Dream Heart(ドリームハート)

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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.283 前田裕二さん

2018年09月01日

今週ゲストにお迎えしたのは、仮想ライブ空間「SHOWROOM(ショールーム) 」を運営する
SHOWROOM株式会社 代表取締役社長 前田裕二さんです。

前田さんは1987年、東京生まれ。
2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入社。
2011年からニューヨーク勤務を経て退職。

その後、2013年5月に、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)に中途入社し、
同年11月に仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げ、15年8月にSHOWROOM株式会社を設立。

現在は、SHOWROOM株式会社代表取締役社長として
SHOWROOM事業を率いていらっしゃいます。


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──お金を稼ぐということ

茂木:前田さんは経歴を見るとエリートの経歴に見えちゃうんですけど、ただ、すごい苦労されたんですよね?

前田:自分で振り返ると苦労っていうことはないんですけど(笑)。
8歳の時にお母さんが亡くなって親がいなくなったので。1年くらいなかなか家が見つからなくて。

茂木:1年間どうしていたんですか?

前田:いろいろなところを転々と渡り歩いて、家なき状態を頑張って生きていましたけど。

茂木:それでお金を稼がなくちゃというので弾き語りを始めたんですよね?
普通、小学生で弾き語りをやろうって発想は思い付かないと思うんですよね。

前田:その前に、まず最初にやろうと思ったのが働こうと思ったんです。
家の近くに駄菓子屋さんがあって、そこで「バイトさせてください」って言いに行ったのを覚えているんですよね。
そのとき小学校4年生ですかね。

茂木:何て言われました?

前田:当時一般的な時給が800円だったので、400円でいいから働かせてくださいと駄菓子屋のおばあちゃんに真剣に交渉したんですけど。
ハッとさせられたのは「お給料は売り上げから出てる」と言われたんですね。
うまい棒が1個10円だとすると、少なくとも40本以上売れないと君に1時間400円を払う原資がないでしょ?っていう。

茂木:その駄菓子屋のおばあさんは素敵な方ですね。

前田:湯水のようにお給料っていうものが湧き出てくるものじゃなくて、ちゃんと物が売れて、その中でお給料が払われるんだと、当たり前なんですけどハッとしたんですよ。

茂木:それを小学生で学んだんだ。

前田:それで、もっとしっかりした単価が継続的に売れているところに行こうと思って家電量販店に行ったんです。

茂木:どうでした?

前田:やっぱり働かせてくれなくて、僕が店頭に立ってレジをやっていたら、小学生がそんなことやっていたら労働基準法に反しますし。
裏側のゴミ出しとか……。

茂木:そこまで考えて行ったの!?(笑)

前田:時給200円でもいいんで、と言ったんですけどダメで、そしてグレちゃったんですね。
親がいないとか、家でご飯食べさせてもらえないとか、先天的な環境要因を後天的な努力で乗り越えようとしてるのに、それを認めない社会っていうのがおかしいなと思って。

茂木:それが、前田さんの人生のパッションになっているじゃないですか?
後天的に努力すると報われる世の中にしたい、それがいま「SHOWROOM(ショールーム) 」につながっているわけですもんね。

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──熱量とハングリー精神

茂木:エンタメ業界の話として、「SHOWROOM(ショールーム) 」以前は、努力しても上に行けないっていう構造があったと感じたんですね?

前田:さらに言うと、正しい努力の仕方がわからない人がほとんどだったと思うんですね。
夢があったとしても、その熱量を正しく、いま行うべき努力に正しく転換できている人がなかなかいないなと思って。

茂木:はい。

前田:例えば、どうやったらファンが増えるのかとか、ついたファンがどうやったら離れないのかとか、コミュニティはどうやったら盛り上がるのかとか、自分自身のマーケティングについての知見がある演者、クリエーターってあまり多くないと思うんですね。

茂木:個人の努力というよりもシステムの方だということで、「SHOWROOM(ショールーム) 」というプラットホームを立ち上げたということなんですけど。
DeNAに入るっていうのと、自分で起業する2つの道があったと思うんですけど、DeNAに入った決め手はなんだったんですか?

前田:もともとDeNAの中で立ち上げようとはあまり思っていなかったんですけど。
DeNAに入って事業を作るということを、自分自身に染み込ませようと修行しようと思って入ったので。

茂木:はい。

前田:最初にサービスを一個立ち上げたんですけど全然上手くいかなくて、悔しくて(笑)。
南場智子という、DeNAの創業者がいるんですけど。

茂木:カリスマ的な方ですね。

前田:南場に全然ダメじゃんと思われるのも悔しいなと思ったので、自分の中で100個くらい事業アイデアがあったんですけど、そのうちの一番自分が自信のある、人生を賭けてやりたいと思うビジネスモデルをやってみようと思って。
上手くいったらそれを分社化して、独立させて、自分の独自のビジョンをそこで作っていくということも、ある種両立できるかなと思って。社内企業を外に出すという選択肢もあると思って立ち上げたのが「SHOWROOM(ショールーム) 」ですね。

茂木:前田さんの著書「人生の勝算」を、ぜひ読んでいただきたいんですけど。
外資系投資銀行の時も、ニューヨーク勤務された時も、前田さんの努力の熱量がすごいと思うんですけど、この「SHOWROOM(ショールーム) 」を立ち上げた後もすごかったんですよね。

前田:そうですね、最初はまったく見向きもされなかったので(笑)。

茂木:どんな風に営業されたんですか?

前田:シンプルに、最初だと全国のアイドルグループをコンテンツとして巻き込んでいこうとしていたので。
アイドルを抱えてらっしゃるような、全国の芸能事務所をリストアップして電話したり。あとは、ライブの現場に行って営業したりとか特に奇抜なことはしてなくて。

茂木:地道ですよね。

前田:地道に電話したり、現場で営業したりっていうのをものすごい物量をこなしたんですよね。

茂木:世間の人は前田さんのように若手起業家で成功している人を見ると、最初からすごいエリートなんだって思うけど本当にすごい努力をされていますよね。

前田:本当に僕は才能がないんですよ、自分で感じるんです。
生まれ持ったものが、そんなに自分の中で無いというある種コンプレックスでもあるんですよね。

茂木:前田さんの独特な表現で、毛穴を広げる?
秋元康さんに会って全部吸収する時に……。

前田:毛穴むき出しで吸収するっていう(笑)。

茂木:いろんな人に出会ってそこから学ぶ力もすごいなと思うんですけどね。

前田:それが、生まれてからその力がいきなりあったわけではなくて。例えば、塾に通えた子が横にいて僕は絶対に塾になんか行けなかったので。
その差分にすごいコンプレックスを持っていたんですけど。

茂木:それで早稲田の政経に行ってるわけですからね、すごいですよね。

前田:そんな子達が、日常目にする現象からは吸収しないことすら吸収していけば、ある種お金とか才能とか、先天的に恵まれた人たちに後天的に勝っていけるのかなっていう、そんなモチベーションなんですよね。
だから、何でもないところからも学びを吸収しているみたいな、そういうハングリー精神みたいなものは昔からあったかもしれませんね。

茂木:秋元康さんが、前田裕二さんを「あいつは天才だ」と高く評価していると聞いていたんですけど。
その秋元さんに、自分のビジネスをわかってもらうためには何回かアプローチされたんですよね。

前田:3回目にようやく話を聞いていただいて。

茂木:最初から「君は天才だ」と分かってくれたんじゃなくて、1回、2回、3回!

前田:ドアが開くまで待ち続けるっていう、あるいは、なんとか開けようと頑張るっていうのは心情なので。

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「SHOWROOM(ショールーム) 」公式ホームページ


「前田 裕二 / Yuji Maeda (@UGMD) | Twitter 」


人生の勝算 / 前田 裕二


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来週は、映画「寝ても覚めても」の監督 濱口竜介監督をお迎えします。
どうぞお楽しみに。