第51回 錯覚で起こる交通事故

2016/03/24
交通事故の原因の多くはドライバーの不注意。
でも、中には人間の性質に基づく「錯覚」が引き金となる事故もあります。
今回は武蔵野大学 工学部 数理工学科 友枝明保 准教授にお話を伺い
「錯覚で起こる交通事故」を追跡しました。

友枝准教授も「錯覚によって起こっている交通事故はたくさんある」と考えているとのこと。
「ドライバーの見落とし不注意ということで片付けられている可能性があるので、
そこを掘り下げていきたいと色々と調べている段階」だということです。
「交通事故多発地点は、そういう種が潜んでいるのではないかと思う」とのこと。
そうはいっても事故を起こしてしまえば、それはドライバー責任になります。
ということは、クルマの運転において「どんな錯覚が起きうるのか」
知識として持っておき、その時に備える必要があります。


 『コリジョンコース現象』 

「コリジョン(collision)」は英語で「衝突」という意味。
田園地帯のような見通しの良いところで2本の道路が十字に交差している時、
2台の車が隣り合う道路を同じ交差地点に向かって同じ速度で走っていると
なぜかブレーキを踏むことなく2台が衝突してしまう現象。

これは人間の目の特性によるもの。
人間がものを見る時には「中心視野」と「周辺視野」があります。
中心視野は自分の正面の部分で物を詳しく見る機能。
周辺視野は中心からちょっとズレた部分、
物を詳しく見るというよりは動いている物に敏感に反応する、
何かが迫って来ている時に反応するような機能。

『コリジョンコース現象』は、ドライバーから見るともう一方の車が
ずっと同じ角度を保ったまま、進んでくるので、止まっているように感じます。
もしかすると、その存在に気がつかないことすら、あることでしょう。
そこで、何事もなかったかのように交差地点に向かうと、
もう一方のクルマと衝突してしまうというわけです。


『縦断勾配錯視』 

異なる傾斜が連なった坂道、たとえば緩い登り坂の後に急な登り坂がある時に
登り坂なのに下り坂に見えたり、逆に下り坂なのに登り坂に見える目の錯覚現象があります。

映像で見たことがあるでしょう。
登り坂に見える道路に空き缶やボールを置くと坂を登っていく。
あれも『縦断勾配錯視』。
クルマの運転では、下りに見えて登り坂の場合、危険はありませんが、
登りに見えて下り坂だと「危険あり」です。

これは異なる2つの傾斜の道路が連なっているというところがポイント。
例えば、急な下り坂の後にゆるい下り坂があると、
道路を横から見るとVの字になっています。
すると、自分の道路に対して向こうの道路、遠い方の道路がV字なので、
あたかも登っているように見えますが、実際は下り坂なのです。
登り坂だと思ってスピードを勢いつけて登ろうと思うと、
実は下り坂なのでスピードがのってしまうので危険です。
この『縦断勾配錯視』。日本全国にあるそうですから注意して下さい。


『車線の錯視』

これは登り坂を上走っていて、向こうが丘になっていて、先の道路が見えない状況。
坂の頂上から道が左に1車線分カーブしていたとすると、
クルマが坂を登りきった地点では、
これまで進んできた直線の先に対向車があります。
「危ない!」と思って、左側には道路の幅がありません、
道路の幅がある右側にハンドルを切ると、
対向車線に入って、本当にぶつかってしまう・・・という現象です。

錯覚を避けることはなかなかできない
こうした錯覚があることを安全のために覚えておいて下さい。