Dream Heart(ドリームハート)

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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.191 工藤律子さん

2016年11月27日

今夜お迎えしたのは、ジャーナリストの工藤律子さんです。

工藤さんは、大阪生まれ。
東京外国語大学 大学院 地域研究研究科 修士課程在籍中より、
メキシコの貧困層の生活改善運動を研究し、取材活動を始められます。

現在は、フリーのジャーナリスト、NGO「ストリートチルドレンを考える会」の共同代表として活躍をされていらっしゃいます。

今月の25日に、集英社より刊行された「マラス――暴力に支配される少年たち」で、
第14回 開高健ノンフィクション賞を受賞されました。
  
今日は、受賞の喜びと共に、
受賞作となった、「マラス――暴力に支配される少年たち」について、お話を伺いました。






──若者のギャング団「マラス」


茂木:今年の開高健ノンフィクション賞の受賞、おめでとうございます!

工藤:ありがとうございます。

茂木:今回の作品ですが、ホンジュラスを中心とする中米の少年たちのことなんですよね。

工藤:マラスというタイトルになっているのは、中米を中心に支配が広がっている若者のギャング団、下は5、6歳からと言われているくらい、主に若い人達が入っているギャング団のことを一般に皆がマラスと呼んでいるんです。

茂木:ホンジュラスという国は、最近、治安があまり良くないらしいですけど。

工藤:取材で行った場所のひとつ、サン・ペドロ・スーラっていう、ホンジュラスの中でも北のグアテマラとの国境に近い街。
ちょっと前までは、世界一殺人事件が起きると言われていた、そういう場所ですね。

茂木:その背景としては、どんなことがあるんですか?

工藤:本のテーマになっている、マラスというギャング団がお互いに抗争をしたり…メキシコの麻薬カルテルとかが、麻薬を南米から持ってくるルートにホンジュラスとか中米もかかっているんですよね。

茂木:ホンジュラスが入っているっていうことですね。

工藤:そのあたりのギャングを使って麻薬の密輸をしていますし、武器まで使ったような抗争とか殺人が起きている、そういうところですね。
もともと、マラスというもの自体はアメリカ合衆国のカリフォルニア州で生まれたギャングなんですけど、最初は麻薬カルテルがどうのっていうものではなかったんですね。それが麻薬カルテルの方が勢力を拡大していって、商売の手を広げていったという中で、マラスの若者たちが組み込まれていった経緯があります。

茂木:アメリカ大統領選挙の中では、トランプ候補がメキシコとの間に壁を作るみたいなことを言って話題になりましたけど。
メキシコよりもさらに、ホンジュラスなどから見るとメキシコは恵まれた国と見えるくらいですか?

工藤:そうですね。経済的にはメキシコの方が、中米より圧倒的にいわゆる豊かです。中米の人から見たら、とりあえずメキシコに行って、そこから上手くいけば米国にいけるっていうのが成功への道、経済的に豊かになるためのルートみたいなところはありますね。

茂木:トランプさんが言っていたメキシコでさえ、中米の子供達にとっては憧れの場所となってしまうくらいということなんですね。

工藤:昔から”メキシコの首都は大都会だ!”っていう感じなので、中米の子達からしたらメキシコシティーまで行くのは、”都会に行く!”という感じだと思います。





──日本との共通点


茂木:拝読させていただいたんですけど、どんな環境でも人間は生きるために懸命に努力するというか。
そんな中で、信仰の道に行かれた方の生き様とかが印象的でしたが、現地では信仰は大きな支えになっているんですか?

工藤:ラテンアメリカに行くと感じるのは、文化的に500年以上前に、スペイン人に征服されて以来キリスト教が入って。
生まれた時から聖書の中のお話に囲まれて育っているので、絶望的な状況に陥っても”神様に頼めば、なんとかなるかも”という救いを見出せる、そういう環境が社会にあるのかなと思います。

茂木:なるほど。

工藤:ギャングをやめたいんだけど、今、マラスは入ってしまうと基本出ることは出来ないんですよね。
「出る」と言うと仲間が殺しに来たり…じゃあ、どうやったらギャングをやめられるのかと言ったときに「教会のお仕事をして、信仰に深く入り込むのでギャングをやめます」と言って、実際に抜けることが許されるんですね。
どんなことをしてる子達であれ、最後、追い詰められた時に頼れるのは神様しかいないという潜在的な意識があるからかなと、今回取材をして思いました。

茂木:現実が厳しいから、その分信仰への思いも強くなることもあるんでしょうけどね。
工藤さん自身は、外語大でメキシコの貧困層の生活改善運動を研究されたということで、現地の少年たちの生き様を見ている中で、いまの日本を見ると、どういう風に見えていますか?

工藤:ストリートチルドレンというテーマを軸にして、ラテンアメリカとか、世界のいろんな国の子供たちとか若い人たちを取材してきたんですけど。それも結局、例えば今回のようにホンジュラスという国でギャングになっている子達が、こんな状況なんだよと、ただ知ってもらいたいというよりは、日本のいまの状況とこういうギャングになっている子達の状況って、実は根底でつながっていることを感じていて。
表れ方は日本人から見ると違うというか、日本でギャングの抗争なんていうと考えられないと思うんですけど、そうさせている社会のあり方が、実は同じという気がしています。

茂木:それが今回の受賞の理由にもなっているだろうし、この本を多くの方に読まれて欲しい理由になっていると思いますね。
こういう若者たちを助ける活動をされているじゃないですか?何がきっかけで変わるんでしょう?

工藤:”自分は、なぜ生きているんだろう?自分がやれる事は本当は何だろう?”と、気づけた人が変われるって思うんですよね。
ただ、気付くためにストリートに暮らしている子達もそうだし、ギャングになっている子もそうだし、日本の子達で生きずらいなと感じている子たちもそうだと思うんですけど。
そもそも彼らの事をちゃんと見てくれる大人がいなかったり、今ギャングになった子達も、親がアメリカに出稼ぎに行っちゃって小さい頃からいなかったり。親が子育てに気を配らなかったり、虐待なんかをしているもんだから、路上に来ていた子が多いので。
そもそも自分の事をちゃんと見てくれる人がいなかった子達なんですよね。そういう人が変わろうと思うためには、自分が変わる理由を理解しないと、変わるにも変われないっていうのはあって、いつもそう思いますね。





「工藤律子 オフィシャルブログ」

「Cambio en la Calle - YouTube」

●工藤律子・著「マラス 暴力に支配される少年たち」


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来週のゲストは、引き続き、ジャーナリストの工藤律子さんをお迎えしてお話をうかがっていきます。
どうぞお楽しみに。
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