第397回 坂道の適切な運転

2022/11/11
多くの人は、ふだんはあまり運転しないかもしれない“坂道”。
ドライブや行楽で出かけた先で走行することになった時、
平坦な道路と同じ気持ちで運転していませんか?
今回は自動車ジャーナリスト 高根英幸さんを伺い
「坂道の適切な運転」をお伝えしました。





交通事故全体に占める坂道での事故の割合は 5%。
ところが、死亡事故に限ると坂道は10%に跳ね上がります。

そもそも交通事故は 6 割以上が見通しの良い平坦な直線道路で起きています。
これは油断することで事故が起きてる証拠。
それに対してカーブや坂道は運転に注意するので事故の割合としては少ない。
しかし、事故が起きたとすると重大化する危険が高いのです。





坂道には「上り坂」と「下り坂」がありますが、
事故が多く起きているのは「下り坂」。
スピードが出てハンドルを切り損ねる恐れもありますし
ブレーキに問題が生じて効かなくなる恐れもあります。
「フェード現象」「ペーパーロック現象」と呼ばれる
2つのブレーキトラブルについて覚えておいて下さい。


【フェード現象】

ブレーキは摩擦力によって運動エネルギーを熱に 変えています。
従って、ブレーキを多用すると摩擦材が高温状態になって摩擦力が低下します。
このブレーキパッドが焼けてしまった状態をフェー ドと言います。
フェード現象はブレーキを冷却しなければ摩擦力は復活しません。
このようにならないようブレーキ使用回数を抑えて走行する必要があります。


【ペーパーロック現象】

ペーパーロック現象はフェード現象に似ていますが
ブレーキペダルを踏んでも効かないフェード現象に対して
ブレーキペダルを踏んでも踏みごたえがなくなるのがペーパーロック現象です。
これは油圧ブレーキのフルード(液体)が蒸発して気泡になり、ブレーキの油圧を吸収してしまい、
これによってブレーキが抜けたようになっている状態。
フルードを新しい ものに交換しないと解決しません。


これらを踏まえて下り坂の走行では、
なるべくフットブレーキを使わずにエンジンブレーキを多く使用しましょう。
AT車の場合はDレンジで通常走行していますが
それを5・4・3・2とギアを固定できるモードがあるので
それを使ってエンジンの抵抗で速度が上がらないようにすることがエンジンブレーキです。
速度が上がってからエンジンブレーキで減速するのは難しいので
速度が上昇しないように走ることが大事。
一気に速度をある程度強めにブレーキかけて落とし、
その速度をエンジンブレーキで維持するような走り方が理想です。





続いて上り坂を走行する時の注意点。
頂上付近には駐車場や人が集まる場所があることが多いもの。
そこへ近づくまでは見通しが悪いので、そのままの速度で到着すると
歩行者や交差点の車などに気付いという危険があります。

頂点に近づくと傾斜が緩くなるので
そのままアクセルを踏み続けてるとスピードが出過ぎる可能性があります。

上り坂での坂道発進には気を使うと思いますが
最近の車にはブレーキペダルから足を離してもブレーキを維持しながら
楽に坂道発進できるヒルホールド機能がついています。
しかし、これは10秒ぐらいの一定時間だけキープできるもの。
ブレーキペダルを踏み忘れていると下がってしまうこともあります。

オートマチック車の場合「クリープ」と言ってアクセルペダルを踏まなくても
前に進む力が伝わっているので坂道を上がりやすいですが
急勾配だと車が下がってしまうことがあります。
その場合はアクセルペダルを踏んでエンジンの回転を上昇させられますが
それだけでは前に飛び出す危険もあるので、ブレーキペダルも左足で軽く踏んだり
パーキングブレーキを軽く使うことも取り入れてください。

前の車がずるずると下がってきてしまうこともあるので、
上り坂での一時停止は車間距離は十分取って停止することが大事です。





最後に法規上のことをお伝えしておくと
坂の頂上付近や勾配の急な坂では、一時停止等の指定がある場合を除いて、
駐停車が禁じられています。

また、法律上の規定はありませんが、狭い坂道ですれ違いが難しい時は、
坂道発進が大変な上りのクルマが優先。
下りのクルマは道を譲るようにしましょう。

これからの冬。
凍結した坂道はさらに危険です。
安全な坂道走行を心がけてください。