2025年08月02日
今夜ゲストにお迎えしたのは、現在、全国で公開中の映画『木の上の軍隊』の監督、平一紘さんです。
平一紘さんは、1989年、沖縄県のお生まれです。
沖縄国際大学在学中に、沖縄を拠点とする映画制作チーム「PROJECT9」を立ち上げ、多くの自主映画を制作されました。
2022年には、『ミラクルシティコザ』で、クリエイターの発掘・育成を目的とした映像コンテスト「未完成映画予告編大賞(MI-CAN)」を受賞。
そのほかの作品に、堤 幸彦監督と共同で手がけた『STEP OUT にーにーのニライカナイ』(2025年)などがあります。

──すごく弱い立場の人たちに、この映画を観て欲しい
茂木:この『木の上の軍隊』は、終戦を知らずに木の上で2年間を過ごした2人のお話なんですけど。どうですか? 沖縄出身ということで、やっぱり平和とかそういうことに深い想いがあると思うのですが。
平:いや、実はですね、僕がこの映画のお話を頂いたのは2年前で、その時33歳だったんですけれども、もちろん映画監督になりたくてこの仕事をしているのでこの話が来た時は二つ返事で受けたんですよ。でも、受けたは良いものの、正直かなり葛藤と言うか後ろめたさがあったんです。
その理由としては、僕は沖縄で生まれているんですけれども、多分33年間一度も、ちゃんと沖縄戦に向き合って来なかったんですよね。気持ちとしてもそんなに入り込んで調べたこともなかったですし、もちろん毎年慰霊の日には黙とうとかもしていましたけど、多分形だけやっていたんですよ。
そんな僕が、この『木の上の軍隊』と言うか、沖縄戦を描いていいのかな、という思いがあって。でも、この作品の舞台版の映像を見て、これは、いわゆる“沖縄戦の戦略的な戦闘”を描いてるのではなくて、“沖縄戦を背景にした2人の人間ドラマ”だと知ったんです。だから、これは今から僕がチャレンジしても、より面白いものができるんじゃないかな、と思って、筆を進めました。
茂木:木の上で2年間を過ごした2人、ということなんですけど、おひとりは地元沖縄の方で、もうひとりは本土から来た上官の方で。しかもその上官の方は、息子さんとの間にちょっと色々あるんですよね。だから、色んな人間の心が絡み合って、それがドラマになっていますよね。
平:ありがとうございます。
茂木:僕は今回、メイキング映像なども拝見しましたけど、経験者の方やご遺族の方のお話を丹念に聞いていますよね。
平:そうですね。僕、初めて原作モノをやるんですよ。初めてで、しかも沖縄戦に向き合わないといけないとなった時に、今まで向き合って来なかった分、せめて撮影までは毎日向き合うしかないなと思ったんです。それでずっと調べていたんですけど、やっぱり沖縄戦というのは調べれば調べるほど、かなりきついんですよね。

茂木:それはそうですよね…。
平:かなり壮絶過ぎて、「これをこのまま映像にしたら、多分観たくないな」と思ったんです。きつ過ぎるし、凄惨過ぎるし、悲し過ぎるし。なので、『木の上の軍隊』は本当にちょうどいい塩梅のエンタメにできるな、と思ったんですよ。
今、沖縄でたくさんの人が観てくれているのも、結構子供たちが観に来てくれていて。3世代に渡って見に来てくれたりとか。
茂木:そうなんですか。それは嬉しいなぁ。
平:すごい嬉しいです。
茂木:今の視点から見ると、コミカルに見えるような場面もありますよね。
平:はい。これはでも、“あえて”なんです。井上ひさしさんの率いていたこまつ座さんの舞台も結構…もちろん反戦をテーマにしたものが多いんですけれども、それでもコミカルにエンタメにしている部分があったので、そこは僕も受け継いでやりたいな、という思いはありました。
茂木:この映画は、“平和”、そして“命こそが宝である”という沖縄の言葉ありますけども…。
平:“命どぅ宝(ぬちどぅたから)”。
茂木:はい。そういうことをもう一度考えさせられる映画になっていると思うんですけど、その辺りはどうですか? どういうところを感じて欲しいですか?
平:「この映画をどんな人に見てほしいか」とか、「どんなことを伝えたいか」とかをずっと考えていたんですけど、すごく弱い立場の人たちにこの映画を観て欲しいなと思いました。
沖縄というのはいわゆる辺境の地で、大国同士の間にあったりとか、戦争とかが起きた時に一番ダメージを負うと言うか、最前線に行くのはその狭間の人たち、辺境の地で戦に巻き込まれる人たちだな、と思っていて。その最たるものが、多分この“最初の地上戦”というものが起きてしまった沖縄なんですよね。
となった時に、「“この沖縄で戦闘が起きたということを、僕自身があんまりちゃんと知ろうとしなかった”ということが問題だな」と僕は思ったんです。この“映画”というエンターテイメントで、それを知る必要がないと思っていた人たちに届いたらいいな、と思いました。
茂木:ひょっとしたら監督自身も、この映画を観て初めて戦争とか平和のことを深く考えるかもしれない方々と同じような感覚で、今まで仕事をしたりしていたのかもしれないですね。

平:僕自身が一番成長させられましたね。
茂木:すごいですね。監督が成長したその作品を観て、皆がまた成長する、ということは本当に素敵だなと思うんですけども。
この『木の上の軍隊』を私も観て、戦争と平和を描く映画というのは本当に難しいんですけど、期待値を全て超えてきました。そして監督自身の脚本による、素晴らしいドラマ、人間関係…やっぱりこの2人の濃密な人間関係が、本当に素晴らしいですね。
平:ありがとうございます。多分この2人だから成しえたような、あの最後のシーンに繋がるものがあるなと思います。
茂木:是非皆さんご覧頂きたいと思います。
──平一紘さんの『夢・挑戦』
茂木:監督、この番組のテーマは『夢と挑戦』なんですが、監督はこれからどんな『夢・挑戦』にチャレンジしていきたいですか。
平:『木の上の軍隊』を撮り終わって、今日この収録のタイミングというのが全国公開の日で、新宿ピカデリーで今から舞台挨拶をしてくるんですけども…。
茂木:おめでとうございます!
平:ありがとうございます(笑)。多分、僕が「映画監督になりたい」と思って夢見ていた景色は、多分今日この後に叶うんですよ。全国で今からたくさんの人に見てもらえるということがあるんですけど、じゃあ「その次に何がしたいか」と言うと、多分「もう1回映画が撮りたい」。
でも、沖縄映画をずっと撮ってきたので、次は県外で映画を撮ってみたいと思っています。なので、僕の活動の場所も2拠点にしようかなと思っています。この映画をきっかけに、東京と沖縄を行き来しながら、沖縄の監督であるというアイデンティティを忘れずに、色んな映画を色んな場所で、国内国外限らず、たくさん撮っていきたいなと思っています。
茂木:ありがとうございます。次回作も楽しみにしています。
監督。改めて、『木の上の軍隊』をこれから見ようと思っているリスナーの皆さんへ、メッセージを頂けますでしょうか?
平:『木の上の軍隊』は、2人の兵士が2年間木の上で戦い続けるという、戦闘シーンのほとんどない戦争映画になっています。この映画は年齢制限のない映画になっています。小さなお子さんからお年寄りまで、たくさんの人が楽しめるように作ったので、ぜひ映画館に大切な人を誘って観に来てほしいです。


(C)2025「木の上の軍隊」製作委員会
●映画『木の上の軍隊』公式サイト
↑メイキングドキュメンタリーもご覧いただけます!
●映画『木の上の軍隊』(@kinoue_guntai) 公式 X(旧Twitter)
平一紘さんは、1989年、沖縄県のお生まれです。
沖縄国際大学在学中に、沖縄を拠点とする映画制作チーム「PROJECT9」を立ち上げ、多くの自主映画を制作されました。
2022年には、『ミラクルシティコザ』で、クリエイターの発掘・育成を目的とした映像コンテスト「未完成映画予告編大賞(MI-CAN)」を受賞。
そのほかの作品に、堤 幸彦監督と共同で手がけた『STEP OUT にーにーのニライカナイ』(2025年)などがあります。

──すごく弱い立場の人たちに、この映画を観て欲しい
茂木:この『木の上の軍隊』は、終戦を知らずに木の上で2年間を過ごした2人のお話なんですけど。どうですか? 沖縄出身ということで、やっぱり平和とかそういうことに深い想いがあると思うのですが。
平:いや、実はですね、僕がこの映画のお話を頂いたのは2年前で、その時33歳だったんですけれども、もちろん映画監督になりたくてこの仕事をしているのでこの話が来た時は二つ返事で受けたんですよ。でも、受けたは良いものの、正直かなり葛藤と言うか後ろめたさがあったんです。
その理由としては、僕は沖縄で生まれているんですけれども、多分33年間一度も、ちゃんと沖縄戦に向き合って来なかったんですよね。気持ちとしてもそんなに入り込んで調べたこともなかったですし、もちろん毎年慰霊の日には黙とうとかもしていましたけど、多分形だけやっていたんですよ。
そんな僕が、この『木の上の軍隊』と言うか、沖縄戦を描いていいのかな、という思いがあって。でも、この作品の舞台版の映像を見て、これは、いわゆる“沖縄戦の戦略的な戦闘”を描いてるのではなくて、“沖縄戦を背景にした2人の人間ドラマ”だと知ったんです。だから、これは今から僕がチャレンジしても、より面白いものができるんじゃないかな、と思って、筆を進めました。
茂木:木の上で2年間を過ごした2人、ということなんですけど、おひとりは地元沖縄の方で、もうひとりは本土から来た上官の方で。しかもその上官の方は、息子さんとの間にちょっと色々あるんですよね。だから、色んな人間の心が絡み合って、それがドラマになっていますよね。
平:ありがとうございます。
茂木:僕は今回、メイキング映像なども拝見しましたけど、経験者の方やご遺族の方のお話を丹念に聞いていますよね。
平:そうですね。僕、初めて原作モノをやるんですよ。初めてで、しかも沖縄戦に向き合わないといけないとなった時に、今まで向き合って来なかった分、せめて撮影までは毎日向き合うしかないなと思ったんです。それでずっと調べていたんですけど、やっぱり沖縄戦というのは調べれば調べるほど、かなりきついんですよね。

茂木:それはそうですよね…。
平:かなり壮絶過ぎて、「これをこのまま映像にしたら、多分観たくないな」と思ったんです。きつ過ぎるし、凄惨過ぎるし、悲し過ぎるし。なので、『木の上の軍隊』は本当にちょうどいい塩梅のエンタメにできるな、と思ったんですよ。
今、沖縄でたくさんの人が観てくれているのも、結構子供たちが観に来てくれていて。3世代に渡って見に来てくれたりとか。
茂木:そうなんですか。それは嬉しいなぁ。
平:すごい嬉しいです。
茂木:今の視点から見ると、コミカルに見えるような場面もありますよね。
平:はい。これはでも、“あえて”なんです。井上ひさしさんの率いていたこまつ座さんの舞台も結構…もちろん反戦をテーマにしたものが多いんですけれども、それでもコミカルにエンタメにしている部分があったので、そこは僕も受け継いでやりたいな、という思いはありました。
茂木:この映画は、“平和”、そして“命こそが宝である”という沖縄の言葉ありますけども…。
平:“命どぅ宝(ぬちどぅたから)”。
茂木:はい。そういうことをもう一度考えさせられる映画になっていると思うんですけど、その辺りはどうですか? どういうところを感じて欲しいですか?
平:「この映画をどんな人に見てほしいか」とか、「どんなことを伝えたいか」とかをずっと考えていたんですけど、すごく弱い立場の人たちにこの映画を観て欲しいなと思いました。
沖縄というのはいわゆる辺境の地で、大国同士の間にあったりとか、戦争とかが起きた時に一番ダメージを負うと言うか、最前線に行くのはその狭間の人たち、辺境の地で戦に巻き込まれる人たちだな、と思っていて。その最たるものが、多分この“最初の地上戦”というものが起きてしまった沖縄なんですよね。
となった時に、「“この沖縄で戦闘が起きたということを、僕自身があんまりちゃんと知ろうとしなかった”ということが問題だな」と僕は思ったんです。この“映画”というエンターテイメントで、それを知る必要がないと思っていた人たちに届いたらいいな、と思いました。
茂木:ひょっとしたら監督自身も、この映画を観て初めて戦争とか平和のことを深く考えるかもしれない方々と同じような感覚で、今まで仕事をしたりしていたのかもしれないですね。

平:僕自身が一番成長させられましたね。
茂木:すごいですね。監督が成長したその作品を観て、皆がまた成長する、ということは本当に素敵だなと思うんですけども。
この『木の上の軍隊』を私も観て、戦争と平和を描く映画というのは本当に難しいんですけど、期待値を全て超えてきました。そして監督自身の脚本による、素晴らしいドラマ、人間関係…やっぱりこの2人の濃密な人間関係が、本当に素晴らしいですね。
平:ありがとうございます。多分この2人だから成しえたような、あの最後のシーンに繋がるものがあるなと思います。
茂木:是非皆さんご覧頂きたいと思います。
──平一紘さんの『夢・挑戦』
茂木:監督、この番組のテーマは『夢と挑戦』なんですが、監督はこれからどんな『夢・挑戦』にチャレンジしていきたいですか。
平:『木の上の軍隊』を撮り終わって、今日この収録のタイミングというのが全国公開の日で、新宿ピカデリーで今から舞台挨拶をしてくるんですけども…。
茂木:おめでとうございます!
平:ありがとうございます(笑)。多分、僕が「映画監督になりたい」と思って夢見ていた景色は、多分今日この後に叶うんですよ。全国で今からたくさんの人に見てもらえるということがあるんですけど、じゃあ「その次に何がしたいか」と言うと、多分「もう1回映画が撮りたい」。
でも、沖縄映画をずっと撮ってきたので、次は県外で映画を撮ってみたいと思っています。なので、僕の活動の場所も2拠点にしようかなと思っています。この映画をきっかけに、東京と沖縄を行き来しながら、沖縄の監督であるというアイデンティティを忘れずに、色んな映画を色んな場所で、国内国外限らず、たくさん撮っていきたいなと思っています。
茂木:ありがとうございます。次回作も楽しみにしています。
監督。改めて、『木の上の軍隊』をこれから見ようと思っているリスナーの皆さんへ、メッセージを頂けますでしょうか?
平:『木の上の軍隊』は、2人の兵士が2年間木の上で戦い続けるという、戦闘シーンのほとんどない戦争映画になっています。この映画は年齢制限のない映画になっています。小さなお子さんからお年寄りまで、たくさんの人が楽しめるように作ったので、ぜひ映画館に大切な人を誘って観に来てほしいです。


(C)2025「木の上の軍隊」製作委員会
●映画『木の上の軍隊』公式サイト
↑メイキングドキュメンタリーもご覧いただけます!
●映画『木の上の軍隊』(@kinoue_guntai) 公式 X(旧Twitter)











