれど、そろそろお別れの時間です。黒鳥先生、この続きは、ぜひ、来週にお願いします!
今日の話で感じたことをイメージしたというより、勝手にかけようと思っていた私の曲で「未来は霧の中に」という曲があるんです。
ダイアン・フォッシーという有名な猿学者がいて、密猟者に殺されちゃうんですけど、マウンテンゴリラの群れの中で10数年暮らしてコミュニケーションを取った半生が、シガニー・ウィーバー主役で映画にもなっているんです。それが「愛は霧のかなたに」というタイトルだったんですよ。でも本当のタイトルは「Gorillas in the Mist(ゴリラ・イン・ザ・ミスト)」。
「霧」だけの繋がりで「未来は霧の中に」という曲を聴いていただきます。

今日のゲストは、日本オラウータン・リサーチセンター代表理事の黒鳥英俊さんでした。ありがとうございました!


『Yuming Chord』。
お送りしたのは1979年7月にリリースした7枚目のオリジナルアルバム、『OLIVE』から、「未来は霧の中に」でした。

今日のゲストは、元・上野動物園、多摩動物公園の飼育員で、現在は日本オランウータン・リサーチセンター代表理事ほか、大型類人猿たちの種を守るためにさまざまな活動されている、黒鳥英俊さんでした。

猿のことに携わっている方は独特の明るさがあるんですよね。おおらかというか、野生の中で共存しているマインドが、お世話をしている動物を通して体に入ってきているような。
こちらも明るく開放的な気持ちにさせてもらえました。それと同時に人間について考えてしまうんですよね。

そんな黒鳥英俊さんの本、『恋するサル 類人猿の社会で愛情について考えた』をぜひ、読んでみてください。
CCCメディアハウスから発売中です。

さて、現在、『松任谷由実コンサートツアー“深海の街”』、真っ最中の私ですが、安心してステージをお楽しみいただけるよう、引き続き感染対策を講じながら皆様のお越しをお待ちしております。新型コロナウィルスの感染状況をふまえて、スケジュールほか、最新情報は随時、アップデートされます。

そのほか、私の最新情報や近況は、私の公式ホームページツイッターインスタグラムなどでお知らせしています。
ぜひ、チェックしてみてくださいね。



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