Dream Heart(ドリームハート)

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Dream HEART vol.547 「アーツカウンシルしずおか」チーフプログラム・ディレクターの櫛野展正さん 著書「超老芸術」

2023年09月23日

櫛野展正さんは、1976年、広島県のお生まれです。

2000年より知的障害者の福祉施設職員として働きながら、
広島県福山市鞆の浦にある「鞆の津ミュージアム」でキュレーターを担当されます。

その後、2016年に、アウトサイダー・アート専門スペース「クシノテラス」開設のため独立。
未だ評価の定まっていない表現者を探し求め、取材を続けていらっしゃいます。

2021年からは、「アーツカウンシルしずおか」のチーフプログラム・ディレクターに就任。
総務省主催「令和3年度ふるさとづくり大賞」にて、
総務大臣賞を受賞されていらっしゃいます。


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──作品よりもその人を見てほしい

茂木:櫛野展正さんは、日本のアウトサイダー・アートの第一人者としてご活躍中です。このアウトサイダー・アートを、改めてリスナーの方にご説明して頂いてよろしいでしょうか?

櫛野:はい。アウトサイダー・アートというのは、一般的には美術教育を受けていない、専門的な教育を受けていない人が、独学で作る芸術と言われています。通常は障害のある方がピックアップされるんですけども、そうじゃない、例えば高齢者の方とか、受刑者の方とか、そういう表現もアウトサイダー・アートとして知られています。

茂木:今回のこのご著書『超老芸術』ということなんですけども。25名の個性的な超老芸術家の作品とインタビューを、オールカラーで纏めていまして、各作家の生まれた年代ごとに、10年刻みで4部構成となっているんですよね。
これは、元々はNHKの番組がきっかけになってるんですか?

櫛野:そうです。本を作るきっかけはNHKの番組なんですけども、元を辿れば「アーツカウンシルしずおか」で取材を始めたことがきっかけですね。

茂木:ぜひ皆さんにこの本を手に取って頂きたいんですけども、『超老芸術』ということで、本当にシニアの方の作品が出ていて…。例えば、お城を作っちゃってる人がいますね(笑)。

櫛野:はい。

茂木:このお城を作っちゃってる方…磯野健一さんは城主になっていますが、この方はどういう方なんですか?

櫛野:この方は、大阪河内小阪というとこにある小阪城という城を作っていまして、散髪屋さんなんですよ。

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茂木:いわゆる床屋さんですよね?

櫛野:はい。散髪屋さんの屋上に、5層の天守閣を築いたという方です。
最初は3層の天守閣を、自分でセルフビルドで作ったんですけども、3層だと遠くから見てもあんまり目立たなかったということで(笑)。大阪人なので、お金をかけず、いかに安く、目立つものを作るか、というのがありまして。その天守閣の総工費は5万円なんです。でも目立たなかったので、車のジャッキでジャッキアップして、5層に付け足した、と。多分ジャッキも、そんなことに使われるとは思ってないというか(笑)。

茂木:(笑)。しかもこの方は、大阪を襲った台風でお城が飛ばされちゃったのを再建したんですよね。

櫛野:そうですね。城が飛ばされて、他の家のビルの踊り場にスポッと落ちた、ということがあって(笑)。それで、一念発起して再建しましたね。

茂木:普通に世の中から見ると、ちょっと奇人変人みたいな捉え方をされると思うんですけど、実際に会うとどういう方たちなんですか?

櫛野:会うと、作品を通じて、自分の人生を語って頂けるんですよ。それがすごい特徴かなと思っています。
多分、普通に話しかけても、もしかしたら語ってくださらないんですけども、基本的に僕は、すごいなとか、尊敬するなと思って取材に行ってるので、お話を聞いてるうちに、だんだんとその人の生まれた時はどうだったとか、これまでどういう人生で、何がきっかけでこういうのを作り始めたのかみたいな、転機とかそういうのをどんどん語ってくれるんです。なので、ただの作品じゃなくて、そこにライフストーリーオブジェクトみたいなものを感じます。

茂木:櫛野さんは元々、福祉施設の関連の美術館でキャリアを始められたわけなんですけど、その当事者と言うか、作家の方にとっては、こういう表現することというのはどういう意味があると思われますか?

櫛野:実は僕、今大学院に行っていて、大学院で自分で『超老芸術』の論文を書いて勉強してるんですけども。その本にも書いているんですが、レジリエンスと言うか、“アートを通じてもう一度自分を回復させて、第二の人生を歩む”というのは、すごく意味があるなと思っていますね。

茂木:表現をすることが、その方自身にとって生きる力になるということですか。

櫛野:そうですね。ほとんどの方が、例えば震災に遭ったりとか、家族と離別したり、戦争経験があったりとか、高齢者の方は色んな人生経験をされていて、しかも逃れられない宿命のような出来事に出会っている方が多いんですけども。そうした中でアートをすることで、もう一度自分の人生をやり直したりとか、第二の人生を謳歌するきっかけになっている方が多いかなと思っています。

茂木:このラジオを聴いていらっしゃるリスナーの方でも、自分もアート表現をしてみようかな、と思う方もいらっしゃると思うんですけども、この『超老芸術』で取り上げられているような、ある意味ではちょっとキャラが立ったと言うか、ちょっと突き抜けている方々が、そもそもこういうことをしようと思うきっかけには、どういうケースがあるんですか?

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櫛野:先ほどの、“震災に遭って、もう自分の身の回りのものが全部なくなってしまう”とか。または、もう少し軽いレベルで言うと、“友達から勧められて何か始める”というパターンもありますし、本当に人それぞれなんですよ。
ただ僕が言いたいのは、「アーツカウンシルしずおか」でもそれを勧めているんですけど…。結局、高齢者の人というと、やっぱり一方的にアートを受動する側だった人が多いんですよね。例えば、何か芸術を鑑賞するとか、音楽鑑賞するとか。そうじゃなくて、高齢者の人もどんどんそういうアートのところに参画して、アートを発信する側になれるんじゃないかな、というのが1つの提案ですね。

茂木:リスナーの皆さん、『日曜美術館』を観ているのもいいんですけど、やっぱりその先に、表現をしてほしいな、ということだと思います。
そしてキュレーターとしては、こういう作家さんのどういう作品を取り上げるかというのが、すごく重要なポイントになると思うんですけど、キュレーターとしての櫛野さんは、どういう想いでこの仕事をされていらっしゃいますか?

櫛野:「新しい美術表現を世に問いたい」というのももちろんそうですけども、僕はやっぱり「その作品よりもその人を見てほしい」という想いがありますね。

茂木:なるほど。
お知らせがあります。「アーツカウンシルしずおか」にて、来月10月3日から10月8日の6日間、全国各地で、人知れず創作を続ける高齢の方の芸術表現を一堂に集めた『超老芸術』の展覧会が実施されます。櫛野さんの今回の『超老芸術』という本で紹介されてる方も…?

櫛野:はい、その本で紹介されてる方もそうですし、そこでは紹介しきれなかった方もそうなんですけども、全国22組、約1500点を超える作品が一堂に集った展覧会です。

茂木:そして、展覧会に物理的に行けない方は、メタバース上での展覧会空間も準備中、と。これはどういうものになりそうですか?

櫛野:撮影をして頂いて、メタバース上で、ギャラリートークとかそういったこともできたらいいかなと考えています。

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櫛野展正 (@kushinon)さん 公式アカウント / X(旧Twitter)


★静岡県にある「アーツカウンシルしずおか」にて、
 来月10月3日〜10月8日の6日間、
 全国各地で人知れず創作を続ける高齢の芸術表現を一堂に集めた、
 『超老芸術』の展覧会が実施されます。

 全国各地から集めた22組の超老芸術家による
 1,500点を超える作品を一挙公開。

 詳しくは、「アーツカウンシルしずおか」公式サイトをご覧下さい!

「アーツカウンシルしずおか」公式サイト


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