Yuming Chord
松任谷由実
2022.10.28.O.A
♪Onair Digest♪

『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』出版記念!
今日のコードは「作家・山内マリコさん、ユーミンをさらに取材する!(後編)」です。


■今週のChordは“作家・山内マリコさん、ユーミンをさらに取材する!(後編)”

今日は、『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』出版記念!
「作家・山内マリコさん、ユーミンをさらに取材する!」というコードで、先週に引き続き、小説家の山内マリコさんをお迎えしました。

山内:山内マリコです。今週もよろしくお願いします。

ユーミン:よろしくお願いします。先週話してみた感じ、どうでしたか?

山内:楽しかったです。

ユーミン:今週も、もっと行くよ!
先週もご紹介しましたが、山内さんは2008年、「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞。2012年に初の単行本『ここは退屈迎えに来て』で本格的に小説家デビューされて、近年は、2021年に映画化されて話題にもなった『あのこは貴族』、そして今年、デビュー以来培ってきた手法を惜しみなく記した集大成ともいうべき小説『一心同体だった』なども発売されて、注目を集めている山内さんなんですけれど。
昨日、最新作となる一冊『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』が発売となりました!
マリコ万歳! 今、どんな気分ですか?

山内:ほっとしてます。

ユーミン:もう“慣れっこ”って感じもあるかなって。

山内:ないない。毎回スリリングですね。慣れるっていう事はなくて、とにかく毎回ギリギリまで大変。ドタバタで。

ユーミン:オープニングでも、「山羊男の話に驚いた」とありましたが、その他印象に残ってるのは?

山内:やっぱり、パイプオルガンのくだりかな。立教女学院のチャペルでパイプオルガンで弾いたバッハを聴いてバーッて涙が流れて、「そこですごい感応して声も変わっちゃったくらいなの!」って仰っていて、ユーミンの声はすごくスペシャルなので、“ここも絶対書かなきゃ”。ただ、どうやって書くかによってはリアリティがなくなっちゃうなと思って、書き方気をつけなきゃ、みたいな(笑)。

ユーミン:先週も「音楽を小説にするのは難しい」と言ってましたけどね。音質のこととか、すごく外堀を埋めるような感じでサウンドが浮き上がるように書かれていると思って、“大したもんだな”と思いました。

山内:ありがとうございます。恐縮です。

ユーミン:“なるほど”っていうのはどう? “だから荒井由実が出来上がったんだ、納得!”のエピソードはありましたか?

山内:3日に渡って、時間で言ったら12時間くらいかけてお話を伺ったんですけど。3回目の取材で八王子のご実家の方に伺って、「昔使っていたピアノはこの部屋にあったのよ」と、“ここに置いてあった”という感じでお話を伺った時に、八王子は湿気が多い霧の出やすい土地だし、応接間がスレートみたいな石っぽい壁なんですよね。それでちょっと空気がこもって、ピアノの調律がどんどん狂って来ちゃう。でも調律師なんか入れずに弾き続けていたから、“ホンキートンクピアノ”みたいになった。でも、「それが荒井由実時代の楽曲を生み出したのかな」みたいな事を仰っていて、“これは書かねば”と。

ユーミン:先週の最後に「ベルベット・イースター」を聴いていただいたんですけど、あのイントロとか、特に『ひこうき雲』というアルバムを通して、雨とか雲とか霧とかそういうモヤーっとした空気感があるんですよね。それは、“あそこのあのピアノだったからだな”と自分でも思います。
“今回、あえて書かなかったエピソード”というのもあったと思うんですけど。

山内:あえて書かなかったというか、盛り込みたかったけど盛り込めなかった枝葉のエピソードはすごくたくさんあって。本当にに“昭和ゴシップ”がたくさん聞けたんですね(笑)。昭和の芸能界ゴシップが結構セットでお話が出て来たので、私はすごく好きだし、書きたいんだけど・・・。

ユーミン:今後それで一冊(笑)。

山内:ね、書きたいぐらいですよね。でも、これを書いちゃうと小説のカラーが変わっちゃうな、書きたいけど我慢しよう、という感じで(笑)。

ユーミン:そういうことも含めて、昭和の空気感満載の小説になっています。特にエンタメの様々出てくるので、自分でも「あー、そうだったのか」と思うような、多岐に渡った日本の・・・東京の・・・エンターテイメント、戦後のね。たっぷり、その辺から栄養を吸収したので、そこも楽しんでいただけると嬉しいです。

それではここで、山内さんからのリクエストにお応えしようと思うんですけど何にしましょう?

山内:ちょうど執筆が終わるほんのちょっと前のタイミングで、『深海の街』ツアー、東京国際フォーラムに行ったんですね。そうしたら、1曲目が「翳りゆく部屋」だったんです。パイプオルガンの音色から始まって、9か月に渡ってずっと八王子の由実ちゃんを描き続けてきたので、「由実ちゃん!」みたいな(笑)。「由実ちゃんが今、こんなすごいステージであの時書いた曲を・・・」みたいな感じでポロポロポロポロ泣いちゃうくらいに感激しました。


m2 翳りゆく部屋
荒井 由実

ユーミン:お送りしているのは、『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』を執筆してくださった山内マリコさんが選んだ1曲、「翳りゆく部屋」。

山内:これはやっぱり、少女じゃないと書けないですよね。

ユーミン:かもね。

山内:少女の感傷みたいなものが詰まっているな、と思って。10代の女の子って、窓辺の景色見ながら、こういう切ない気持ちにひたるじゃないですか。

ユーミン:死とかが近かったりするんですよね。

山内:あの純度じゃないと書けない曲。

ユーミン:たしかに・・・。

山内:世間にもまれちゃうと無くなっちゃう部分ですよね。

ユーミン:今日の「Yuming Chord」は、『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』出版記念!「作家・山内マリコさん、ユーミンをさらに取材する!」というコードでお送りしています。
この小説の主人公・荒井由実は、1950年代から60年代、70年代を自由に生きていくわけですが、山内さんは、この時代の少女たち(女たちも含めて)が置かれている一般的な状況についても、小説の中で細かく触れていますよね。

山内:戦後になって、女性が一応、男女平等の権利を憲法で保障されているということになって、一見すると強くなった・自由になったと思われてるんですけど、この時代はまだまだ女性が外で働くことがあまりなかったり、“結婚したら家庭に入る”というライフコースほぼ一択だった時代で。とくに女子大生が増えてきた時代なんだけれども、同時にすごいバッシングもあって、そのバッシングの内容が、大学が「女の子が増えても、どうせ会社には入らない。入ったとしても数年で辞めちゃうじゃないか。だったら男子学生の席を奪うなよ!」みたいな、とんでもない論調で。
そういう時代だったんだなというのを感じて、その背景もしっかり触れつつ、そういう、女の人がなかなか夢を叶えられない時代にユーミンが1人でこの道なき道を行ったんだ、というところを描きたいなと思いました。

ユーミン:“道なき道”とは思っていなくて。母の影響がとても大きいんだけど、多分、日本も戦前・・・それからもうちょっと遡って大正末期とかに、今よりもっと自由な時代があったようなんですよ。母はその空気を吸ってモガ(モダンガール)という時代を思春期に過ごしていたから、さばけていたんですよね。だから、私にすごく自由にさせたかったのかもしれない。そういう要素を小さい時から見出していてね。私も、9時〜5時でお勤めしたり、それから結婚して家庭に入ったり・・・っていうのを全く思いつかないモラトリアムだったから、道だと思っていなくて、“そうするのが普通”だったことがそのままいけちゃったのね。

山内:コネクションがやっと繋がって、作曲家としてデビューできるかもしれないとなった時、やっぱり嬉しかったんですよね?

ユーミン:もちろん嬉しかったし、必死でしたね。“必死で面白がってた”というか。渋谷からバスに乗って芝浦の方に通って曲を見せて、その辺りも書いてくださってるんですけど、そこから派生して、キャンティとかで色々な大人たちに会えて、今に至るくだりも色々出ています。

山内:行動力がすごいですよね。

ユーミン:そうね。あと、山内さんのおかげで、私が見たこともないような家族写真とかが出て来て。

山内:そうですね。ご実家に伺って、姪御さんに写真とかを用意しておいていただいて見せてもらって、(ユーミンが)「初めて見たわ」って仰っていて(笑)。

ユーミン:そう。父と母の新婚の頃の写真とかね。なかなか美男美女だったなと思って。父親が特に・・・。

山内:ハンサムですよね。身長高いですよね。

ユーミン:そうね、明治・・・。

山内:明治最後の年生まれかな。

ユーミン:イケメンだったんでビックリした。うちの母もかぼそくて、なんか可愛かった。

山内:可愛かったです。

ユーミン:私が言うのも何なんですけど(笑)。でも、両方身体は丈夫ですよ。両方長生きで、父はもう亡くなったけど、母は存命なんです。そのDNAは引き継いでるのかな。やっぱり丈夫じゃないと続けてこれないから。
そんな獰猛な、取材力は衰えしらず!の山内マリコさん、渾身の一冊!『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』。マガジンハウスから発売中です。発売されたばかり。

山内:そうです。

ユーミン:最後に改めて、この本をどんな風に楽しんでもらいたいと思いますか?

山内:日本の戦後から今に至るまでの重要な時期を描いているので、“どうして日本って今こんな感じなのかな”とか、“何でいつの間にか着物じゃなくて洋服を着るようになったのかな”とか、そういうことが線になって繋がるので、ユーミン自身の事を描きつつ、そういった歴史書みたいな感じでも楽しめると思うので、たくさんの人に読んでもらえたらなと思います。

ユーミン:そして、いつの日か映像化されたら楽しいよね。大変かもしれないけど。

山内:大変ですね(笑)。

ユーミン:とにかく是非、たくさんの方に読んでもらいたいと思います。
そろそろ山内さんとはお別れの時間になってしまいました。私との再会いかがでしたか?

山内:光栄の極みでございます(笑)。ありがとうございました。

ユーミン:また仲良くしてくださいね。

山内:こちらこそです。

ユーミン:これからの私へ何かメッセージってありますか?

山内:由実ちゃん、次の10年も頑張って!

ユーミン:頑張りまーす。ゲストは、作家の山内マリコさんでした。


m3 空と海の輝きに向けて
荒井 由実

今日は、『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』出版記念!「作家・山内マリコさん、ユーミンをさらに取材する!」というコードでお送りしてきました。
山内さんね、無邪気力・・・ペラペラペラペラ、いろんな話をしてしまいましたよ。
私の音楽は「映像的」とよく言われますけど、山内さんの文章も本当に絵が浮かんでくる。今までもたくさん映像化されてるのが頷けますが、自分でこの小説を読んで「あぁ、こうだったな」って、記憶がひょっとしたら改ざんされてるのかもしれないけど、子供の頃の自分が生き生きと浮かんできました。
そんな山内マリコさんの最新作『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』単行本は昨日から発売されています。
また、同じマガジンハウスの雑誌「an・an」でも連載されています。こちらもあわせて、お楽しみくださいね。

そして、こちらも絶賛発売中!『ユーミン万歳!〜松任谷由実50周年記念ベストアルバム』。
こちら、普通のベストアルバムとはわけが違います!
心をこめてトリートメントした、最新の音を、ぜひぜひ、聴いてみてください。
CD仕様と配信仕様、それぞれにあわせたMIXになっていますので、それぞれのシチュエーションでお楽しみいただけます!

そして、『50th Anniversary 松任谷由実コンサートツアー The Journey』も決定しています。
アリーナツアーの第1期は、2023年5月から8月までとなっていますが、日程のほか、詳細は、松任谷由実公式サイトでご確認ください。

そのほか、来月11月10日からのクリスマスシーズンは、丸の内エリアをジャックしちゃいます。
題して 「Marunouchi Bright Christmas 2022〜YUMING 50th BANZAI!〜」。
メイン会場となる丸ビル1階マルキューブには、高さ約8mの生木を使ったクリスマスツリーを設置します。
ツリー点灯式にも行く予定なので、お楽しみに!

そのほか、私の最新情報や近況はオフィシャルホームページのほか、ツイッターインスタグラムにもアップしていきますので、チェックしてくださいね。



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