Dream Heart(ドリームハート)

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Dream HEART vol.647 俳優 市村正親さん 音楽劇「エノケン」

2025年08月23日

今夜ゲストにお迎えしたのは、俳優の市村正親さんです。

市村正親さんは、1949年、埼玉県のお生まれです。

1973年に、劇団四季の「イエス・キリスト=スーパースター」(後に「ジーザス・クライスト=スーパースター」)でデビュー。
劇団の看板スターとして活躍されました。

以後、退団後もミュージカル、舞台、映画、ドラマなど、様々な作品に意欲的に挑戦され、日本を代表する舞台俳優として、ご活躍中でいらっしゃいます。


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──「喜劇王」榎本健一さんの人間ドラマ

茂木:大俳優でいらっしゃる市村さん。10月7日から、東京のシアタークリエで上演される音楽劇『エノケン』で、主演・榎本健一さんを演じられるということで。こちらの脚本は又吉直樹さんということですが、いかがですか? 実は今、手元に脚本ををお持ちになっていらっしゃるんですよね。

市村:はい。今、これを覚えに入ってるんですよ。

茂木:市村さんは、台本を読む時にはものすごく集中されるんですってね。

市村:皆そうですよ。やっぱりちゃんと台本に向き合って、でないと台詞が入らないですからね。
又吉さんが書いてくれるということだけは知っていたんだけども、又吉さんが本を書いてくれるまでは、どういう本ができるか…これはもう、俳優というのは本次第だからね。「どういうものができるかな〜?」と思っていたら、ようやっと、かれこれ1ヶ月か2ヶ月ぐらい前に出来たんですよ。
それで第一稿が見れたので、部屋でね、コーヒーを置いて、集中しなくちゃいけないから周りを暗くして(小さな)電気を点けて、まず1ページを開いて、最後まで読み切ってね。…良かったですね。いい本ができました。

茂木:そうですか。良かった。

市村:本当にいい本ができました。又吉さんは仕事を完璧になさったんで、あとはもう僕たちが演出家と一緒にそれを造形していくという作業に入ります。又吉さんがいいものを書いてくれたんで、あとはこっちが努力すればいいかな、という気持ちです。

茂木:そうですか。市村さんは、国内外の超一流の方々とお仕事をされてきていますから、ある意味では目が肥えているわけでしょう?

市村:目は肥えていますね。だって僕がやっているミュージカルというのは、『屋根の上(のヴァイオリン弾き)』にしても、『ミス・サイゴン』にしても、『オペラ座の怪人』にしても、ハロルド・プリンスだとか、ニコラス・ハイトナーだとか、もうブロードウェイで第一人者として活躍している方たちの作ったものをやっているわけだから、やっぱりもうね、「ミュージカルとはこうあるべき」みたいなものが感覚的にわかっちゃうんですよ。理屈じゃなくね。
だから、その僕が(『エノケン』の脚本を)読んで、「あ、これはいけそうだな」と思ったんですよ。

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茂木:さすが又吉さんですね。

市村:あとエノケンさんは、音楽もいっぱい歌っているからね。『洒落男』とか、『月光値千金』、『私の青空』。色んな歌を歌っているんで、曲はもういっぱいある、と。どれをチョイスするかというのは我々が決めていくんだけども。それはもう最高の本じゃないですかね。

茂木:素晴らしいですね。
市村さんは、舞台に立った時にその人物になりきるそうですが。

市村:そうですね。なりきらないと、やっぱりやれないです。

茂木:今回はエノケンさんになりきる、と。

市村:そうですね。自分が尊敬する色んな方たちに言われたことは、「エノケンの真似しても意味ないよ」と。エノケンの声を真似てやったら、喉が潰れちゃいますよ。身長も僕の方が高いし、顔も違うし。
ただ、“演劇人”としては同じ心でやろうと思うんです。「いいものを作ってお客さんを喜ばせたい」という、これが原点ですからね。それには、エノケンのモノマネをするんじゃなくて、人間ドラマを作らなくちゃいけない、というのも、又吉さんのテーマでもあるし、僕らのテーマなんですよ。

茂木:そこには喜劇があり、悲劇があり、もう色々な…。

市村:人間ドラマですね。(劇内では)舞台でやっていることは、そんなにやらないんです。

茂木:では、どちらかと言えば“人生を描く”ということですか。

市村:裏話が多いんですよ。楽屋のバックステージとかね。あとは、彼の家庭だとか、稽古場だとか、仲間たちが集まっている酒場だとか。そしてバックには戦争が流れていますからね。“そういう社会との関わり合いの中で生きた、演劇人たち”、ということかな。

茂木:市村さんは、まず西村晃さんの付き人としてバックステージ…舞台裏を丹念にご覧になっているじゃないですか。そういう意味においては、今回エノケンさんを演じる上で、舞台の裏の人間模様とか、やっぱりご自身の経験も重なるんじゃないですか?

市村:もう僕自身が53年も舞台生活をしていますから、舞台裏では色んな事があるということはわかっていますし。ただ、高校を卒業して20歳の頃に、西村晃さんの付き人をやらされて初めて行ったのは、いずみたくさんが音楽で、藤田敏雄さんが演出で、野坂昭如さんが本を書いたという『聖スブやん』というミュージカルでした。その世界というのは、まさしくエノケンの世界にも似ているしね。

茂木:なるほど。野坂さんね。じゃあやっぱり、自分の演劇人生が重なりますね。

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市村:重なります。西村さんみたいな人も出てくるし、当然、菊田一夫が出てくるし、古川ロッパさんも出てくるし。そういう意味で言うと、僕が演劇に携わった頃に見ていたようなプロの現場というのが何となく見えて、僕自身も53年板の上で頑張ってきた人間だから、「何やってんだ!」みたいなことは言えるしね。もう散々、浅利さんと蜷川さんには怒鳴られてきて、今度は僕がそれを言う番だから(笑)。

茂木:(笑)。市村さんのような大俳優に、蜷川さんとかは平気で駄目出しするわけでしょう?

市村:駄目出しというのは貰った者の勝ちなんですよ。駄目出しを貰えない人はね、大した役者じゃないんです。

茂木:そうなんですか?

市村:そうです。駄目出しというのは、「もっと良くしよう」と演出家が頑張ってくれるわけですよ。それもタダでくれるんですよ。

茂木:「こいつは伸びる」とか「もっと良くなる」と思うから。

市村:そう。「伸びないな」、「言ってもわからないな」と思う奴にはあんまり駄目出しをしないんです。

茂木:怖いですね(笑)。
今回、松雪泰子さんなどベテランの方も出ているんですけど、若手俳優の本田響矢さんとか、市村さんに色々教わりたいと思っているんじゃないですかね。

市村:教わる・教わらないじゃなく、結局稽古をしながらお互いに学んでいくつもりですね。「君ね、これはこうこうこうだよ」なんて言う役者というのは、大したことないんですよ。

茂木:深いですね。そうなんですか。

市村:そうです。それは演出家の仕事であって、役者が相手役とやるのは、「ちょっとやりにくいとこある?」とか、「俺はこういうふうに思うけど、そっちはどう思う?」みたいな、そういうやり取りなんです。お互いが良いものを作れるような会話というのはいいけども、「君ね、芝居とはね、演技とはこうだ」なんて、そんなことを言うのはそんなの駄目ですよ。

茂木:この『エノケン』の舞台に対する期待がMAXですけども。
改めまして、音楽劇『エノケン』は10月7日より東京シアタークリエをはじめ、その後、大阪、佐賀、愛知、埼玉の川越と、全国公演も予定されています。詳しい情報は音楽劇『エノケン』の公式ホームページをご覧ください。
市村さん、最後に、『エノケン』をこれから観る方、楽しみにされている方に、メッセージをお願いしてよろしいでしょうか?

市村:市村正親が演じるエノケンは喜劇王の代表とされていますけども、人間、役者エノケンを市村がどう演じるかを、是非お楽しみに、観に来てください。

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音楽劇「エノケン」公式サイト

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