Yuming Chord
松任谷由実
2022.12.16.O.A
♪Onair Digest♪

ただいま、六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティビューで開催中の「YUMING MUSEUM」。こちらの大・展覧会を作りあげて下さったお二人をお迎えして、「YUMING MUSEUM」完成秘話を伺っていきます。
今日のコードは「YUMING MUSEUM〜ユーミンの謎に挑んだ仕事人」です。


■今週のChordは“YUMING MUSEUM〜ユーミンの謎に挑んだ仕事人”

ユーミン:「YUMING MUSEUM」、もう観ていただけたでしょうか?
デビュー50年という長きにわたるキャリアがある私の膨大なデータを、”よくぞ、ここまでまとめてくださいました!”という気分です。
そこで! 今日は、この展覧会の制作に関わってくださったお二人とともに、改めて「ユーミンの謎」に向き合ってみようと思います。
ということで早速、お二人にクエスチョン!
この「YUMING MUSEUM」を作りあげて辿り着いた一言をお願いします。ずばり、「ユーミンとは〇〇である」。
まずは、君和田さんからどうぞ。

君和田:朝日新聞の君和田敬之と言います。この企画の担当をしています。僕の答えは「ユーミンとはトランプのジョーカーである」です。

ユーミン:いいですね。自分で勝手に解釈しました(笑)。では、続けて阿部さんにも一言お願いします。

阿部:展覧会のデザインを担当させていただいた、建築家で空間デザイナーの阿部真理子です。「ユーミンとは滝である」です。

ユーミン:いいですね! これも私が勝手に良く解釈しました(笑)。そのココロは、追々、伺っていこうと思います!
そんな今日のコードは 「YUMING MUSEUM〜ユーミンの謎に挑んだ仕事人」!
改めまして、ただいま六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティビューで開催中の「YUMING MUSEUM」。こちらの大・展覧会を作りあげてくださったお二人をお迎えして「YUMING MUSEUM」完成秘話を伺っていきます。どうぞよろしくお願いします!


ユーミン:デビュー50周年を記念して企画された、私のキャリア初となる大規模な展覧会「YUMING MUSEUM」。
最初にこの話がもちあがったのは・・・君和田さんに持ち込まれたんですけれど(笑)。初めてお会いした時に、大枠の、“どういうテイストの展示にしたいのか”というのを擦りあわせしたんですよね。その時に、君和田さんが「普通の人と尖った人との割合をどのように考えていますか?」と聞くので(笑)、「尖った人7割で、普通の人3割」って言ったんですよ。そしたら君和田さんに「正解です」って言ってもらえてね。

君和田:やっぱり展覧会はファンの為のものでもありますし、「見たかったものを見れる」という機会でもあるんですけど、“こんなものがあったんだ”とか“こんな人だったんだ”とか新しい気づきがある、ということが展覧会の1つの役目だと思っています。
なので、今回の展覧会では、今まで知らなかった由実さんのことを“気づく”“発見する”場になるといいのかなということを、初めて会った時に共有できた気がして、こういう展覧会が始まったのかなと思います。

ユーミン:その次の段階で、「じゃあ、具体的にどういう方にお任せしたら良いんだろう」というところに話が及んで、君和田さんが大推薦の、空間デザイナーの阿部真理子さんにお願いすることになったんです。
阿部さんは今までいろんな催し物をオーガナイズドしてきていると思うんですけども、存命の、しかもミュージシャン。音って形になりづらいですよね。

阿部:はい。

ユーミン:その辺はどのようにまとめようと思われましたか?

阿部:私も形のないものを形にしなくてはいけないので、“どうしよう?”と思った時に、もちろん頭の中で生まれてくるんだけども、やっぱり手で詞を書いて、そこにたまたまピアノという楽器があったりして、その状況があって生まれてくる・・・さっき「滝」と言いましたけど、エネルギーみたいなものが音楽なんだろうなと思って、最初の空間をデザインしたのが始まりです。


m2 青春のリグレット(2022MIX)
松任谷 由実

ユーミン:お送りしたのは、アルバム『ユーミン万歳!〜松任谷由実50周年記念ベストアルバム〜』から、「青春のリグレット(2022MIX)」でした。
そんなお二人が、私本人でさえ把握しきれていない膨大な量の資料やアイテムを、「YUMING MUSEUM」で生き生きと再現してくださったわけなんですが、どういう手順で整理されていったんでしょう?

君和田:まずは初めに、コンセプトから考えていったと思います。「風景」と「時間」ということが展覧会のコンセプトにあった中で、“この「風景」が見える東京シティビューという場所でやるユーミンさんの展覧会って、どんなものだろう?”ということを考えていったと思うんですけども、そのコンセプトを考えている時に、「作っている時の資料をけっこう捨てちゃってるのよね」とユーミンが仰られて、ちょっと目の前が真っ白になったというか(笑)。
結果的には、ご実家から物が出てきて素晴らしいものを手にさせていただいたんですけれども、それが見つかるまでの間は、コンサートが大事なのか、アルバムを作っている時間が大事なのか、それとも雑誌に出たりラジオに出たり等身大の姿で活動されている由実さんが大事なのか。
この50年のどこを切り取ったら展覧会として魅力的なのかは、ずっと行ったり来たりしているような時間がけっこう長くあったんですけれども、そんな時に正隆さんが「やっぱりコンサートが時代を反映してユーミンの活動の軸にあると思う」と仰られた時に、コンサートの公演の数をかぞえたんですよ。そうしたら、由実さんは、50年間でデビューコンサートから2000回以上ステージに立たれているんです。

ユーミン:もうね、自覚ないんですよ(笑)。

君和田:すごい数を、グループではなく、1人でステージに立たれている。やっぱりこの展覧会のど真ん中にはコンサートの姿があるんだなということがわかった時に、周りを固めていくものがわかってきたというところがあって。そういう、行ったり来たり、迷った中でやってきたようなところがありました。

ユーミン:それに補足して言いますと、コンサートということを軸に掘っていくと、コンサートって“楽曲ありき”なんですよね。どんな演出で、どんなライティングで、どんなセットで、衣装で・・・ということがあっても、曲がなかったら成り立たないんですよね。
そういう意味では、グルッと創作のところに連結していて、そこが一番表現しづらいところだったんじゃないかなと思います。それがこちらの心の中というか、脳の中に触れるような展示になっていたのが、自分で驚きだったし、ありがたかったです。

君和田:(展覧会は)由実さんに出会えるような場にしたいなと思っていて。2020年に展覧会のご相談をしたので、まさにアルバム『深海の街』を作られてツアーの準備をされている頃で、人と人が会えない時間だったし、好きな人のコンサートに行けない時間だったし、もう、人は“荒井由実”さんとは直には会えないけれど、気持ちでは会える、という時に、“この展覧会では由実さんに会える場所にしたい”と。
それは現在の由実さんだけではなく、昔からの由実さんにも会えたらいいなというところがあったので、由実さんが書いた物や写真とかで近づきながら、でもやっぱり最後は、“会える場所”はコンサートなんだなと思ったので・・・ファンが最後に由実さんに会えるハイライトの場所が展覧会のラストにあるので、阿部さんが素晴らしい構成にしてくれたなと思っています。

ユーミン:それって、展覧会を観た人が自分に会えるってことですよね。

君和田:はい。

ユーミン:今日のコードは、「YUMING MUSEUM〜ユーミンの謎に挑んだ仕事人」。六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティビューで開催している「YUMING MUSEUM」の会場からお送りしていますが、この会場だからこそ、の演出も楽しめますよね。

君和田:そうですね。由実さんが通われていた「キャンティ(CHIANTI)」のイメージからも、六本木はちょっと夜遊びのイメージもあり(笑)。その由実さんの50周年の年に、この場所で展覧会が出来るチャンスがあるというのを聞いた時に“いいな”と思って。

ユーミン:私ね、そういうのを何か持ってるんですよ。自然と収斂されていくようなところが(笑)。

君和田:集まってくる(笑)。

ユーミン:だから、阿部さんのセンスっていうのも、何か引きよせあえた感じがしてるんです。
「ユーミンとは滝である」と言ってくださったんですけれど、一瞬 「方丈記」の「ゆく河の流れは…(原文:ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。
世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。)」という、その日本人的な時の流れや事の流れというのもすごく作品に反映されている感じが、自分でもしているんですよね。

阿部:そうなんです。膨大なエネルギーだし、天気が変われば滝の水量も変わると思うんですけれども、それがやがて海まで流れて誰かのところへ届いた時に、そこで何か1つの世界が広がっている、みたいなところが、「ユーミンは滝だな」と思ったんですけども。

ユーミン:やっぱり音楽、特にポップミュージックって、届いた時に完成するし、そこから広がっていくし・・・というのが、海に出ていく感じが私もします。

阿部:それが届いた時に、たぶん、届いた人はどこから来たのかわからなくても、その根元ではすごい水量でエネルギーを流している、というイメージで「滝」とお話ししました。


m3 ひこうき雲(2022MIX)
荒井 由実

ユーミン:お送りしたのは、アルバム『ユーミン万歳!』から、「ひこうき雲(2022MIX)」でした。
お二人に伺いたいんですけれど、“ここにこだわった”という点はいかがですか?

君和田:僕は八王子のご実家に行かせていただいて・・・我々は「ガサ入れ」と呼んでおりますが(笑)。ガサ入れさせていただいた時に見つかった、由実さんも忘れかけていたような、10代の時の・・・。

ユーミン:ほとんど忘れてますね。

君和田:あの手書きの、10代の荒井由実さんの書いているものをいろんな人に見てもらえるのがすごく嬉しくて。初公開だと思いますので、そこを観てもらえることが僕のこだわりです。
「ひこうき雲」の歌詞が書かれていたスケッチブックがあって。初め、僕らがスケッチブックの山を見つけて、そこにはいろんなデッサンとかが描かれていたんですけども、いざお借りしてからもう一度見直したら、そこにはたくさんの歌詞が書かれていて。
それは、アルバム『ひこうき雲』に収録された曲の、本当に原型だったんです。ほとんど完成に近いような歌詞が書かれていて、ちょっと油断して絵のスケッチブックだと思っていたら、すごいものが混ざっていた、ということがあってですね(笑)。

ユーミン:自分ではすごいものかどうかわからないんだけど、今の君和田さんのお話を聞きながら、“この時点で大展覧会をやっておいて良かった”って(笑)。これ、死後にやられたら、すごい心残りのまま死んでいくことになるから、まだ判断能力がある内にセグメントできるのがありがたいなって思いました(笑)。

君和田:あれを見た時に(由実さんが言った)「絵を描く自分と歌を作っている自分は繋がっていて、同じことをしているから、この1冊(スケッチブック)にかいているんだよ」という一言は、生きてらっしゃらないと出てこないので(笑)。

ユーミン:ああ、危なかった(笑)。阿部さんはいかがですか?

阿部:今の話の流れでいくと、絵を描いている部屋と詞を書いてる部屋が(展示の構成上)裏側なのは、そういうことにもこだわってるからなんです。カーテンを挟んで、裏の部屋からは「ベルベット・イースター」の弾き語りが聴こえているんですよ。その手前に絵があって、別の世界が繋がっている、みたいなことを考えていました。

ユーミン:最後に、君和田さんに答え合わせをお願いしたいんですけれど、「ユーミンとはトランプのジョーカーである」、これを解説していただけますか?

君和田:ジョーカーは、例えば「七並べ」をしていると、どの枠にも入っていける。由実さんは「ステージ、コンサートの時にどんな衣装が来ても私が体をあわせていく、どんな演出が来ても私がそこに出ていって演りこなすの」と。そういう用意された場所に自分がどこにでもハマっていける自信みたいなのも感じましたし、ジョーカーは、「大貧民」とかやっていると、とにかく一番強くて、誰とでも組める。そういう強さも持っていて、その強さと柔軟さがあるからこそどこにでも行ける。だからこそ、由実さんという1つの線がずっと途切れずに繋がり続けるというのを感じて。
しかも、衣装の展示の中に「シャングリラ」で着たトランプのジョーカーの服を由実さんが「ずっとこれが気に入ってる」と仰っていて、それを見た時に、“由実さんはジョーカーなんだな”と思いました。

ユーミン:たくさんのカルチャーが詰まった展示ですから、たくさんの方にご来場いただいて、みなさんにもぜひ、“ユーミンの謎”を解き明かす旅を楽しんでいただきたいと思います。
今回のゲストは、私の膨大な楽曲や映像、さまざまな資料を美しく整理して、愛情をこめてひとつひとつに光を当ててくださったお二人、「YUMING MUSEUM」の展覧会企画者、君和田敬之さん、そして、空間デザイナーの阿部真理子さんでした。どうもありがとうございました。


今日は、六本木ヒルズ・森タワーの東京シティビューで開催中の、「YUMING MUSEUM」制作エピソードをお届けしてきました。
この展覧会をつくりあげたお二人が導き出した、ユーミンの謎、その答え。なるほど、深い、本当にぴったりな表現をそれぞれしてくださったと思いつつ、きっと答えはひとつじゃないはずだから、いろんな答えを、聴いてくださった方、そして展示を観てくださった方が導き出すはずなので、無限に広がるなというワクワク感が・・・私本人で申し訳ないんですけど、しました。
そもそも私、まだまだ現在進行形ですから!

来週は、私本人が「YUMING MUSEUM」の会場に潜入!
展示に触れながら記憶の扉を開けて、「YUMING MUSEUM」がもっと楽しめるようなヒントをお届けします。
これから行く方も、リピーターの方も、お聴きのがしなく。

六本木ヒルズ森タワー52階の東京シティビューにて、来年、2月26日まで、毎日開催中の「YUMING MUSEUM」。
チケット購入の方法や会期中の詳細は、「YUMING MUSEUM」公式サイトをチェックしてくださいね。
また、会場と同じフロアにあるレストラン「THE SUN & THE MOON」では、私の楽曲をテーマにした、アフタヌーンティーやカクテルを期間限定でご用意しました。
予約制となっていますので、こちらもあわせてお楽しみくださいね。

そのほか、私の最新情報や近況は、私の公式ホームページツイッターインスタグラムなどでお知らせしています。
ぜひ、チェックしてみてくださいね。



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