第111回 無電柱化と交通安全

2017/05/11

2017年は「無電柱化元年」と言われます。
去年暮れに『無電柱化推進法案』が国会で成立したからです。
無電柱化には多くのメリットが指摘されています。
その1つが交通事故の防止・対策。
そこで、今週は『無電柱化と交通安全』を追跡しました。

お話を伺ったのは
NPO法人 電線のない街づくり支援ネットワーク 
事務局長の井上利一さんです。

今、日本には3552万本の電柱があります。
無電柱化率はわずかに1%。
ヨーロッパを見るとロンドンやパリは100%電柱がありません。
アジアではソウルで42%、北京で34%。
日本は無電柱化に関してはかなり遅れているのです。

電柱に起因する社会の損失。
それは以下のようなものです。


⬛️ 地震・台風などで電柱が倒れ 物的損害・人的損害を生む

⬛️ 最近、緊急医療に活躍するドクターヘリも電柱があると着陸できない

⬛️ 歴史的な街並みなど美しい景観を損なう


そして、今回の主題。
電柱があることによって起こる「交通災害」。

電柱が道路に立っていると道路を有効に使える幅が1/3ほど狭まり、2/3しか使えません。
そうすると、車も人も自転車も、そこを一緒に通るので接触する可能性が高まります。
また、子供の視点では電柱が視界を遮ることがあります。
見切り行動でパッと飛び出してして交通事故に遭うというケースも報告されています。
そして、国土交通省のデータによると壁に当たった事故と電柱に激突した事故では、
電柱に激突した方が車の損傷が激しいので死亡事故になる確率が10倍高くなります。

「電柱をなくす」ということは「電線を地中に埋める」ということですが、
こうして電柱があることのディメリットをあらためて考え、
なくした時のメリットを考えると無電柱化を急いで進めた方が良いように思えます。

ところで、電柱には電力会社が管理する「電力柱(でんりょくちゅう)」と
NTTが管理する「電信柱(でんしんばしら)」の2タイプがあります。
なぜ、日本の無電柱化は進まないのか?

これまでのやり方だと1kmあたり5億円の費用がかかると言われています。
例えば電柱をたくさん持つ電力会社としては、、
莫大な費用もかかる話なので、なかなか積極的に進めることはできません。
現状では、電線を地中に埋設する費用は1/3ずつ、
国・道路を管理する行政区域・電線管理会社が負担しています。
この構造は諸外国と比べると特殊なのだそうです。
海外では電線管理者が自らの費用で全て無電柱化しているとのこと。
国の法律が出来ることによって、後ろ盾が出来たわけなので、
色んな政策を出していって無電柱化を進める姿勢が必要でしょう。
その1つとして低コストの手法を開発中。
コストを下げて 進めていこうという動きになっています。

今のスピードで100%無電柱化すると5000年ぐらいかかるそうです 
それでは冗談にもならないということで、
井上さんたちNPO法人 電線のない街づくり支援ネットワークでは、
設立された10年前、50年で主なところを無電柱化する「チャレンジ50」という目標を掲げました。
法律が出来た今、一層、無電柱化を進めようと活動をしています 。