Yuming Chord
松任谷由実
2022.12.09.O.A
♪Onair Digest♪

プライレスなモノ、お金では買えないものたちも、実は、経済と深い関係があるはず。
今日のコードは「愛と結婚と経済と〜WBSキャスター・滝田洋一さんを迎えて(後編)」です。


■今週のChordは“愛と結婚と経済と〜WBSキャスター・滝田洋一さんを迎えて(後編)”

ユーミン:今日のコードは、先週に引き続き、「愛と結婚と経済と」。
恋愛や結婚と経済の関係、そして、経済を動かすエンタメの未来のカタチなどなど、ちょっとアカデミックな話題を、わかりやすく、興味深くお話してくださるのは、この方です!

滝田:日本経済新聞社の特任編集委員で、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」の解説キャスターをしております、滝田洋一と申します。

ユーミン:先週に続いてのご登場。今日もよろしくお願いします。
私は、結婚は事業で経営で、子育ては投資だって言ってるんですね。子育てはしたことがないんですけど、勝手にそういうイメージを持っているんですけれど。いかがでしょうか?

滝田:これは、ちょうど、はからずもユーミンと同じことを言っている人がいまして。20世期を代表する経済学者、ケインズと並んで有名なシュンペーターという人がいるんですが、この人はすごい人で、まさに「結婚は事業、子育ては投資」といったようなことを言ってるんです。
それはどういうことかと言うと、資本主義、市場経済を支えているのは、企業を作って経営する人たちだ、というわけですね。彼らの価値観、要するに、自分の子供に事業を継承させていきたいという情熱が資本主義、市場経済を支えていくと。(ユーミンと)ほとんど同じことを言っていました。
ふと思いつくのは、ユーミンのご実家は呉服店だったわけじゃないですか。まさに、ビジネス、仕事をされているご実家だったから、そう(いう物事の見方ができる)なんだろうな、というのが1つと、あと、ユーミンのツアーやコンサートでは、いろんな人、スタッフを仲間にして経営体でやっていくじゃないですか。
単に音楽だけの世界ではなくて、実際の実業の雰囲気を持っているところがユーミンの特徴じゃないかなと思います。

ユーミン:自分でも、近年すごくそう思います(笑)。特に、コロナ禍でエンタメ業界がスタックした時に、「あの人たちは今、どうしているかな?」って心配したりして、「ああ、これって、自分は雇用も創出しているんだ」っていうことを、身に染みて感じました。

滝田:全くその通りですよね。
あともう1つ言うとすれば、子供が投資、子育てが投資だとすると、やっぱり世の中の先行きが見通せなくなると、子供を作って育てるということに投資リスクがあるので、出生数が減っているということがあるんじゃないでしょうか。

ユーミン:少子化は大変な問題ですよね。

滝田:そうですね。歴代の政権、今の岸田政権も「経済の好循環を作る」と言っていますが、その意味合いが大変大きいのは、そこにあるんじゃないでしょうか。


m2 Downtown Boy
松任谷 由実

ユーミン:じゃあ、例えば、恋愛は経済効果はありますよね?

滝田:大有りだと思います。さっきシュンペーターという人を紹介しましたが、もう1人、ドイツのゾンバルトという経済学者がいるんですが、『恋愛と贅沢と資本主義』というすごい本を書いていまして。
どういうことを言っているのかというと、要するに、昔の宮廷ですよね。王様がいて、王妃様がいて、貴族が集う宮廷で、夜な夜なパーティが開かれるわけです。そうすると、パーティは恋愛の舞台になった。それで、恋愛でモテるために豪華な贈り物をしたんです。その豪華な贈り物を世界中から集めてくるために商人たちが活躍した。それで、近代の資本主義経済が出てきた、という。
途中を省略すれば、宮廷で夜な夜な開かれたパーティ、恋愛劇が資本主義を生んだと、そういうことを言っているわけです。
簡単に言えば、浮気も含めて、「取り入ろう」という気持ちが資本主義を作ったと、そういうことなんじゃないでしょうか(笑)。

ユーミン:下心(笑)。

滝田:下心。まさにその点では、説得力に富む本じゃないかと思います。

ユーミン:若い人たちは結婚にメリットがないと言っているんですけれど、その辺はどうしたら良いでしょうね?

滝田:自分とは世代がかなり離れてしまっているんですが、ただ1つ言えるのは、それが「結婚」という形を取るのか、いわゆる「事実婚」なのかは別として、やっぱり困った時に助け合う人がそばにいてくれた方が嬉しいという気持ちを、みんなある程度は持っていると思うんですね。
そこがなかなか結婚に結びつきにくいとすれば、生活の基盤が不安定だと思っている人が多いからなんじゃないかと。
ですから、ありきたりな言い方ですが、お給料が上がっていくような世の中を作っていく。これは政治がやらないといけないことだと思います。

ユーミン:実は私、「経済は心」というのが持論なんです。
実は私の夫の父が銀行員で、外為(外国為替)をしていて、リタイヤしてからもとてもいろんなことを教えてくれて、ある意味“経済学者”みたいなところがあったんですね。
それで、自分で集めた骨董とかを私に引き継いでくれたりしていて。その義理の父が「経済は心だ」って言っていたんですよ。“本当にそうなんだ”って深く感じ入りまして、それからそういう目で経済を見るようになったんです。

滝田:それはすごい話ですね。ちょうど外国為替の話をされました。
外国為替って、日本からしたら円とドルの相場(レート)じゃないですか。これはいろいろな解説をする人がいるんですけれども、やっぱり“アニマルスピリッツ”と言うのかな・・・動物的な勘を持っている見通しの人の方が良いですよね。エコノミスト、いわゆる経済学者の見通しは何と言うかというと、「予想は嘘よ(よそうはうそよ)」って言って。

ユーミン:上から読んでも(笑)。

滝田:回文みたいになってますね(笑)。そういう裏を読むというのはダメなんですよ。
それより、今ユーミンが言ったような、“感性”というのかな。それを持っている人の方が経済については分かっているんじゃないのかなと、いつも取材していて思いますね。

ユーミン:あのね、自分でもそういう勘があると思います。

滝田:うん。そこはシャンパンの泡からバブル経済のイメージを持ったり、日本経済、みんなが豊かさを持ち出した時に楽曲で表現するとかね。
それはエンタメの世界と経済を繋いでるようなところで、その感性や感覚がないと、なかなかそういうものを作れないと思いますけどね。

ユーミン:WBS(「ワールドビジネスサテライト」)に出演させていただいた時もチラッと触れたんですけれど、骨董のお皿が好きなのは、お皿って、宝石とかそういう物と違って食卓を見ているじゃないですか。
団欒を見ているというか、暖かさが詰まっている物だから、火事があろうと、地震があろうと、引っ越しが何度あっても、その大切な目に見えない「愛」みたいなものが受け継がれていく。だから100年前のものが残ってたり200年前のものが残ってたりっていう。

滝田:そう思います。

ユーミン:それが何時の時代のアンティークか分からないにしても、“これは愛のあるお皿だ”とか、何か感じ取れるところがあるんですよね。

滝田:ひとつ、今の話に触発されて、僕が日頃思っていることをお伝えしたいんですけども、同じものを作っていても、「モノ消費」、「コト消費」があるとすれば、AppleのiPhoneだと思うんです。
最新型はiPhone14じゃないですか。
今1台いくらするかというと機種にもよりますが、16万4千円ほどするわけですけれども、これって中身を分解するとどうなっているのかというと、部品は日本や韓国や中国で作った物ばかりなんですよね。
だけど部品の値段にプラスアルファの部分がすごくあるから、スマホ1台が16万4千円で売っている。
ここがポイントだと思うんですよね。
「心」というか、みんながそれを欲しいな、と思うようなコンセプトといったら良いですかね。持っていると“スタイリッシュでカッコいい”と、そういう風になるわけです。
そうすると、部品だけを集めても16万なんかにはならないわけですよ。
だけど組み立て、コンセプトや概念にすることによって、その儲けがチャリンチャリンとAppleという会社に入ってくるような仕組みを作ったんですよね。
やっぱりアメリカがすごいのは、その単なる物とか部品は外国に作らせて、“こういうものを持っているとスタイリッシュでかっこいいよ”っていう、みんなのハートを掴んでしまう物を作る能力じゃないかなと、そんな感じがします。

ユーミン:それを持ってるとワクワクするっていう。それに対してお金を払ってるっていうことですね。

滝田:そうそうそう。一点、そのワクワクで追加したいとするとですね。
日本で今勝てる製品って、やっぱり自動車だと僕は思うんです。ところが、ここへ来て電気自動車、EVですよね。
それから自動走行という形でチャレンジを受けているわけですよ。
そうすると、今度は日本がどういう形で車で勝負できるかというと、やっぱり車の中に乗っているとワクワクするようなエンタメ空間を車の中に作るということだと思うんです。
その意味では、昔だとカセットテープをカチャッと入れて「中央フリーウェイ」を聴きながらドライブしていたのと同じような格好で、車の中を丸ごとエンタメ空間にするような動きに、今後はなっていくと思うんですよね。

ユーミン:それは、メタバースとかと親和性は高いですか?

滝田:ものすごく高いと思いますね。


m3 Call me back
松任谷由実 with 荒井由実

滝田:アルバム『ユーミン万歳!』のプロモーションの時に、メタバースを使われたじゃないですか。

ユーミン:メタバース・デビューしました。

滝田:あとユーミンの声をAIで作ったじゃないですか。だから、人工知能とか仮想空間で、ものすごく人間の行動範囲が広がる。

ユーミン:そうですね。有名なアイドルグループが、今は握手会とかができないから、その代わりにメタバースに参入するっていうのは、これは本当に有りだなって。

滝田:それは面白いですね。

ユーミン:そういうあたりから、ますます発達していくのかなって思いました。

滝田:その通りだと思います。

ユーミン:話は尽きないと言うか、本当に面白いですね。未来に希望が持てるということと、また言い方が違うんだけれども、伸び代をすごく感じて元気が出ます。

滝田:伸び代と仰いましたけども、本当は日本の経済で一番重要なのは、世の中が、技術の点などでもそうですが、大きく変わりつつある時に縮こまっていないで飛び出して行くことではないかと思いますね。

ユーミン:そうですよね。その姿勢が大事だと私は思います。
今日は滝田さんありがとうございました一緒に私たち頑張りましょう!

滝田:頑張りましょう!


今日は、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」、通称WBSのキャスター、滝田洋一さんをお迎えしました。
「結婚は事業、子育ては投資」・・・私、シュンペーターの理論、直感的にわかってたんですね!滝田さんにも、褒められました(笑)。
今日はメタバースのお話もいろいろ出てきましたけれど、XR worldへ、私のアバターに会いに来てください!今年いっぱい会えます。
滝田さん、ありがとうございました。なんだか賢くなれて、希望が持てます。

さて、昨日、12月8日からスタートした大・展覧会、「YUMING MUSEUM」。
六本木ヒルズ森タワーのシティビューで開催中となっていますが、来週と再来週の2週にわたって、私、本人が会場に出かけてきた模様を放送します。
来場者のいないタイミングでの潜入取材・・・ぜひ、音声でお楽しみください!
チケット購入の方法や会期中の詳細は、「YUMING MUSEUM」公式サイトをチェックしてくださいね。

そのほか、私の最新情報や近況は、私の公式ホームページツイッターインスタグラムなどでお知らせしています。
ぜひ、チェックしてみてくださいね。



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