Dream Heart(ドリームハート)

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REPORT 最新のオンエアレポート

Dream HEART vol.306 作家 吉本ばななさん

2019年02月09日

今週ゲストにお迎えしたのは、先週に引き続き
角川書店から刊行されている『「違うこと」をしないこと』がベストセラーになっている、作家の吉本ばななさんです。

吉本さんは、1964年、東京都生まれ。
日本大学 芸術学部 文芸学科をご卒業後、
海燕新人文学賞を「キッチン」で受賞し、作家デビュー。
また、「キッチン」は、『うたかた/サンクチュアリ』とともに、
芸術選奨文部大臣賞新人賞を受賞されます。

そのほか、『ムーンライト・シャドウ』で泉鏡花文学賞を受賞を、
『TUGUMI』で山本周五郎賞を受賞、『アムリタ』で紫式部文学賞を受賞、
『不倫と南米』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。

諸作品は海外30数ヵ国以上で翻訳出版されており、
国内外問わず多くのファンを魅了していらっしゃいます。

現在は、noteにて配信中のメルマガ、「どくだみちゃんとふしばな」をまとめた
単行本を発売するなど、ご活躍中でいらっしゃいます。

そんな吉本ばななさんに、お話を伺いました。


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──「吉本ばなな」という新しいジャンル

茂木:ばななさんがデビューされて、「キッチン」の頃は本当に大変だったじゃないですか? あの頃を振り返るとどうでしたか?

吉本:忙しすぎて覚えてないんですよね、とにかく忙しかったんですよね。

茂木:時代はバブルで社会現象でしたもんね。

吉本:そうですよね。自分はそういう自覚がなくって、一番部数がが出てた時に、まだワンルームで暮らしていて。
晩御飯は実家に食べに帰っていたんですよ。それでさらに小説書いた後、1人で白山の松屋に行くっていう(笑)。そういう暮らしをしていたので、しかもスーツ着てるから3着ぐらいでいいじゃないですか? 全然実感がなかったですね。

茂木:自分が渦中の人になってることについて?

吉本:はい。

茂木:その忙しさっていうのは、マスコミの取材とかですか?

吉本:電話が鳴りっぱなしで、メールとかなかったので、まだ携帯電話でもギリギリじゃないですか?

茂木:でも執筆もしなくちゃいけないし、大変じゃないですか。
売れっ子のアイドルみたいな雰囲気ですね。

吉本:「事務所に入りなさいよ」みたいな感じだったんです。

茂木:大ブームをもたらしたわけなんですけども、「キッチン」は映画化もされましたよね?

吉本:そうですね。

茂木:今振り返ると、セクシャリティの問題なんかも扱っているという意味においては、かなり先端的なテーマですよね。
ああいうジェンダーを超えた設定っていうのは、どこらへんから?

吉本:わりと回りにいたので、「子供を育ててる時は、あんまり男装はしない」みたいな話とかあったんですよ。
“あるんだ!”と思って。

茂木:お友達で?

吉本:お友達とか、友達の友達とか。

茂木:そういうコミュニティの中にいらしたんですか?

吉本:そういうコミュニティもありましたね。素直に有りだなと思ったのと、あと女同士にしたら男の人がいらなくなっちゃったんですよ、その話の中に。
要するにお母さんがオカマ的な人で、私という主人公がいて、この2人が同性だったら2人でキャッキャってなって、もう1人の主人公の彼氏みたいな人がいなくなっちゃったんですよね、書いてるうちに。“これはまずいな”と思って、ジェンダーを変えたという。

茂木:なるほどね、あそこまで売れるって思ってらっしゃいました?

吉本:思ってなかったですね。

茂木:何であんな売れちゃったんですかね?

吉本:やっぱり新しかったんじゃないですかね。
設定とか文体とか、ものすごい怒られましたもん。

茂木:誰に怒られたんですか?

吉本:「文法的にあってない!」とか、受賞の時に怒られて(笑)。
“受賞って祝う会じゃないの? なんで私はずっと謝ってんの?”っていう感じでしたよ。

茂木:その審査の方たちは、吉本隆明の娘だって分かっていたんですかね?

吉本:審査した時は分かってなかったって皆さん言ってましたね。

茂木:受賞が決まった後だったんですね、そこも含めてちょっと大騒ぎになっちゃったんですよね。

吉本:きっとそうですね。その日、私、普通にバイトに行ってたんですよ。まだ携帯とかない時代で連絡がとれなくて。

茂木:何のバイトしてたんですか?

吉本:糸井重里さんの経営してた喫茶店でウェイトレスをしてたんですよ。
それだったら、バイト先に電話してくればいいのにって思ったんですけど。帰りに飲みに行って、ベロベロになって家に帰ったら「賞をとったらしいよ」って言われたんですよ。

茂木:その後も、本当にきら星のごとくさまざまな賞をとって。
「TUGUMI」がベストセラー1位だったんですね、「キッチン」が2位ということで、ワンツーフィニッシュだったわけですけども。

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吉本:ええ。

茂木:「TUGUMI」なんかもそうですけど、意識と無意識、生と死の間を揺れ動くようなそういうテーマに関心があったんですかね。

吉本:そうですね。この頃は特に、今まで考えてきたことをコツコツと全部出すっていう事に懸けていたので。自分の中で新しいことをやってる感覚はあまりなかったかもしれないです。

茂木:そうなんですか?

吉本:だから、溜めに溜めたものを出してたっていうイメージがあります。

茂木:それはどれくらい書き溜めていたんですか?

吉本:書き溜めてはいないんですよ、考え方を溜めていたというか。

茂木:それは子供の頃からずっと?

吉本:そうですそうです。

茂木:それが圧倒的な新しさということで、世間に迎えられたっていうことですよね。僕は鮮明に覚えているんですけど、ばななさんの小説はエンターテイメントではないし、狭い意味での純文学でもないし、「吉本ばなな」っていう新しいジャンルですよね。
そこが熱狂的に支持されて、一方でアンチみたいな人もいて。

吉本:そうですよ! ボロクソに言われましたよ。飲み屋で怒られたりとか。

茂木:え!? 飲み屋で?

吉本:急に隣の人に怒られたりとか「あなたのことが嫌いなのよ!」とか言って(笑)。

茂木:やっぱり新しいものだから。

吉本:拒否反応がすごかったですね(笑)。

茂木:海外で圧倒的に読まれてるっていう意味においては、村上春樹さんにちょっと似てるし比べられると思うんですけど。
村上春樹さんは、どんなイメージですか?

吉本:あの方は本当に文学者ですよ、あらゆる角度から書くために生きているっていうか。
会ったことは一回だけあります。

茂木:どんなお話をされたんですか?

吉本:他愛ない話が多いですね。

茂木:村上さんも日本の文壇の中では色々言われてね。

吉本:いや、無理もないと思いますよ。

茂木:どちらかと言うと、海外での評価が先に定まって逆輸入されたじゃないですか? どうなんですかね、新しい文学ってなかなか需要されるまで時間がかかるんですかね?

吉本:それもそうですね。日本の文壇というのか、土壌が本当に変わり目だったと思います。
なので、春樹さんが道を作ってくださらなかったら、私はもうこの世にいられない感じだったと思うので本当に感謝してます。

茂木:村上春樹さんが切り開いた道を、ばななさんが耕してきてるっていう。

吉本:そうですね、「本当に感謝してます!」って、ハグをしようとしたら一瞬“ビクッ!”となったのをよく覚えてます(笑)。

茂木:本当に!?(笑)

吉本:ぎゅうぎゅう抱きつきました(笑)。

茂木:村上春樹先生は、新体制の人じゃないんですかね(笑)。

吉本:私がグイグイいってて、怖かったんだと思います(笑)。

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今夜のお客様、吉本ばななさんのベストセラー本、
『「違うこと」をしないこと』に、吉本ばななさんのサインを入れて、3名さまにプレゼントいたします。

ご希望の方は、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。

尚、当選者の発表は、
商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。

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今週から、番組特製のエコバッグができました!

それを記念して、今週は10名の方に、プレゼントします。
色は、紺色と茶色の2種類あります。どれが来るかは届いてからのお楽しみ!

ご希望の方は、同じく、メッセージフォームより、ご応募ください。
こちらも、お待ちしています!



吉本ばななオフィシャルブログ

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●「違うこと」をしないこと / 吉本ばなな

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次回のゲストは、東京バレエ団の芸術監督・斎藤友佳理さんです。
お楽しみに!