Yuming Chord
松任谷由実
2022.07.08.O.A
♪Onair Digest♪

今週も引き続き、J-POP界を牽引してきた小室哲哉さんとともに、未来の音楽について語り合います。
今日のコードは「Yuming 50th Anniversary Special対談(後編)」です。


■今週のChordは“Yuming 50th Anniversary Special対談(後編)”

ユーミン:改めまして、50年目のデビュー記念日をはさんで、今週も引き続き「Yuming 50th Anniversary Special対談」。小室哲哉さんがスタジオにいらしてくださっています。

小室:どうも、こんにちは!お招き、ありがとうございます。

ユーミン:こちらこそ。ところで、最近のてっちゃんはどうやって曲を作ってるんですか?

小室:そうですね。もう、ワードからとかって、なかなかできなくなってきていて。シンセっていうか、今はコンピューターですが、新しいのが来たら音を聴くって感じで、その音に刺激されて、音から。

ユーミン:無限の選択肢があるよね。

小室:そうなんですよ。何万音色ってあるんで、ループとかグルーヴ感・・・そこから作っていったり。言葉を探し出す能力は、ちょっと自分の中で不調ですね。

ユーミン:いや、同じですよ。

小室:そうですか。

ユーミン:でもそれは日本語の特徴でもあり、限界でもあり、逆にその空白に無限の可能性があるとも言えるけれど、言葉は難しいですね。

小室:そうですよね。ちょっと一度出尽くした感はあって、さらに・・・って思っても、出てこないんですよね。日本語でね。“じゃあ、英語とかのワードみたいなものが何かあるかな”と思うと、向こうは向こうで新しい組み合わせた言葉とかがどんどんできちゃってるじゃないですか。例えば、“メタバース”みたいな。余計にもっとわからなくなってきちゃってるんで。

ユーミン:「何でもあり」とも言える。

小室:そうですね。何でもありだと思います。

ユーミン:本当に、音色は無限にあるから。てっちゃんとかはすごく粘り腰で探ってやってきたから、自分のイメージしてるものに行きつくまでやめないっていう強さがあると思います。
私の場合は、自分では打ち込みができないので、プロデューサーの松任谷(正隆)が粘り腰で入り込んでますね。ユニットのようにやってきて、お互い映像人間だから、像を結ぶところに私がやりたかった映像をキャッチしてくれて、その音質とか組み合わせを探ってくれるので、ありがたいなと思ってるんだけど。

小室:そうですよね。ほんと、プロデューサーを選ぶという必要がないですからね。

ユーミン:そうね。キャリアの途中では何度も、「もう、一座解散!」って思ったけれど(笑)。

小室:でも、根本というか軸みたいなのはずっと変わらないですよね。

ユーミン:そうですね。

小室:それは、いつも聴いてて思います。“ユーミンサウンド”っていうのは、やっぱりあると思います。もう出来上がっちゃってると思います。

ユーミン:あのね、声から来てるところもあると思う。これはどうしようもないのでね。逃れられないから。もっと私は尖ったことをやりたいのに、彼がちょうどスタンダードなところに落とし込むっていうケースが多いかな。

小室:そうなんですね。でも、プロデューサーとしては当たり前というか、それがベストだと思うんですけどね。“どう生かすか”ですからね。

ユーミン:そんな話の流れで、今週も私の曲の中から気になる1曲を選んでもらおうと思うんですけど。

小室:一度(ユーミンと)テレビで共演させていただいて。「BOY MEETS GIRL」を、僕がピアノを弾かせていただいて。世田谷のスタジオで収録していて、みんな「せーの」で帰る感じだったんですよね。僕は車でこっち、みたいな感じだったんですけど、ユーミンは(スタジオから)お家が近かったんだと思うんですけど。

ユーミン:あそこだ。

小室:歩いてお帰りになる時に、正隆さんもいらっしゃってたんで、お2人がそこそこの距離を開けて。

2人:(笑)。

小室:1メートルか50センチくらいかな。

ユーミン:あんまり近いのも気持ち悪いっていうかね(笑)。照れますけど。

小室:(笑)。ちょうどいい感じの距離でいたと思うんですけど。

ユーミン:あの方ね、昭和の男だからね。それにしてはリベラルかとも思うんだけど、先に少し歩くタイプですね。

小室:その後ろ姿が、100回とは言わないですけど、事あるごとに、僕が自分で色々ダメな時に、残像で、お2人の仲睦 まじい感じの映像が・・・。

ユーミン:(笑)。“つがい感”あった?

小室:フラッシュバックする時が多々あったので。

ユーミン:(笑)。この2週で一番ウケた!

小室:そうですか(笑)。この曲が“どっちがどっち”とかそういうことは関係ないのかもしれないですけど、言葉の意味合いとして、“お互い”みたいな感じで勝手に受け取っているので、選ばせていただきました。いいですか?

ユーミン:お願いします。

小室:松任谷由実さんで、「守ってあげたい」。


m2 守ってあげたい
松任谷 由実

ユーミン:今日のゲスト、小室哲哉さんが選んでくれた私の曲「守ってあげたい」。とんでもないエピソードが、ありがたく。
この後は、J-POP界を牽引してきた小室哲哉さんとともに未来の音楽について語りあってみたいんですけれど。ハードが進化してね、メディアも多様化し続けているんだけど。

小室:「日進月歩」どころか毎日毎日どんどん新しくなってるんで、“どれに足をつければいいか”というか、“落ち着けばいいか”っていうのがわからないぐらい進んじゃっているので。

ユーミン:しかも、“何年代”っていうのでも、リスナーとしていいなって思ってきちゃってるから。どれもできるって言えばできるじゃないですか。だから、自分が感応するかどうか。

小室:そうですね。今、ジャケットを見せていただきながら話してるんですけど、最近“メタバース”とか“仮想現実”みたいな話が、話題にまあまあ出てきてますよね。

ユーミン:そうですね。

小室:ツアーのイメージとか、こういったものとかは・・・。

ユーミン:『深海の街』のアルバムジャケットを指して、てっちゃんが言ってくれてるんですけど。

小室:やっぱり、仮想現実じゃないですけど、“ほんの一瞬の時間かもしれないけど、みなさんを誘(いざな)ってあげる”みたいなことは、もうやられているような気がするので。

ユーミン:そうね。例えば、具体的にはね、ステージの映像で“デジタルヒューマン”っていうものを使ってるのね。私のデータを全部取って、AI化して、それを躍らせたり、いろんな劇をさせたりもしてるの。

小室:アバターみたいな。

ユーミン:そうですね。ただ、ギリギリ気持ち悪さを残すぐらいまでヒューマンなんですよ。完全に普通の人間に見えるところまではできるんだけど、ギリギリある“アンドロイド感”っていうのかな、(そこ)で止めてるっていうのもあって。

小室:当然、ご本人がいますからね。

ユーミン:だんだん、そういう時代になるのかなと。既にハリウッドなんかで、肖像権みたいなものを手放して、実際に出ている人はもう違うっていう話もいっぱい聞くし。

小室:アーティスト次第だと思いますけど。“もう、それでいいや。任せる。そっちにやらせよう”っていう決意をすれば、永遠にいけちゃうかもしれないんで。あるかもしれないですね。

ユーミン:配信、サブスクとか、聴かれ方が変わると、アウトソースが変わると、音楽自体も変わりますよね。“イントロいらない”とか“短い曲でいい”とか。
じゃあ、アルバムって考え方はどうなるんだろう?てっちゃんは初めから、そんなにアルバムっていうことにはこだわってないですよね。

小室:そこまでこだわってなかったですね。やっぱり、入り込むのはまず1曲。“推しの曲”というものがまず来る、というのがあったので、シングル志向というか、“まずこれで引き付けておく”っていう感じがあるかなとは思ってますね。
でも、プレイリストとかでアルバムも勝手に順番も好きに作っちゃったりする時代でもありますから、よっぽど、作品としてちゃんと仕上げて。

ユーミン:それが、私の場合こだわりであり、モチベーションかもしれないですね。何でもありなんだけど、「1つの 世界観でツアーも行くぞ!」とかね。

小室:“全て総合的にやらないと満たされない”ぐらいなところまでやられてきたと思うので、簡単にポンっと出して・・・というのはできないと思います。

ユーミン:そうね。この辺りで、私の最新アルバムから「これをてっちゃんに聴いてもらいたいな」という曲をお送りしようと思うんですけど。
『深海の街』、私にとっての最新アルバムは、コロナ禍に入った時に、落ち込んだ自分とか、世の中のとんでもないバイブスを封じ込めようと思って作ったんですけど、その中から。(この曲は)自分の中ではダンサブルだと思ってるの。ユーロが好きだから、“そういえば前の年にノートルダム寺院が焼けたな”って、何かディストピアの始まりのような啓示を受けたので、「ノートルダム」という曲になったんですけど。それをユーロな感じで聴いてもらえたらいいなと思います。
では、「ノートルダム」を聴いてください。


m3 ノートルダム
松任谷 由実

ユーミン:この曲の、自分で一番気に入ってる詞が、「重なる白骨を引き離すとき 砂になって崩れる」っていうフレーズなんだけど。そのぐらい寄り添えたらロマンチックだっていう。

小室:ウクライナ侵攻前ですよね。

ユーミン:そうなの。

小室:でも、めちゃくちゃハマりますね、なんか。

ユーミン:嬉しいなぁ、そう言ってもらえたら。

小室:去年の秋と今じゃ、全然意味合いが違ってくるし。

ユーミン:そう言ってもらえると本当に嬉しいし、“伝えるべきことだったんだな”と思いながらね。

小室:でも、普遍的に上手く言葉も選んでるから、そういう風にとらえられる。

ユーミン:ユーミン:あと、偉そうに言っちゃうと、何が役立つかわからないから、一般教養も必要だなと思う。詞と曲を融合させないと、日本のポップスの場合、意味がないので。海外もそうかもしれないけど。(それが)一番、壁かな。
でもね、まだまだ伸びしろあるって思ってないと、続けられないですよね。てっちゃんがよく「音楽に救われてきた」って言ってるけど、(音楽の)存在意義とか価値は変わらないかな、やっぱり。

小室:変わらないですね。他のことをやるとよくわかるんですけど。ちょっと文章書いてみるとかをやると、やっぱりダメなんですよね。並みなんですよ。しかも演奏の技術もそこまですごくないので、“引き付ける”というか、その瞬間「えっ!」って、ちょっと振り向かせるような音作り、曲作りぐらいが、自分に与えられた能力かなと思ってますけど。

ユーミン:よくわかります。すごくシンパシーを感じるし、ますます、てっちゃんが好きになりました。

小室:ありがとうございます。

ユーミン:“その人が好き”なら、“その人の音楽が好き”だもんね。
そういう感じで、7月5日、私のデビュー50周年デーを無理やり挟んで、2週に渡って出演していただきましたけれど。
Yuming Chord「Yuming 50th Anniversary Special対談」ゲストは、小室哲哉さんでした。どうもありがとうございました。

小室:本当にありがとうございます。お招き、ありがとうございました。


今日は「Yuming 50th Anniversary Special対談」。小室哲哉さんをお迎えしてお届けしてきました。
いや〜、面白かったです。今まで、いろんなゲストの方に来てもらったけど、私は一番ノリノリで話したかもしれない。だってね、なかなかわかりあえない領域を体験してる私たちだもの。だから、聴いている人がどう思おうと、何か深いところまで踏み入って話しましたよ。お互いに、すごくこれからのモチベーションになったんじゃないかな。小室さん、一緒に走り続けようね!

そんなわけで、ここからが本番のデビュー50周年記念企画ですが、例えば、6人の作家が私の曲から発想を得て書き下ろした、オリジナル中短篇アンソロジー『Yuming Tribute Stories』がすでに発売中です。
名実ともに第一線で活躍するみなさんが書いてくださった物語です。
新潮文庫オリジナルとして刊行されていますので、ぜひ、お手に取ってみてくださいね。

それともう1つ、今年の12月8日から『松任谷由実展』(仮称)を開催します。ヤッター!会場は六本木ヒルズ 東京シティビューにて。詳しくは、追ってまたお知らせしますね。

そして、昨年の秋にスタートした『松任谷由実コンサートツアー “深海の街”』ですが、とうとう今夜と明日、神戸公演の2Daysをもって、千秋楽を迎えることになりました。
本当に、“何かに守られる”というかのように、様々な規制をかいくぐって、奇跡のように走り抜けることと思います。
今の気持ちは、「私って持ってる〜!」です。
あっと驚く企画が続くデビュー50周年イヤー、ぜひ、一緒に楽しんでいただけたらうれしいです。

そのほか、私の最新情報や近況は、私の公式ホームページツイッターインスタグラムなどでお知らせしています。
ぜひ、チェックしてみてくださいね。
私の公式ホームページには、「Yuming 50th Anniversary Specialサイト」もオープンしていますので、そちらへもぜひ、アクセスしてみてくださいね。



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