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ことのいきさつ約束の月曜日約束のアーティスト発表楽曲制作プロジェクト発足

第9回 3月19日更新 back top next
『やま かた山×片』制作日誌
SCHOOL OF LOCK!

その日。
福島へ向かう新幹線の中は、大きめの荷物を抱えた人々でごった返していた。

一人一人がどんな想いを抱え、どこへ向かうのか。
そんなことは分からない。

確かなことは、一つだけ。
それぞれに、それぞれの物語があるということ。

2012年3月10日。

里菜ちゃんは、郡山の駅前広場のステージにいた。

ふくしまFMが主催するイベント。

広場には、局や企業のブースのほかに、自衛隊のブースなども。
そして、その真ん中には、日本各地から訪れた人々の寄せ書きボード。

SCHOOL OF LOCK!


里菜ちゃんは、出来上がったばかりの曲を届ける場所として、この場所を選んだ。

この曲を誰より早く、直接歌って届けたかった相手。

それは、曲をつくっている最中に何度も浮かんだ、
自分を支えてくれている、地元の人々。

ステージ上から、里菜ちゃんが語りかける。

「私は、この郡山の駅前でよく弾き語りをしていて……"いつか、あっちのステージで歌いたいな" なんて思っていたので、今日はこのステージで歌えて、嬉しいです。」

柔らかい拍手。

LIVEは、"夏の夜" からスタート。
声が、郡山の空に響く。

駅前の喧噪をかき消すように。
全てをそっと、包み込むように。

※ ※ ※ ※

当日の持ち時間は、わずか十数分。
あっという間に、最後の曲に。

「次の曲は……」
この日最後の曲紹介。

曲をプロデュースしてくれた山田先生のこと。
この曲を人前で歌うのは、今日が初めてだということ。

そして。

「この曲は、去年の震災のことも考えながらつくりました。」

慎重に言葉を選びながら、ゆっくりと想いを伝える里菜ちゃん。

「自分なんかが、そんなことを口にしていいのかとか、いろんなことを考えたんですけど………」

人々は、ステージ上の彼女を真剣に見つめている。

「今日は、地元が、この福島が、元気になってほしいという想いを込めて歌うので…聴いて下さい。"始まりに"。」

再び、声が辺りを包む。

広場を越えて、駅の構内へ。
ちらつく雪をすり抜けて、近くのビルの中にまで。

歌は、聴こえているのだろうか。
想いは、届いているのだろうか。

それぞれの物語を抱えた人々に、この音楽は、どう響くのだろうか。

※ ※ ※ ※

歌が終わった。

少しの間を置いて、暖かい拍手が、空に響く。

ちらつく雪は、いつの間にか止んでいる。

里菜ちゃんは、にっこり笑って、ステージを後にした。

「今日の感想? そうですね……」

ステージを降りて、ホッとした表情を浮かべた里菜ちゃんは、少しはにかみながら。

「みなさんの笑顔を見て、私自身も、元気になれた気がします。」

2012年3月10日。

少なくとも、一人の唄うたいにとって、この日は記念すべき日になった。

つづく

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