Dream Heart(ドリームハート)

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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.271 辻村深月さん

2018年06月09日

今週ゲストにお迎えしたのは、ポプラ社から刊行されました「かがみの孤城」で
本年度の本屋大賞を受賞されました、作家の辻村深月さんです。

辻村さんは、1980年山梨県笛吹市生まれ。
そして、千葉大学教育学部を卒業後
2004年に「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト賞を受賞してデビューされました。
「ツナグ」では吉川英治文学新人賞を。
そして「鍵のない夢を見る」で第147回直木賞を受賞されました。
そのほか、「凍りのくじら」「ぼくのメジャースプーン」「スロウハイツの神様」「島はぼくらと」「ハケンアニメ!」など、多数のご著書があります。

今週は、本屋大賞を受賞された「かがみの孤城」の世界観や作品について、お話しを伺っていきたいと思います。





──「かがみの孤城」というタイトルの由来


茂木:本屋大賞というと、全国の書店員の方が”今、一番売りたい本”を投票で決めるんですよね。

辻村:そうなんです。
書店員さんが今、一番売りたい本を選ぶっていう言い方なんですけど、もっと言うと”この本を必要とする人がいる”っていう風に書店員さん達が思って下さったんだなぁ、と。
この年の代表に選んでいただいたというか、書店の世界の観光大使をこの本が1年任せてもらったみたいなことなんだろうな、と思って今は本当に光栄に思っています。

茂木:そして、今回の「かがみの孤城」カバーイラストの世界観が本当に素敵で、このカバーご本人から見てどうですか?

辻村:素敵ですよね!私も頂いた時に素晴らしいと思って、今は帯が変わっちゃったんですけど、最初に本が出た時の帯には「あなたを、助けたい」って書いてあったんですね。
それが、作者とか作り手側から読者に。っていう風にも読めますし、表紙のこころが自分自身に向けて言ってるような感じもあって、
そういう意味でも本当にこの表紙しかないなって思える表紙になってくれたと思います。

茂木:とにかく、全国の書店員さんが今、一番売りたい本ということで、本屋大賞に選ばれて、この「かがみの孤城」を本当に必要としてる読者もたくさんいると思います。

辻村:嬉しいです。この本を読んでくれた人の中には「自分の気持ちにすごく寄り添ってくれる本だったので、
この本が大賞とったことで自分の気持ちを理解してくれてる人がこんなにいるんだって思いました」っていう風に言ってもらえたりして、それもすごく嬉しかったです!

茂木:この「かがみの孤城」というタイトルに込められた思いというのはなんでしょう?

辻村: 最初に私が考えていたのが、鏡を通り抜けて自分の家ではない、ちょっと不思議な世界に行って、そこに城があるっていう話なんですけど、始めは「かがみの城」っていうタイトルで考えてたんですね。
そうしたところ初代の担当者の方が、”孤城はどうでしょうか?”って言ってきてくださって。
聞いたことのない言葉だったので、孤城ってどういう意味なんですかって聞いたら、敵に囲まれて身動きが取れない状態である城って言われたんです。
「かがみの孤城」は、学校に行けなくなってしまった主人公が鏡の向こうにある城で自分と同じような境遇の子達と出会うっていう話なので、彼らがその城の中で見えない敵と戦っているようなイメージがあって、孤城っていう言葉がピッタリだなと思ったので「かがみの孤城」がそこで生まれていきました。

茂木:読み進めるうちに驚きがある作品なんですけど、これって最初から展開は考えられているんですか?

辻村:違いますね。ミステリ作家にあるまじきことかもしれないんですけど、最初から最後まで物語が見えているってことがないんですよね。

茂木:そうなんですか!

辻村:書いている家庭で閃くとか思いつくっていうよりも、気付くって感じがやってくる時があって、
今回の本で言うと、5月にこころたちの生活がスタートして、3月に終わる話なんですけど、
城にある秘密があって、その秘密の正体が私の中で分かったのが夏休みを過ぎて2学期に入るぐらいの時でしたね。
”みんながどうしてここに来たか分かりましたよ!”って担当者に電話をかけて伝えるということがありました(笑)。

茂木:これは、才能に恵まれた小説家の方がおっしゃってるので、よいこのみなさんは真似をしないでくださいね(笑)。





──ここではない世界を見せてくれる存在

茂木:「かがみの孤城」は、不登校という社会の中で色んな人が心配してることをテーマにされてるんですけど、心理描写が本当にリアルでした!これは取材とかされたんですか?

学校でスクールカウンセラーをやられてる先生にお話を少し伺ったりっていうことはあったんですけど、取材自体はほぼないです。
やっぱり、学校が毎日毎日楽しくて嫌な事が一つもない。っていう子は本当はいなくて、明日嫌な教科があるとか、友達とケンカしちゃったとか、先生に怒られたとか…。
一日一日どうにか頑張った積み重ねが365日になってる子の方が本当は多いんじゃないのかなと思ったんです。
なので、私自身も不登校の子達がすごく自分と遠い、特別な子たちだとは当時から思っていなかったですし、その子たちが学校で追い詰められて命を落としてしまうような現実があるんだとしたら、もう逃げてもいいという風に思うんですよね。
そうやって学校を休んでしまう事ってしばしば逃げることって言われるんですけど、私の中では”休む勇気を持った子”だと思うんです。
でも、そんな勇気を持った子たちが、学校に行っていたら出会えたかもしれない友達とか、
出来たかもしれない経験が奪われてしまった状態になるのはあまりにもったいないし、悔しい。という気持ちがあって、彼らは同士をどうにかして会わせることができないだろうか、と思ったんです。

茂木:なるほど!

辻村:どうしても中学生ぐらいの時の日常って、学校と家の往復ぐらいしか世界がないんです。
周りも敵だらけに見えている状態なのであれば、家の鏡を入り口にしてこっちから迎えに行くっていう気持ちで、鏡を入り口に仲間と出会ってほしいという導入になりました。

茂木:小説が人の魂を救うということがあるとするならば、「かがみの孤城」は多くのそういう人たちの心を癒してくれるんじゃないかな、って感じがします。

辻村:ありがとうございます!私自身が中学の時に居場所がないって感じた時とかに家の鏡は光らなかったんですけど、本がその代わりをしてくれた感じがあるんですよね。

茂木:鏡って実は本のメタファーでもあったんですね。

辻村:書き終えてからそうだったんじゃないか、と思いましたね。
自分の本棚の隅とか、かばんの底とかで色んな本が光って鏡の代わりになってくれて。ここだけじゃない色んな世界を見せてくれたり、他人になるっていう経験をさせてもらったのが本からだったなぁと思うんです。
よく自分の人生が辛い時に本を読むって言うと現実逃避みたいに言われちゃうんですけど、
現実逃避なんていう言葉じゃ追いつかないぐらい、本って自分の現実とどこかの現実を繋いでくれるものだと思うんですよね。
なので、この本が誰かの本棚でそんな存在になってくれたらすごく嬉しいなと思います。





かがみの孤城 辻村深月 | ポプラ社




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来週も引き続き、作家・辻村深月さんをお迎えします。
どうぞお楽しみに。
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