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Dream HEART vol.654 映画監督・写真家 奥山由之さん 「現実と非現実を行き交うような物語を描きたい」

2025年10月11日

今夜ゲストにお迎えしたのは、実写版映画『秒速5センチメートル』の監督、奥山由之さんです。

奥山由之さんは、1991年、東京都のお生まれです。

これまでに、米津玄師さんの『感電』や『KICK BACK』、星野源さんの『創造』といったミュージックビデオや、ポカリスエットのCMなども手がけていらっしゃいます。

また、写真家としてもご活躍されていて、第34回写真新世紀の優秀賞や、第47回講談社出版文化賞・写真賞も受賞されていらっしゃいます。


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──世界を多面的に捉える

茂木:今回の実写版映画『秒速5センチメートル』の主題歌は米津玄師さんの『1991』ということなんですが、米津さんとはもうずいぶん一緒に仕事をされてきていますよね。

奥山:そうですね。『感電』と『KICK BACK』という曲でミュージックビデオを作らせて頂いたりとか、あとはアーティスト写真を撮らせて頂いていますね。

茂木:米津さんと一緒にお仕事をされていてどうですか?

奥山:もちろん真摯に1曲ずつ作られる方ですし、今回もこの『1991』という曲が、貴樹という人物と米津さんが重なり合うようにして書かれた曲なのかな、と思っていて。それだけ物語の人物にご自身を投影されてと言うか、ある種、どこか米津さんの半生も込められているような曲になっているんです。

茂木:なるほど。今回の主題歌『1991』も、本当に米津さんの才能がすごいですね。この映画にぴったりですし。
やっぱり、あまりにもアニメ版の山崎まさよしさんの楽曲のイメージが強いので、制作側としても色々考えたでしょう?

奥山:そうですね。ただ、20年の時を経て実写化するにあたって、今改めて『秒速5センチメートル』という物語を解釈した時に生まれる楽曲も、(アニメ版の主題歌)『One more time, One more chance』と共にこの作品に流れていると、いま作ったことの意義があるんじゃないかな、と思いました。なので、僕は米津さんという人がどのようにこの物語を捉えるのか、というのを楽曲で聴いてみたいと思って依頼させて頂きました。

茂木:結果は「素晴らしい」としか言いようがないんですけれども。
クリエイターというのはどうやって生まれてくるんでしょうか? 奥山さんはもう高校生の頃から色々な写真を自分で撮られたりとか、あとは最初は映画も作られていたんですよね。

奥山:そうですね。中学・高校からアニメーションとか映画の自主制作を、大学生まではやっていました。

茂木:ずっとされていて、絵コンテを描いたりなども色々とされていたんですよね。クリエイターの才能とはどうやって育まれていくんでしょうか。ご自身を振り返るとどうですか?

奥山:僕に限らず、色んな作り手の方を見ていても、創作をすることにおいて大事だな、と思うのは、やっぱり何かの出来事とか、人でもいいんですけど、“自分が世界と対峙した時に多面的に捉えられるかどうか”、ということです。
自分から見ている視点というのはもちろん大事なんですけど、一面的には見ずに多面的に「でもこっち側から見てみるとこういう出来事かもしれない」とか、「この人はこういう人だ」と決めつけずに「でもこういう魅力もあるかもしれない」とか、そういう視点を色んなところから変えられるような、多面体に世界を捉えている人というのは、創作をするにあたってすごく大事なポイントなのかな、と思います。ちょっと抽象的で申し訳ないですが。

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茂木:なるほど。そういう色んなアングルから人を見たり人生を見たりすると、そこにある種の真実と言うか、それはでも色んな人の生き方を肯定してくれるものになるんですかね。

奥山:「自分が思っていたことは思い込みだったんだ」と気づく瞬間とか、常識とされていることが剥がれていく瞬間とか、そういう時に物語とかが立ち上がってくると言うか、「世界って面白いな」、「人間って面白いな」というふうに心から実感できる時だと僕は思っています。

茂木:新海誠さんも、最初のアニメなどは会社員として勤められながら、夜に帰ってから1人でコツコツと作られたりしていたじゃないですか。このラジオを聴いている方の中には、若い人でちょっとまだ世の中では全く活躍できていなくて孤独にコツコツやっている人もいらっしゃると思うんですけど、奥山監督にもそういう時代があったわけですよね。そういう若いクリエイターは自分のやっていることをどのように考えればいいんでしょうか?

奥山:僕も会社員をやっていた時期があってそこからフリーランスになったんですけど、やっぱり「えいや!」と飛び出すことは大事だと思います。もちろんそこには成功もあれば失敗もありますけど、ただ、新しい感情に出会えると言うか、障壁も現れますし、自分がそれを乗り越えたいと思った時に、衝突しながらも、こういう感情になるんだ、みたいな、その中で成長していくと思うんです。
今回の『秒速5センチメートル』を僕が作らせて頂いた時も、人間としても作り手としても少し成長できたところが実感としてあるので、怖いことはたくさんあると思うんですけど、本当に自分の信じるものがあるのであれば、それはもう信じて飛び込んでいく、というのが、人生を豊かにするかな、というふうには思います。ちょっと無責任で申し訳ないんですけど(笑)。

茂木:ありがとうございます。
奥山監督は写真家としても揺るぎない評価があって、大人気で、今回実写版の『秒速5センチメートル』を撮って、映画監督としても出るということで、いよいよこれからどうされますか? ますます忙しくなってしまいますよね。

奥山:僕はあんまり作っているものの数は多くない方で、1個にじっくり集中するタイプなので、そんなに忙しくしないとは思うんですが、どうだろうな?(笑)
でもこれからも作りたいものが作れたらと言うか、幸運にも本当に素敵な仲間がいるので、その人たちと創作をし続けられたら嬉しいなと思います。

茂木:今後のご予定で、今お話しできることは何かありますか?

奥山:今作っている写真作品があるので、多分来年の春の終わりとかに、久々に発表できるかな、写真集の出版や展覧会を開催しよう、と思っています。

茂木:デビュー作の『Girl』から始まって、すりガラスの向こうの風景をコロナ禍で捉えたのもありますよね。だから奥山監督は本当に写真家としても作風が予想できないと言うか、「今度は何を撮るんだろう?」という期待感もあるんですが。今後はどういうものを撮るんですか?

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奥山:次に作っている作品は、“写真”という物質そのものに向き合うと言うか…。ちょっとこれだけだと「どういうことなんだろう?」という感じがしてしまうと思うんですけども、そういう作品を今作っています。

茂木:楽しみですね。

──奥山由之さんの『夢・挑戦』

茂木:この番組のテーマは『夢・挑戦』なんですけども、奥山監督のこれからの『夢・挑戦』は何でしょうか?

奥山:僕は現実と非現実を行き交うような物語がすごく好きなんです。昔からあんまり友人が多くなかったので1人で頭の中で想像することが多くて、頭の中で起きている出来事と目の前に見えていることが行き交ってこそ現実と言うか、そういう混沌にこそリアリティを感じている人間で。なので、そういった物語を描けたらいいな、というのは思ったりしています。

茂木:それは映画でしょうか? 小説でしょうか? アニメーションでしょうか?

奥山:映画で作れたらいいな、と。

茂木:楽しみにしております。

奥山:頑張ります。

茂木:最後に、この実写版『秒速5センチメートル』を観ることを楽しみにしているファンの方々に、奥山監督から何かメッセージをお願いできますでしょうか?

奥山:本当に全力で、チーム一丸となって愛情を注いで作った作品なので、是非、劇場でご覧頂けたらと思います。

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■プレゼントのお知らせ

番組でご紹介しました、実写版映画『秒速5センチメートル』のオリジナル卓上カレンダーに、奥山由之監督の直筆サインを入れて、3名の方にプレゼントいたします。

ご希望の方は、お名前やご住所、電話番号など、必要事項を明記の上、メッセージフォームより、ご応募ください。

私、茂木に聞きたい事や相談したい事など、メッセージを添えていただけると嬉しいです。

尚、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。



実写版映画『秒速5センチメートル』公式サイト


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