プロジェクト概要

太古の昔より、森は動物や植物などたくさんの命を育み、田畑や海、川にたくさんのミネラルをもたらし、地域と暮らしを守ってきました。 東日本震災では津波でコンクリート堤防や松林がことごとく破壊される中、その森や、昔からその地方に根差す、深く地面深くに根を張った潜在自然植生の木々たちは、津波の勢いを和らげました。 関東大震災や阪神大震災では、大火により建物が燃える被害を食い止め、防災林として大きな役割を果たしました。 この「鎮守の森」をモデルとした森をできるだけ多くつくることは、災害の多いこの国に生きていく私たちが、後世に伝え残さなくてはならない貴重な知恵であり、自然と共生していく教訓でもあります。 番組「いのちの森〜voice of forest~」では、「鎮守の森のプロジェクト」が行う活動をはじめ、日本のみならず世界各地の森を守る活動を行う人や団体にスポットをあて、森の大切さについて考えていきます。

昆虫植物写真家 山口進さんのインタビュー、お届けしてきましたが、今週が最後となります。
あのジャポニカ学習長の表紙の、めずらしい昆虫や植物の写真を40年にわたり撮り続けてきたことでも知られる山口さん。最後は、昆虫と森、そして自然環境について語って頂きます!

〜本当におもしろい昆虫のお話をたくさんうかがいましたが、ほかにもおもしろい昆虫はいますか?
最近ボルネオに通っているのですが、ボルネオに、食虫植物のウツボカズラのなかに住んでるアリがいるんです。ウツボカズラというのは虫を捕まえて、それを栄養にしているんですが、ウツボカズラの壺のなかに消化液が入っています。普通のアリはその中に落ちると死にます。だいたい、大きい3〜4cmの大きいアリでも3〜4秒で沈んでしまいます。ところが、このアリは消化液の中を自由自在に泳ぎ回って、ウツボカズラの底に沈んでいる虫をとってしまうんです。横取りしているように見えるんですが、実はそうではないんです。このアリは「シミッチイ」といういいます。シミッチイは、ウツボカズラのなかにいるボウフラを食べて退治するんです。ボウフラはウツボカズラの中に住むことができるんです。ボウフラはせっかくウツボカズラの消化液の中に溜まっている栄養分を横取りするんです。横取りして食べて、最終的には蚊になって出ていくんです。ですから、ウツボカズラにとっては何の利益もない。でも、このアリはボウフラをバァーっと追っかけていって、噛み付いて、それを引き上げて食べて、そこで糞をするんです。そうするとその糞がウツボカズラの栄養になる。だから、ボウフラはウツボカズラにとってはマイナスしかありませんが、シミッチイはプラスになる。シミッチイはウツボカズラのツルに巣をつくっていて、いっさい地面には下りないんです。ウツボカズラっていっぱい壺がぶら下がっていますけれども、そのなかの半分くらいはシミッチイが住んでいます。ですから、シミッチイの住まないウツボカズラは成長が遅いんです。

〜シミッチイはなぜ溶かされないんですか?
それが疑問なんです。それを本当は調べたかったのですが、いまは標本の持ち出しとかがなかなかできないんです。可能性としては、アリには普通、お腹の横に気門といわれる穴があいていて、そこから呼吸をしていますが、そこに特殊な構造があるとか、体の節の間に、なにか染み込まないような仕組みがあるとかいろいろ考えられますが、これからの課題ですね。

〜この番組は森をテーマにしていろいろお話を伺っていて、世界中のいろんな森を旅してきた山口さんにお聞きしたいのですが、森が豊かだと昆虫もたくさんいると思います。そういう意味で印象的な森っていままでありましたか?
たしかに森が豊かだと当然生き物は多い。いまは開発が進んでいて、少なくなっていますけれども、それをやめようという動きもあります。たとえば、絶対開発しない森ってじつはあるんです。パナマ運河の両脇って森が広がっているんですが、それはなぜかというと、パナマ運河を運行するために森が必要なんです。パナマ運河というのは、ちょっと高いところにガトゥン湖という湖があって、そこにたまった水をパナマ運河に流しながら船をぐぐっと上げるんです。だからいつも水がないといけない。それを保つためにパナマ運河の周辺の森を全部残しているんですね。そういうふうに、人間が利用することによって、森が守られるということはありますよね。開発をひとえにだめとは言えませんが、うまく利用することによって森を残せるんじゃないかというふうに思いますね。


〜やっぱりそういう手付かずの森には生き物、昆虫もたくさんいるんでしょうね。
パナマもの隣のホンジュラスなんかは昼間でもジャガーを見ることができるんです。僕はよくキャンプしている場所があって、昼間にすぐそばの川で行水をしていたら、目の前をクロヒョウが通っていきましたね。そこはやっぱり森がちゃんと残っていて、それで昆虫全般が多くて、鳥も多いですね。そういうふうに食物連鎖がちゃんとなりたっているんですよ。人間もそうですが、生き物は環境の動物ですから、環境がちゃんとしていないと、ちゃんとした生き物が生きられない。だから、人間もちゃんと環境を整えていかないと、生きづらくなるんじゃないかなっていう気がします。
最近よく、ミツバチがいなかったらどうなるかという話がありますね。もう本当に単純な話で、花粉を運んでくれる人がいなくなって実がならなくなる。そうすると、食べるものだけじゃなくて、植物全般がダメになるんですね。植物って我々が生きる基本ですから、それがなくなると大変なことになります。
ただ、それをみんな気づいていて、たとえばボルネオなんかではアブラヤシのプランテーションをやめようとか、そういう動きも出ています。ですから、僕は決して悲観的ではない。昆虫っていうのは、どんな小さくても、自然環境がちょっと残っていれば生き残っているんです。だからもし、環境が良くなって林が元に戻ってくると、どんどん増えてきます。そうすると鳥も来るし、動物も来ます。昆虫や生き物の力は強いんです。だから、ちょっとだけでいいから、自然を残しておいて欲しいと思います。


山口さんのお話、いかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください!


山口進『珍奇な昆虫』/光文社新書

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Roar / Katy Perry
・The Circle Game / Joni Mitchell
今週も先週に引き続き、昆虫植物写真家 山口進さんのお話です。
あのジャポニカ学習長の表紙の、めずらしい昆虫や植物の写真、多くの方が記憶に残っていると思いますが、あの写真を40年にわたり撮り続けてきた方です。

山口進『珍奇な昆虫』/光文社新書

山口さんは今年、『珍奇な昆虫』という本を発表されています。この本は、50年にわたって追いかけてきた、珍しい、奇妙な昆虫たちを写真と解説文で紹介したもの。 本当に目次を見るだけで、興味が湧くものばかり!
きょうはその中から、人間も顔負けの社会システムを持っているあの昆虫についてのお話です!

〜「珍奇な昆虫」のなかですごくおもしろかったのが、たとえば「超個体! ハキリアリ」。じつはこの番組でも以前にこの昆虫を取り上げていて、葉を切り取って巣に運んで、キノコを育てる昆虫ということは紹介しているのですが、それだけじゃないんですよね。分業制が成立しているとか?
たとえば、いちばんおもしろいのは、年寄りのアリと若いアリとで分業しているんです。年寄りのアリは、悲しい話ですが、死が近いんですよね。だから危険な仕事に就くんです。たとえば巣を出て、外にいって何かを運んでくるとか、巣のなかでゴミが出るんですが、ゴミにはいろんな菌がついていて、その菌がアリに付くと死んでしまうんです。ですから、そのゴミを外に出す係は全部歳をとったアリなんです。若いアリは中で卵や幼虫の世話をしたり、巣の中をきれいにしたりするという作業をしているわけです。もちろんいちばん大事なのは女王の世話ですが、そういうのは全部若いアリがやっているんですね。

〜お年寄りをいたわるんじゃないんですね!?ハキリアリは自分の体の5〜6倍も大きい葉をアゴで切って運ぶじゃないですか。あれはどっちですか?
あれはちょっと成長したアリですね。アリたちは葉に菌がついていないかというのをすごく敏感に調べるんです。たとえば、雨に当たると、雨に入っていた菌が付くかもしれない。そうすると葉を全部放棄するんです。菌がついているかもしれないから。
それからもっとおもしろいのは、葉に寄生する小さいハエがいるんですが、葉を運んでいるときに、その葉に卵を産み付けて巣の中に運び込まれてしまうと、そのハエの幼虫はアリを食べてしまうんですね。それを防止するために、運んでいる葉の上に、一匹小さいアリが守ってるんです。そのハエが寄ってくると、体を乗り出して追い払うんです。だから行列をずっと見ていると、必ず葉の上に1〜2匹乗っていますね。


〜ものすごい社会がそこにはあるんですね。でも、すごい大所帯じゃないですか。コミュニケーションはとっているんですか?
そのへんはまだよくわかっていないのですが、ハキリアリは特に音を出してコミュニケーションをとってるんですね。おいしい葉と切り取ってはいけない葉って決まっているらしいんですが、一匹がいい葉を見つけて切り始めると、音をだすんです。人間の耳に聞こえるくらいの音です。それは仲間に「この葉はいいぞ!」って知らせているんです。そうするとみんなが寄ってきて、その葉を切りまくるという。それを巣に向かって運んでいくんですが、そのとき、運んでいる途中で敵が襲ってきますから、守る兵隊アリがいるんですね。守る兵隊アリはすごく頭が大きいんです。頭の中は筋肉なんですが、大顎を動かす筋肉がびっしり入っているんです。ですから、噛む力が強い。
そして、たとえば行列をしているときに、から枯れ葉が落ちてきたりすると、それを片付ける係もいるんです。わーっとその枯れ葉に寄ってきて、それを引っ張ったり、切り刻んだりして、道をきれいにするんですね。だから、ハキリアリの行列は、本当にハイウェイのようなきれいな道なんですよ。「あ、ここはハキリアリが通った場所だ」ってわかるくらいですね。


〜だから「超個体」ってついているんですか。
全体でひとつの人間みたいな動きをしてるっていうことですよね。それぞれが何らかの意識を持ってるかどうかわかりませんけれども、うまくコミュニケーションをとりながら、ひとつの仕事をやっている。ひとつの仕事とは何かというと、巣を維持する。次世代を残すっていうことですよね。

〜なんだか企業みたいですね。全部うまくレーンができているといか。ほかにも、アリでいうと、他の昆虫を育てるアリもいるんですか?
はい。日本にもたとえばシジミチョウっていう小さい蝶がいるんです。日本には250種類くらいいるんですが、そのなかの5種類だけアリに育てられる蝶がいるんですよ。幼虫がアリの巣の中に運び込まれて、アリからエサを口移しでもらって、サナギになって、巣から羽を広げて飛び立っていくと。

〜アリには何の得があるんですか?
巣の中にいるときに、蝶の幼虫は甘い蜜をだすんです。シジミチョウとしては、土の中って外敵がいないですよね。だから、自分を守るという意味ではとてもプラスなんですね。
日本ってすごく蝶の研究が盛んだったのですが、その5種類は、地上から様子が見えないので研究されてなかったんです。それをじゃあやってやろうと思って、約10年かかって生態を全部写真に撮って本をつくったことがあります。難しかったですね。まず、どこにいるかわからないから、アリの巣を掘りまくるんですよ。だから、肉体労働者ですね(笑)。もうカメラなんか持たないで、スコップとツルハシを持って。たとえば、夏になると蝶が飛んでますよね。そうすると、この辺にいるんだなと見当をつけて、秋から春にかけての地下にいる時期に掘るんです。3年くらいかかったかな。最初に見つけたときはもう、涙が出ました。でも、単に見つかった!っていう写真なので面白くない。それで巣をアリにつくらせて、それにガラスをはめ込んだりして、なかでお互いにコミュニケーションをとったり、エサを上げてるところを撮影したんですね。


〜その5種類の蝶というのは、全部アリの巣から生まれるんですか?
4種類はアリの巣のなかから出ていきます。残りの1つはエサをもらったりするんじゃなくて、ガードマンにアリを雇っているんですよ。おそらく匂いか何かを出しているんでしょうね。「もしかしたらエサをあげるかもしれないよ〜」と言いながら、アリを騙して四六時中付き添わせているんです。そのアリは非常に獰猛なアリなんで、自分を襲ってくる敵をやっつけてくれるんですね。きれいな蝶ですよ、オレンジ色の。

今回のお話いかがだったでしょうか。来週も引き続き山口進さんのインタビューです!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・What Lovers Do ft. SZA / Maroon 5
・Waitin' on the Day / John Mayer
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パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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