Dream Heart(ドリームハート)

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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.279 辻仁成さん

2018年08月04日

今週ゲストにお迎えしたのは、先週に引き続き
河出書房新社から小説「真夜中の子供」を刊行されました作家の辻仁成さんです。

辻仁成さんは、1959年 東京生まれ。
1979年にロックバンド「ECHOES」を結成されました。

1989年には小説『ピアニシモ』で第13回すばる文学賞を受賞、
1997年には『海峡の光』で第116回芥川賞を受賞されます。
1999年に『白仏』のフランス語訳にて、フランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞されました。

著書には『冷静と情熱のあいだ Blu』、『日付変更線 The Date Line』、『父 Mon Pere』、『エッグマン』など多数ございます。


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──幸せに気付くこと

茂木:パリで子育てをされているということですが、お子さんはおいくつになられたんですか?

辻:14歳です、僕より身長が大きくてバレーボール部のキャプテンで、来年高校生になります。

茂木:じゃあ、当然フランス語でも?

辻:生まれたのがフランスなので、彼はフランス語の方がネイティブです。

茂木:辻さんと言えばツイッターでつぶやかれることが共感を呼んでいて、お子さんに語りかけるような感じですよね。

辻:あれは子育てをしてるときに、家事やりながらやけっぱちになって、なんとなくツイッター書いて作ったご飯とかをアップしたら、フォロワーの方がいいねしてくれたので。
ちょっと嬉しくなって、キッチンの片隅で“まだ、こんな風に応援してくれる人がいるんだ”と思って、それからそういうツイートを沢山するようになったんですよね。

茂木:ミュージシャンの活動をしていて小説に移っていった感じって、どういう感じなんですか?

辻:これもまた誤解があるんですけど、僕は小さい頃から音楽も小説も、詩も映画もやろうとしていたんですよ。
ただ順番として、若いから音楽が先にスタートしたんですよ。

茂木:じゃあ、今やってることは子供の時からずっとやっているんですね。

辻:来年60歳なんですけど、小説も音楽も途切れることなくやっているんですよ。
東京帰ってくるたびに必ずライブもやっているし。

茂木:私も行かせていただきましたけど、本当に暑いファンダムですよね。

辻:人間さらけ出した方がいいので。

茂木:それが伝わるんだと思いますね。

辻:一番楽にやってるのがツイッターかもしれないですね。
でも、一番気にしてるのもツイッターかもしれないですね。“あ、ツイートしなきゃ”とか思っちゃうんですよね(笑)。

茂木:辻さんはパリにいる時も、我々、日本にいる人のことを気にしてくれて時間帯とかも合わせてくださっているような…。

辻:やめようと思っていたんですけど、2011年の震災の時から真剣にツイッターをやるようになったんですよ。“遠くにいると思うのは故郷のことだ”みたいな感じで。

茂木:日本時間に合わせて内容も考えてくださっていますよね。

辻:何もできないから、ツイートくらいしかできないなって当時思ってたし。そのツイートのおかげで、自分がシングルファーザーになった時にフォロワーの人たちから励まされたし。

茂木:うんうん。

辻:僕も人間ですから、キッチンで酔っ払う時もありますし、子供を育てるのに本当に大変な時が続いたし。
今度、高校受験ですから、彼が自分の人生を“こういう風にしたいんだ”と言われると、もうちょっと頑張らないと、とか思ったり。学費どうしよう?とか、いろいろ考えるわけですよ。
そのときにツイートって近いじゃない? 小説のお手紙読むより早く返ってきたり、コンサートで触れ合うのも素晴らしいいんですけど、ツイートは空気感が早いから、そのとき支えられた感じがあるので。何も返せないんですけど、せめて毎日ツイートは1つはしようということを考えて、震災のときから思い始めました。

茂木:辻さんがお弁当とか作っていたのをみてて、“ああ〜”と思っていました。

辻:今は「弁当作るな」と言われたので、でも、ご飯は朝昼晩作ってますよ(笑)。
そういうのって身の丈にあった生き方っていうか、一番自分自身が考えることは、息子がいい大人になってくれて、彼が普通に家庭を持ってくれて。
そこにたまに行って、幸せそうなものを分けてもらうみたいなことがあったら、僕が一番求めているのはそれかなって思うんですよ。人間って、幸せに気が付かないことっていうのが不幸なんですよ。

茂木:なるほど。

辻:“今、不幸なのかな?”って気付くと不幸なんですけど、不幸に気が付かないってことは幸せだったりするんですよ。
でも、後から“あのときって幸せなんだ”って気付くことがあるんですよ。そのことを後悔しないためにも、今を精一杯生きるというか、そういうことが僕は大事だと思うんですよ。

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──第2の祖国

茂木:辻さんのクリエイティブがますます加速してる感じがすごい嬉しくて。
この番組は夢がテーマなんですけど、辻さんは普通の人から見たらすべての夢を実現しちゃってるんですけど。

辻:そんなことないですよ。僕みたいに寂しそうな人間はいないでしょ。皆さんが時々かわいそうな目線オーラで近付いてきて「辻さんって、意外といい人なんですね」なんて言われるたびに“コノヤロー!”って思うんですけど(笑)。

茂木:僕は最初からいいイメージしかないですけどね。辻さんって怖いって思われてるんですか?

辻:変わった人とは思われてるかも。フランスに渡ったときに面白かったのは、自分が世界で一番変わってると思ったら、俺よりも変わってる人がいっぱいいたんですよ(笑)。
“俺は俺でいいんだ”とか思って。自分を否定するか、否定しないかっていうところで悩んでいたときに、最初フランスが大嫌いだったんですよ、でも、あの人たちがなんで自由なのかが分かってきて、“自分は自分のままでいいんだ!”ということを教わって。
“自分を好きになっていいんだ”ということを改めて教えてもらった感じで、第2の祖国みたいな感じになっちゃって、長期的にいそうな感じなんですけどね。

茂木:辻さんの夢はどういうものなのでしょうか?

辻:自分の夢自体が夢なんですよ。
“明日こそは!”と人間は誓うんですよ、昨日人間が“明日こそ頑張るぞ!”と思ったのが今日なんですよね。
過去に、“未来を絶対に頑張ってみせるぞ!“っていうのが現在なんですよ。

茂木:なるほど。

辻:僕自身は毎日言ってるんですけど、とにかく“今日を精一杯生きよう”っていうのが、自分の中での精一杯の夢なんですよ。
“10年後にこんなことをしてる”とか、10年先の自分なんか分からないんですから。
まず今日、息子が朝学校行くときに「いってくるね」「いってらっしゃい」僕は仕事をしたり家事をしてると、4時くらいにピンポンが鳴って、ドアを開けると立っているんですよ。
ニヤッと笑って、「どうだった?」って言うと「よかったよ」って言うんですよ。この瞬間に勝るものはない、これが僕の今日の夢なんですよ。

茂木:そうか〜。

辻:人間は未来って言ってるけど、実は未来なんてないんですよ。過去なんかないんですよ、過去なんかに振り回されて現在を潰してるのは無駄なことなので、そんなことのために生きる必要ないです。苦しいことも全部忘れてください。
未来は今日だから、今日一生懸命生きることが、いずれ未来を作るんですよ。過去に失敗したことも、全部今日が変えてくれるんです。でも、今日頑張らなければ、明日も過去も全部台無しになってしまうっていう話し、それが僕の夢かな。

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■プレゼントのお知らせ
先日、河出書房新社から刊行された、辻さんの最新小説「真夜中の子供」に、辻仁成さんの直筆サインを入れて3名さまにプレゼントいたします。

ご希望の方は、必要事項を明記の上、ドリームハートの番組ホームページメッセージフォームより、ご応募ください。

番組へのご意見など、メッセージを添えていただけると嬉しいです。

尚、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。



辻仁成 Official Web Site

辻仁成 (@TsujiHitonari) | Twitter

河出書房新社 公式サイト



真夜中の子供 / 辻仁成(Amazon)








6thアルバム「命の詩」 / 辻仁成(Amazon)








来週は、チームラボ代表の猪子寿之さんをお迎えします。
どうぞお楽しみに。