第296回 運転時の急ぎの心理

2020/11/27
もうすぐ12月。
12月は年末の慌ただしさのせいか「1年で最も交通事故が多い月」です。
車の運転は急ぐことで危険が高まるので要注意。
今週は「運転時の急ぎの心理」についてお伝えしました。





お話を伺ったのは東北工業大学 名誉教授で、
日本交通心理士会 前会長 太田博雄さん。

急いだ運転をしないためには、
前提として気をつけておくべきことがあります。


1)きちんと計画を立てる

2)慌てて出発しない


急いでしまった時に、顔を出すのが危険な運転です。
典型的なことはスピードの出し過ぎ、飛ばしてしまうこと。
また、早く進みたいと気が急いて車間距離を狭めがちなこと。

また、急ぐことで省略行動が起こります。
一時停止しなくてはいけなければいけないのにせずに進む。
左右両方をきちんと確認しないとけないのに片方だけ確認して進む。
さらに車は来ないだろうという予測の元に運転するなど。
身に覚えはありませんか。





急ぐ運転で必要になってくるのは、より高度な運転の技能と危険予測力。
でも、いつもより早く走り、安全確認もおろそかで、気持ちは焦っている。
ふだん以上の運転技術と危険予測力を発揮できるはずはありません。
その上、急ぎたい心理は多くの人が思っている以上に役に立たないのです。

通常で約30分かかる12.5kmの道路を急いだ場合、
どのくらいの時間が短縮できるか? 実施した超長があります。
協力したのはプロのタクシードライバーたち。
事前のアンケートでは5分から10分は短縮できるという回答が多かったそうですが、
いつも通りの運転と急いだ運転でかかった時間を比較したところ
平均の差はたった2分45秒だったそうです。

その僅かな短縮時間を得ることと
事故を起こすリスクを背負って急いで運転すること
天秤にかけてどちらを取るべきかは自明のことのはずです。





感情をコントロールは、太田先生によると難しいもの。
まずは急ぎやすい、慌てやすい、焦りやすい傾向があるか
客観的に判断して自分自身についての正しい理解を持ちましょう。
その急いでいる自分を客観的にとらえることによって
「今、ちょっと危険にあるな」という認識ができます。

そして、会議に間に合わない、何かに遅れてしまうといおう不安材料がある時は、
怒られるかもしれませんが電話連絡などをして急がないで運転できる状況を作りましょう。
さらに感情のコントロールは難しいので、肉体を利用して気持ちを整えましょう。
深呼吸は自ずと体をリラックスさせ。体のリラックスは心のリラックスへ繋がります。

人間のDNAには急ぐことができる個体が、
”危険から逃れられる”あるいは”獲物を得られる”
つまりは“生き残れる”という記憶が太古から刷り込まれているそうです。
また、子供の頃に何かにつけ親から「急ぎなさい!」と言われて育った人もいるでしょう。
そんなことから「急ぎ体質」が沁みついるているかもしれません

でも、車の運転は急ぐほどに危険が高まるだけです。
急がない運転を日頃から目指しつつ、
交通事故が多い12月、交通安全をいつも以上に気をつけましょう。