Yuming Chord
松任谷由実
2023.08.25.O.A
♪Onair Digest♪

衣・食・住、あらゆる知恵をしぼって暑さをしのいでいますが、もうひと工夫、必要かも。
今日のコードは「残暑やわらぐホラーの世界」です。


■今週のChordは“残暑やわらぐホラーの世界”

m1 bad guy
Billie Eilish

独特な世界観に引きずり込まれるBillie Eilishサウンド。
この曲はホラー映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』の主題歌にも使用されました。

お送りしたのは、Billie Eilishで「bad guy」。

そんな1曲でスタートした、「Yuming Chord」。
ついつい、口にしてしまいますが、今年の夏はほんっとに、暑いですね。
ツアー先のみならず、東京に居ても、パフェハントの日々がやめられません。
衣・食・住、あらゆる知恵をしぼって暑さをしのいでいますが、もうひと工夫、必要かも。
と、いうことで、今日のコードは「残暑やわらぐホラーの世界」です。

デビュー50周年を記念したコンサートツアー「The Journey」も第一期を無事終えて、今は中休み・・・と言いたいところですが、51年目もおかげさまでそこそこ多忙な毎日(笑)。
まわりからは「働き過ぎ!」と言われちゃっていますけど、オフタイムは心身のメンテナンスに費やしています。
で、心の栄養といえば、やっぱり読書。新旧問わず、積ん読(つんどく)のままだった本や、新たな気分で読み返してみたくなった本を読んでいます。
中でも、残暑が厳しいこの時期は、ホラーの世界にひたって涼むのが一番。

最近読み返しているのが、小松左京さんの『自選恐怖小説集 霧が晴れた時』。
品性と知性あふれる文章にうっとりしながら、ひたひたと静かにやってくる恐怖を味わって涼んでいます。
中でもぞわーっと鳥肌がたった物語は、「すぐそこ」「保護鳥」など。

ご存知の方も多いと思いますが、小松左京さんは、星新一さん、筒井康隆さんと共に「御三家」と呼ばれる、日本を代表するSF作家で、京都大学文学部イタリア文学科卒の超インテリ。
経済誌記者、工場経営、ラジオ漫才台本執筆などを経て31歳でSF作家デビュー。

1973年に出版された『日本沈没』は、上下巻合計400万部超えのベストセラーで、翌年、第27回日本推理作家協会賞を受賞しています。

創作活動と並行して国内外の各地を訪ねてのルポルタージュや、地球と人類文明を考えるエッセイにも取り組み、世界初の国際SFシンポジウムを組織したり、1970年の「大阪万博」、1990年の「国際花と緑の博覧会」の企画と運営、1984年公開の映画『さよならジュピター』で原作・脚本・制作・総監督の四役を務めた小松さんは、ジェネラリスト!

小松左京さんの「自選恐怖小説集 霧が晴れた時」のあとがきを読むと、近代ミステリーでは恐怖を合理的に説明する、という手法が取り込まれていく中、切り捨てられてしまった古い不思議な話や、人類の古い財産である恐 怖・・・、民衆の口から口へ伝えられていくうちに出来上がった怪談といったホラーの伝統を、SFの枠組みで取り組めるのではないか・・・そう考えて、この作品群をつくっていった、と書かれています。

それと、以前この番組でも紹介した中国の古典『聊斎志異(りょうさいしい)』も、残暑やわらぐ怪奇小説。中国、清代の文人・蒲松齢が記したもので、この作品には、日本人にもなじみ深い怪談話のルーツが見つかったりします。

こおろぎになった少年、菊の精の姉弟、豆つぶのように小さい犬、美女に化けた狐、謎の仙人・・・人間と幽霊・妖精・動物たちとの交流を描いた怪異譚です。

ちなみに現在の中国では、中国共産党が「幽霊」の存在を認めていないため、中国映画界で「幽霊」を扱った作品は制作も上映もできないそうです。

ホラー小説の鬼才、平山夢明さんの新書、『恐怖の構造』によれば、恐怖と文化は深い関係があって、宗教観なんかによって違いがあらわれるといいます。
例えば、欧米のキリスト教圏では、デビルやデーモン、中でもアメリカでは超能力系のホラーや鉤爪男など、都市伝説も恐怖の対象。
また、イギリスは恐怖小説の本場で、18世紀半ばに書かれ始めた恐怖小説は、巡回型貸本屋さんで借りられる本の9割を占めるほど。その流れは19世紀に、ホラー、推理小説、SFへ枝別れして、カントリーハウス殺人事件や探偵物といった、イギリスならではの分野を確立してきました。

アメリカ映画の話になりますが「悪魔のいけにえ(テキサス・チェーンソー大量殺人)」、「エクソシスト」がこの例ですね。


m2 Paradise Circus
Massive Attack

退廃的で、ある意味不気味なサウンドに吸い込まれていく1曲。
お送りしたのはMassive Attackで「Paradise Circus」でした。

「Yuming Chord」。今日のコードは「残暑やわらぐホラーの世界」。
科学哲学が専門の戸田山和久さんの本、『恐怖の哲学 ホラーで人間を読む』によると、恐怖を楽しむことができるというのは、きわめて「人間的な事実」。
恐怖は明確な対象に抱くものでありながら、「その対象を間違う」こともあるといいます。
つまり、縄を蛇と間違ったとしても、怖がることができる。
だから、恐怖がホラーという娯楽として成り立っている、ということなんだそうです。
恐怖は知性、脳内の知的な営み、ってことなんですよね。

日本人は、吸血鬼や怪物とか、実体のあるものだけでなく、実体がないもの、眼に見えない何かに恐怖を感じることが得意!・・・幽霊の正体見たり枯れ尾花、的な感性があるんですよね。

それが、Jホラーと呼ばれるジャンルの小説や映画となって、今や海外でもブームになっているわけで、じわじわと迫ってくるような恐怖を感じる力は、まさに知的な営みだし、想像力を必要としますよね。

さきほどの、戸田山和久先生によると、恐怖は本来不快で避けたり、逃げたりするべきもの。
ホラー小説やホラー映画のほか、お化け屋敷やジェットコースター、バンジージャンプなど、人々がどうして恐怖体験を楽しんでいるのか、というと・・・。
そもそも恐怖とは、「身体的反応の知覚」なので、アドレナリンがどばーっと出て、交感神経系が興奮・覚醒する=快感になる。
恐怖はエンドルフィンの分泌を促しますが、これは「脳内麻薬」とも呼ばれるように、鎮静作用と快感をもたらす神経伝達物質。なので、こちらも分泌されると快感。
ホラーマニアになる人は、この物質にやられてしまうんですね。

恐怖体験のその裏で起こる、身体の変化。
上手につきあいたいところです。ちなみに私も舞台に立つときは、ドーパミンもエンドルフィンも体内で放出されている気がする・・・。

それにしても、今や、世の中に起こる事件が、そのままホラー・・・、そんな時代。
物語としてのホラーの、その裏にある人間の愚かさや弱さをしっかり見据えて、自分の行く末を静かに考えてみたい、夏の終わりです。

では、今日のコード「残暑やわらぐホラーの世界」にちなんだ、私の曲を。


m3 時をかける少女
松任谷 由実

お送りしたのは、1983年リリースのアルバム『VOYAGER』から、「時をかける少女」でした。

今日は、「残暑やわらぐホラーの世界」というコードでお話してきました。
最初にご紹介した、小松左京さんの『自選恐怖小説集 霧が晴れた時』。
寝苦しい夜にもおすすめの短編集ですので、ぜひ、読んでみてくださいね。

そして!ここでお知らせです。

わたくし、松任谷由実がパーソナリティを務めるTOKYO FM「Yuming Chord」と、ニッポン放送「松任谷由実のオールナイトニッポンGOLD」。
ふたつの番組で、放送局の垣根を越えた、初の“コラボレーション公開録音”を開催します!

そこで、デビュー51年目のサプライズ発表を行って、それをリスナーと一緒に乾杯するという、記念すべきイベントです。
タイトルは、「TOKYO FM “Yuming Chord” & ニッポン放送 “松任谷由実のオールナイトニッポンGOLD” コラボレーション公開録音イベント 〜ユーミンと乾杯!〜」。

9月13日(水)午後4時から、東京メトロ・半蔵門駅からほど近いTOKYO FMホールにて開催するこのイベントに、「51年目」にちなんで、ペア51組102名を抽選でご招待します。

現在、応募期間中なんですが、なんと、締め切りが本日、8月25日(金)の23時59分まで!
『Yuming Chord』のホームページのトップページにある、「ユーミンと乾杯!!」特設バナーをクリックして、応募フォームから今すぐ、エントリーしてください。
なお、抽選後の当選発表は、当選者の方へ、直接メールにてご連絡します。
みなさんのご応募、お待ちしています!

そして、デビュー50周年を記念した全国アリーナツアー、大和証券グループpresents 50th Anniversary 松任谷由実コンサートツアー「The Journey」は、来月、第二期に突入!
9月9日・土曜と10日・日曜に、宮城県のセキスイハイムスーパーアリーナからのスタートです。

そのほか、今後のツアーの詳細や私の最新情報や近況は、私の公式ホームページX(旧ツイッター)Facebookインスタグラムなどでお知らせしています。
ぜひ、チェックしてみてくださいね。



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