Dream Heart(ドリームハート)

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Dream HEART vol.552 アニメーター・アニメーション監督・西見祥示郎さん アニメ映画「火の鳥 エデンの花」

2023年10月28日

西見祥示郎さんは、1965年、福岡県のお生まれです。

1986年、テレコム・アニメーションフィルムを経て、2003年よりフリーに転身。

第31回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞に輝いた、
松本大洋原作の『鉄コン筋クリート』では、
キャラクターデザイン・総作画監督・絵コンテ(共同)などを兼任。

また、日仏合作長編『ムタフカズ(MUTAFUKAZ)』では、
監督(原作者ギョーム・“RUN”・ルナールと共同)と絵コンテを務められ、
“アニメ界のアカデミー賞”と呼ばれる、2019年のアニー賞、
長編インディペンデントアニメ部門にノミネートされました。

卓抜したビジュアルセンスと、キャラクターを活き活きと描く躍動的演出力を兼ね備えた、
稀代のクリエイターとして、ご活躍されていらっしゃいます。


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──西見監督の原体験

茂木:来週11月3日から全国で公開されます、『火の鳥 エデンの花』なんですけれども、改めまして、どういう作品かと言いますと…。地球から遠く離れた辺境の惑星、「エデン17」に降り立った主人公・ロミが、1300年の時空を超え、数奇な運命をたどる、壮大な愛と冒険の物語となっています。
キャラクターデザインと言えば監督は非常に定評があるんですけど…。手塚治虫さんの原作と今回のアニメのキャラクターというのは、やっぱり監督なりの工夫があると思うんですが、その辺りはいかがでしたか?

西見:最初は「好きにやっていい」と言われたんですよ(笑)。「じゃあちょっと好きにやっちゃおう」と思って、最初は本当に違うアプローチでやっていたんです。外国のアニメ作品とかがちょっと好きで、そっち寄せにキャラクターを作っていたんですけど、いろいろ意見が出て、作画監督をやった西田達三さんの絵に近くはなってると思うんですけどね。

茂木:アニメというのは、絵の個性と言うか、我々視聴者にはすごく何かが強く伝わってくると思うんですけど、その辺りのキャラクターデザインの試行錯誤はかなりありますよね。

西見:僕、最初は結構工夫してやってたんですよ。ジョージというキャラクターは、原作では、逃亡者ロミを連れてインチキの詐欺師みたいな人にロケットに乗っけられて、連れて行かれて…というシチュエーションがあると思うんですけど、そういうバックグラウンドがあるんです。その雰囲気はちょっと残そうと思って、「ジョージというキャラクターは、かなりストレスで、この辺(頭部)は寂しくなってると思う」と思ったので、ここちょっと薄くさせてみました。

茂木:円形脱毛症みたいな。

西見:ええ。でもそれはやっぱりプロデューサーからNGが出て、今の形になりました。

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茂木:今回、完成まで7年掛かったということなんですけれども、改めて『火の鳥』と向き合われて、“手塚治虫の凄さ”というのはどういうところだなと思われましたか。

西見:当時描いていたのは、『火の鳥』だけじゃないんですもんね。作品を週8本ぐらい抱えていたんですよね。「人間って、そんなに絵を描けるのか」と思っちゃいます。

茂木:そうか、確かにね! どういうことなんですかね?

西見:だって、全部ストーリー違うんですもんね。それをこなしていたというのがもう…。

茂木:そうですか。同じ絵描きとして、手塚治虫の凄さということを改めて感じる、と。

西見:あれだけストーリーが頭にあるというのは、もう本当に凄いですね。それを同時に終わらせていくという。

茂木:同時進行で連載していたんですもんね…!

西見:凄いなとは思っちゃいますよね。

茂木:西見監督は、そもそもアニメをやろうと思われた原体験というのは、子供の時のどういう作品だったんですか。

西見:純粋にアニメも好きだったけど、どっちかと言うと「漫画家になりたいな」とどこかで思ってるところがあったんですよ。

茂木:そうですか。漫画家としては、どういう方がお好きだったんですか。

西見:当時は、永井豪さんと、それと、ガロ系とか、ああいうのが好きですね。

茂木:そういう意味においては、今回の『火の鳥 エデンの花』の映画には、そういうところが生かされてる気がするんですけども。

西見:やっぱり、観ている人が行ってみたくなるような空間が作れたらいいな、といつも思って、書いてはいるんですけどね。

茂木:何かすごく不思議で、心惹かれる世界を描いていて。監督のクリエイティビティとしては、そういうところがあるんですね。

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西見:自分の思ったことが画面出てればいいな、とは思ってるんですけどね。

茂木:アニメ監督の作家性というのは、色んな作品などにも影響を受けてこられると思うんですけども。アニメーションの作品としては、どういうものがお好きでこられたんですか。

西見:僕の世代なら、もう誰でも口にするだろうと思うんですけどね。『宇宙戦艦ヤマト』とか、『999(スリーナイン)』とか、当時の宮崎駿さんの『未来少年コナン』とか。あの辺のラインは好きでした。

茂木:そういう経験があって、今回の、手塚治虫『火の鳥 エデンの花』に結実したんですけれども。実は原作は、色々表現に苦慮するような…手塚治虫さんなので、「人間のこういうところまで描いていいのか?」みたいなことがあると思うんですけど、それをこういう形で商業映画にするというのは、やっぱりかなり大変だったんじゃないですか。

西見:いやもう、本当に、「どうすんだよ、これ?」とずっと思っていました。

茂木:(笑)。でも、結果として、本当に素晴らしい映画になりましたね。僕は今のお話を伺って「ああ」と思ったんですけれども、やっぱりフランスのような作品も好きで、ガロ系のものも好きで、そういうちょっと詩的な、ポエティックな感じが、今回の『火の鳥 エデンの花』には見事に出ているなと思いました。

西見:ありがとうございます。色々我慢した部分とか、ある程度乗り越えられなかった部分も多々あるんですけどね。

茂木:でもそういうことを含めて、監督はもうたくさん観過ぎていると思うんですけど、僕は初見で観てすごく感動したので、たくさんの方に観て頂きたいですね。

西見:本当に。やっぱり、ちょっとした楽しみでもあるんですよ。せっかく作ったので、観て喜んでもらいたいじゃないですか。それが見られるのが楽しみなんですけどね。皆が喜んでくれるわけはないと思うんですけど、やっぱり悪口は破壊力が凄いですもんね(笑)。傷ついちゃうんですよね。

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茂木:そうですよね(笑)。皆さん、『火の鳥 エデンの花』を観たら、いいことをたくさん書いてくださいね!

西見:(笑)。

──西見祥示郎さんの夢・挑戦

茂木:ということで、この番組のテーマは『夢と挑戦』なんですけれども、今後の西見監督の『夢・挑戦』は何でしょうか?

西見:ありがちなんですけれども、「“思い出”のようなものが画面に出ればいいな」と思って、作っているものがあるんですよ。僕は北九州出身なんですけど、生まれた場所なんか、やっぱり景色がどんどん変わっていくんですけどね。生まれた時に居た角打ちのお店とか、ああいう雰囲気がどこか頭の中で残っているので、そういうものが画面に出せればいいなと思っています。

茂木:それは観たいですね。かつて日本のどこかにあった、街の風景みたいなのを…。

西見:外国を舞台にしたようなアニメしか作っていないので、日本に帰ってきたいなという気持ちがちょっとあるんですよ(笑)。

茂木:ぜひ、日本に帰ってきた、西見監督の心の中にある風景を観たいですね。

西見:それが、僕の中で密かに思っているドリームですかね。

茂木:ありがとうございます。
監督、最後に、『火の鳥 エデンの花』を楽しみにされている方々はたくさんいらっしゃると思うんですけれども、一言、お願いできますでしょうか?

西見:『火の鳥 エデンの花』、よろしくお願いします!

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『火の鳥 エデンの花』
11月3日(祝・金)新宿バルト9他 全国ロードショー
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ

(c)Beyond C.


映画『火の鳥エデンの花』 公式サイト


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