2024年04月13日
鈴木おさむさんは、1972年、千葉県のお生まれ。
19歳で、放送作家としてデビュー。
バラエティーを中心に数々の人気番組の構成を担当。
そのほか、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、
ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など、
多岐にわたり、ご活躍されていらっしゃいます。
そして、今年の3月末で、放送作家と脚本家を引退すると発表、
話題を集めました。

──男性アイドルの変化
茂木:今回、鈴木さんが文藝春秋から出された『もう明日が待っている』。これは言うまでもなく“小説SMAP”なんですけど、鈴木さん、振り返ると、すごいグループだったじゃないですか。
鈴木:やっぱり思い返すと、すごいグループでしたよね。
茂木:バケモノ番組になった『SMAP×SMAP』の、正にそのど真ん中にいたわけですが、振り返るとあの番組は何だったんでしょうか。
鈴木:戦後、テレビがすごく力を持っていくじゃないですか。その中で、特に80年代から、“お笑い”というバラエティーがすごく増えていくんです。多分これは間違いないと思うんですけど、夜9時台でバラエティーをやるというのが、なかなか許されなかったんですよね。8時台だったら『全員集合』とかがあったんですよ。要は、70年代とかは、夜9時台には歌番組のようにお笑いにスポンサーがつかなかったと言うか。
茂木:そういう雰囲気だったんですね。
鈴木:そういう雰囲気だったんです。お笑い番組に対して「お笑いなんて」と言われていたのが、70年代に、萩本欽一さん、ドリフターズ、そしてひょうきん族とかがあって、たけしさん、さんまさん、タモリさんたちによって、だんだんお笑いが日本のメインストリームになってくる。それが80年代になって、そこで旧ジャニーズと言われるアイドルの人たちもいるんですけど、とは言っても、「アイドル」というキャーキャー言われる花であったと言うか。
茂木:光GENJIまでは、そういう感じだったんですかね。
鈴木:そうですね。本当にファッションに近くて。だから、数年経ったら変わっていくもの。それが、アイドルだったんです。

茂木:その光GENJIのバックで踊っていたSMAPのメンバーが…あれは月曜の夜10時ですよね?
鈴木:月曜の夜10時で『SMAP×SMAP』が始まったんですけど、でも、それまで男性アイドルがメインの番組がなかったんです。だけど、世の中がちょっと変わってきていて。スキーからスノーボードになったり、ディスコがクラブになったのは90年代なんです。だから、あらゆるもののファッション性と言うか、かっこよさが変わった時代だったんですね。
茂木:かっこよさの基準が変わった、と。
鈴木:はい。例えば、ディスコだったらスーツを着てキラキラしている人が踊っていたのが、クラブは私服で行って、「踊る」んじゃなくて「音に乗る」というものだったりとか。よりファッションが大事で、世の中がキラキラよりもかっこよさを求める時代になったんですね。だから僕がこの仕事を始めた時には、「アイドルなんかだせぇよ」と言われている時代でした。
茂木:鈴木おさむさんは、テレビにおいて正にブルーオーシャンですね。新しいことをやってきたということですよね。
鈴木:でも、彼らのチームが優秀だったのは、今までのアイドルサウンドからクラブサウンドみたいにしたりとか、ドラマの出方もアイドルじゃない出方になったりとか。僕はそんな中で出会って、月曜夜10時で番組をやることになった時には、アイドルというものは今までは中高生で好きになって卒業するものだったんですけど、多分彼らは20代の女性が好きだと言っても恥ずかしくないアイドルになったんですよ。
茂木:アイドルのあり方が変わったということですよね。
鈴木:変わったんです。例えば、anan(アンアン)の表紙みたいなものも、本来はアイドルがやるべきじゃないものだったのにやったりと、だから全てのアイドルとの掛け算が新鮮だった時代ですよね。
──SMAPの男らしさ
茂木:小説SMAP、あのアイドルグループの人気の秘密は何だったと思いますか?

鈴木:時代のハマりというものがあるじゃないですか。「この時代にこの人が必要」という。90年代のバブルが終わった日本の中で、それでもまだあの頃はキラキラしていたと思うんですけど、新しいアイドル像というものを待っていた。それに、スクラップアンドビルドで言うと、「アイドルなんかだせぇよ」と言っていた人に「アイドル好きでいいじゃん」と、全員に言わせたという。男性までもファッションを真似する、というのが、彼らがやってきた全てのスタイル、ファッション的なところだと思うんですけど。僕は、それが彼らがやってきた新しいスター、ヒーローだと思うんです。
だから、僕は今の時代と似ていると思っていて。全てが1回壊れたじゃないですか。今、何か新しいものが生まれてくるし、求められていると思いませんか?
茂木:あります。僕、この『もう明日が待っている』を読んで、前半の読みどころの1つだと思ったのが、木村拓哉さんの結婚。そしてコンサートでの発表の仕方。この辺りを、鈴木さんをはじめ、スタッフの方が色々とすごく深いことまで考えているんですよね。
鈴木:でも本当は、ラジオの収録をさいたまスーパーアリーナの楽屋で録って、そこから「遅くなっちゃったから今日は泊まろう」ということになって、夜12時を過ぎたので泊まったんですよ。そうしたら、朝、急に新聞に抜かれて、それでマネージャーさんに呼ばれて、本当は1週間後だったのに「今日発表するから」となったんです。僕はその時にマネージャーさんが言った理由がすごいなと思うんですけど、「男らしくない」と言ったんですね。
茂木:それが価値だということですよね。
鈴木:「男らしいかどうか」なんです。アイドルとしてどうか、タレントとしてどうか、人間としてどうかというよりも、もっとシンプルに「男らしいかどうか」とは、僕はそこがSMAPというグループの根本だと思うんです。
茂木:根っこにあるもの。
鈴木:僕も「人として」だったらまだ分かるんですよ。でも「男らしいかどうか」だから、全国の女性が惚れたんじゃないかなと思うんです(笑)。
茂木:今回の『もう明日が待っている』でも色々あったんですけど、僕のこの小説の読後感は「幸福」という感じなんですよ。あの時代は幸せだったな、と言うか。それは稀有なことですよ。この時代に芸能事務所とかアイドルとか色々ありながら、「あ、SMAPがいた時代って良かったな」と、『もう明日が待っている』を読んだら思えるんですよ。
鈴木:でもそれは、彼ら5人が前を進んで歩いているからだと思いますね。
茂木:更にその先も。
鈴木:はい。だからこのタイトルにしたんです。彼ら5人はすごく頑張っているじゃないですか。例えば、草彅剛だって、あの状況の中で自分でアカデミー賞を獲ることは奇跡じゃないですか。
茂木:『ミッドナイトスワン』で。
鈴木:はい。本当にあの状況で、あの映画の規模で、あれでアカデミー賞を獲るというのは、やっぱり奇跡ですよ。だから、そういうことも含めて5人が自分の足で…しかも森くんもいて、皆が皆、自分の足で歩いて前に進んでいるからこそ、僕は面白いなと思うんですよね。
茂木:文藝春秋から出ています、鈴木おさむさんの『もう明日が待っている』。明るくて肯定的な気持ちになれる、本当に稀有な小説ですので、皆さんもお読みください。

●鈴木おさむ さん(@suzukiosamuchan) / X(旧Twitter)公式アカウント
●鈴木おさむ さん (@osamuchan_suzuki) Instagram 公式アカウント
●鈴木おさむさん 公式サイト
●もう明日が待っている / 鈴木 おさむ (著)
(Amazon)
●文藝春秋 公式サイト
19歳で、放送作家としてデビュー。
バラエティーを中心に数々の人気番組の構成を担当。
そのほか、映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、
ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など、
多岐にわたり、ご活躍されていらっしゃいます。
そして、今年の3月末で、放送作家と脚本家を引退すると発表、
話題を集めました。

──男性アイドルの変化
茂木:今回、鈴木さんが文藝春秋から出された『もう明日が待っている』。これは言うまでもなく“小説SMAP”なんですけど、鈴木さん、振り返ると、すごいグループだったじゃないですか。
鈴木:やっぱり思い返すと、すごいグループでしたよね。
茂木:バケモノ番組になった『SMAP×SMAP』の、正にそのど真ん中にいたわけですが、振り返るとあの番組は何だったんでしょうか。
鈴木:戦後、テレビがすごく力を持っていくじゃないですか。その中で、特に80年代から、“お笑い”というバラエティーがすごく増えていくんです。多分これは間違いないと思うんですけど、夜9時台でバラエティーをやるというのが、なかなか許されなかったんですよね。8時台だったら『全員集合』とかがあったんですよ。要は、70年代とかは、夜9時台には歌番組のようにお笑いにスポンサーがつかなかったと言うか。
茂木:そういう雰囲気だったんですね。
鈴木:そういう雰囲気だったんです。お笑い番組に対して「お笑いなんて」と言われていたのが、70年代に、萩本欽一さん、ドリフターズ、そしてひょうきん族とかがあって、たけしさん、さんまさん、タモリさんたちによって、だんだんお笑いが日本のメインストリームになってくる。それが80年代になって、そこで旧ジャニーズと言われるアイドルの人たちもいるんですけど、とは言っても、「アイドル」というキャーキャー言われる花であったと言うか。
茂木:光GENJIまでは、そういう感じだったんですかね。
鈴木:そうですね。本当にファッションに近くて。だから、数年経ったら変わっていくもの。それが、アイドルだったんです。

茂木:その光GENJIのバックで踊っていたSMAPのメンバーが…あれは月曜の夜10時ですよね?
鈴木:月曜の夜10時で『SMAP×SMAP』が始まったんですけど、でも、それまで男性アイドルがメインの番組がなかったんです。だけど、世の中がちょっと変わってきていて。スキーからスノーボードになったり、ディスコがクラブになったのは90年代なんです。だから、あらゆるもののファッション性と言うか、かっこよさが変わった時代だったんですね。
茂木:かっこよさの基準が変わった、と。
鈴木:はい。例えば、ディスコだったらスーツを着てキラキラしている人が踊っていたのが、クラブは私服で行って、「踊る」んじゃなくて「音に乗る」というものだったりとか。よりファッションが大事で、世の中がキラキラよりもかっこよさを求める時代になったんですね。だから僕がこの仕事を始めた時には、「アイドルなんかだせぇよ」と言われている時代でした。
茂木:鈴木おさむさんは、テレビにおいて正にブルーオーシャンですね。新しいことをやってきたということですよね。
鈴木:でも、彼らのチームが優秀だったのは、今までのアイドルサウンドからクラブサウンドみたいにしたりとか、ドラマの出方もアイドルじゃない出方になったりとか。僕はそんな中で出会って、月曜夜10時で番組をやることになった時には、アイドルというものは今までは中高生で好きになって卒業するものだったんですけど、多分彼らは20代の女性が好きだと言っても恥ずかしくないアイドルになったんですよ。
茂木:アイドルのあり方が変わったということですよね。
鈴木:変わったんです。例えば、anan(アンアン)の表紙みたいなものも、本来はアイドルがやるべきじゃないものだったのにやったりと、だから全てのアイドルとの掛け算が新鮮だった時代ですよね。
──SMAPの男らしさ
茂木:小説SMAP、あのアイドルグループの人気の秘密は何だったと思いますか?

鈴木:時代のハマりというものがあるじゃないですか。「この時代にこの人が必要」という。90年代のバブルが終わった日本の中で、それでもまだあの頃はキラキラしていたと思うんですけど、新しいアイドル像というものを待っていた。それに、スクラップアンドビルドで言うと、「アイドルなんかだせぇよ」と言っていた人に「アイドル好きでいいじゃん」と、全員に言わせたという。男性までもファッションを真似する、というのが、彼らがやってきた全てのスタイル、ファッション的なところだと思うんですけど。僕は、それが彼らがやってきた新しいスター、ヒーローだと思うんです。
だから、僕は今の時代と似ていると思っていて。全てが1回壊れたじゃないですか。今、何か新しいものが生まれてくるし、求められていると思いませんか?
茂木:あります。僕、この『もう明日が待っている』を読んで、前半の読みどころの1つだと思ったのが、木村拓哉さんの結婚。そしてコンサートでの発表の仕方。この辺りを、鈴木さんをはじめ、スタッフの方が色々とすごく深いことまで考えているんですよね。
鈴木:でも本当は、ラジオの収録をさいたまスーパーアリーナの楽屋で録って、そこから「遅くなっちゃったから今日は泊まろう」ということになって、夜12時を過ぎたので泊まったんですよ。そうしたら、朝、急に新聞に抜かれて、それでマネージャーさんに呼ばれて、本当は1週間後だったのに「今日発表するから」となったんです。僕はその時にマネージャーさんが言った理由がすごいなと思うんですけど、「男らしくない」と言ったんですね。
茂木:それが価値だということですよね。
鈴木:「男らしいかどうか」なんです。アイドルとしてどうか、タレントとしてどうか、人間としてどうかというよりも、もっとシンプルに「男らしいかどうか」とは、僕はそこがSMAPというグループの根本だと思うんです。
茂木:根っこにあるもの。
鈴木:僕も「人として」だったらまだ分かるんですよ。でも「男らしいかどうか」だから、全国の女性が惚れたんじゃないかなと思うんです(笑)。
茂木:今回の『もう明日が待っている』でも色々あったんですけど、僕のこの小説の読後感は「幸福」という感じなんですよ。あの時代は幸せだったな、と言うか。それは稀有なことですよ。この時代に芸能事務所とかアイドルとか色々ありながら、「あ、SMAPがいた時代って良かったな」と、『もう明日が待っている』を読んだら思えるんですよ。
鈴木:でもそれは、彼ら5人が前を進んで歩いているからだと思いますね。
茂木:更にその先も。
鈴木:はい。だからこのタイトルにしたんです。彼ら5人はすごく頑張っているじゃないですか。例えば、草彅剛だって、あの状況の中で自分でアカデミー賞を獲ることは奇跡じゃないですか。
茂木:『ミッドナイトスワン』で。
鈴木:はい。本当にあの状況で、あの映画の規模で、あれでアカデミー賞を獲るというのは、やっぱり奇跡ですよ。だから、そういうことも含めて5人が自分の足で…しかも森くんもいて、皆が皆、自分の足で歩いて前に進んでいるからこそ、僕は面白いなと思うんですよね。
茂木:文藝春秋から出ています、鈴木おさむさんの『もう明日が待っている』。明るくて肯定的な気持ちになれる、本当に稀有な小説ですので、皆さんもお読みください。

●鈴木おさむ さん(@suzukiosamuchan) / X(旧Twitter)公式アカウント
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●鈴木おさむさん 公式サイト
●もう明日が待っている / 鈴木 おさむ (著)

●文藝春秋 公式サイト