Play You
ことのいきさつ約束の月曜日約束のアーティスト発表楽曲制作プロジェクト発足

第10回 3月29日更新 (最終回) back top next
『やま かた山×片』制作日誌
SCHOOL OF LOCK!

【 “始まりに” 】
〜Play You.Label presents春夜祭 2012 AFTER REPORT〜

その日。

東京は、少し分厚い上着を着てうろちょろしていると、
すぐに汗ばんでしまうような、
まさに“春”と呼ぶのにふさわしい陽気だった。

春。

新しい景色。新しい仲間。

寂しい別れの後に、
ドキドキした出逢いを運んで来てくれる、
全ての“始まり”の季節。

新しい環境。新しい感情。

それぞれが、ぞれぞれの“始まり”をどこかに感じながら、
この日、僕らは集まった。

※ ※ ※ ※

開場の数時間前。リハーサルがスタート。

里菜ちゃんの表情が、カタい。

「めちゃくちゃ緊張してます……」

プロジェクトがスタートしてから、およそ2ヶ月。
今日は、みんなの応援に背中を押されながら完成した楽曲を、
みんなに向けて届ける、大切な一日。

ココロに渦巻く、言葉にならない感情たち。

その一つ一つと戦いながら、入念なチェックを繰り返す里菜ちゃん。

 ここまでの日々を思い返しながら。
いつかの風景を心に描きながら。

(……よし。)

開場まで、あと少し。 
SCHOOL OF LOCK!

P.M. 17:00

定刻通りにイベントはスタート。

いつものギターチャイムを合図に、校長と教頭がオンステージ!
会場パンパンに集まった観客を、盛り上げるべく喋る喋る喋る!

SCHOOL OF LOCK!

そして、“春夜祭”恒例の出席チェック!
ナント中には、北海道、さらには、沖縄から来てくれている生徒も!
(さらに、里菜ちゃんのご両親も!!!!!)
SCHOOL OF LOCK!

文字通り、日本全国から集まった生徒たち。
そんなみんなの目当ては、もちろん……。

「今日、みんなに来てもらった理由は分かってるな?
よし、じゃあ、早速、LIVEを届けてもらいましょう!
…………片平 里菜!」

校長の声をきっかけに、照明が落ちた。

※ ※ ※ ※

暗闇にまだどよめきが残る中、里菜ちゃんが登場。

既に表情に迷いや恐れはない。
いや、少なくともはた目には、全くそう見えない。

ギターの音が鳴る。

―“夏の夜”。

照明が、里菜ちゃんの姿を優しく照らす。
声が会場全体を包み込む。

観客のココロはあっという間に、いつかの夏の夜に逆戻り。

SCHOOL OF LOCK!

去年の9月を思い出す。

一つのデモテープをきっかけに、
日比谷野外大音楽堂でのファイナルステージまで登り詰めた里菜ちゃんの姿。

数千人の前で、堂々と歌を届けてくれた里菜ちゃんの姿。

そして、ステージの後、自分のLIVEに納得ができず、
人知れず、涙を流していた里菜ちゃんの姿―

あれから、まだ半年も経っていない。


しかし、目の前にあるのは、まぎれも無く、
あの頃からまた一つ、大きく成長した唄うたいの姿。

SCHOOL OF LOCK!

「こんばんは、片平 里菜です。」

短い自己紹介を終え、少しだけ呼吸を整えて、
再びギターを鳴らす。

2曲目は“tiny room”。

既にこの頃には、来てくれた生徒みんなも、すっかり里菜サマの虜。

小さな体から放射される、圧倒的なパワー。
繊細で力強い、音楽の神様に愛された歌声。

これが、やしろ教頭もベタボレした(笑?)、片平 里菜のチカラ。

優しい時間はあっという間に過ぎ、続いてが最後の曲。

次に歌う曲についての想いを少し話し、
里菜ちゃんは、大切な人の名前を呼ぶ。

「やまだせんせい…!」

呼びかけに応じて、ステージに、山田先生が登場。

いつもの通りの優しい表情。
その姿はまるで、“先生”というよりも、娘の晴れ舞台を見届けにやって来た父親のよう。

そして、再び音が鳴り始める。

"始まりに"。

里菜ちゃんの声とギターの音に、山田先生のベースの音が重なる。

かたや、少し前まで、郡山の路上でLIVE活動を続けて来た、無名の唄うたい。
かたや、日本を代表するロックバンドのベーシスト。

年齢も環境も全く違う2人が、今、ここで、同じ音を刻んでいる。

この2ヶ月、とんでもない過密スケジュールの中で刻んだ日々を想いながら。
いや、何よりも、目の前にいる全ての人の“始まり”を想いながら。

そういえば今回、イベントに参加してくれた生徒の中からもらったメールの中に、こんな感想があった。



里菜ちゃんの曲を聴くと、「かんばれかんばれ」とただ背中を押すだけでなく、「みんな同じように歩いていて、みんながいるから大丈夫だよ」ということを囁いてくれて、手をつないでくれているように感じます。


確かに。
この曲が流れている間のみんなの和らいだ表情は、大切な誰かと手をつないでいる瞬間の優しい顔によく似ている。

"始まり" の後には "終わり" があって、その間には、数えきれないほどの日々がある。

辛いことだって少なくない。
いや、そっちの方が多いかもしれない。

だけど、僕らは“始める”ことをやめない。
闇の中に手を伸ばすことをやめない。

"始まり" の先にあるものを信じて。
まだ観たことのない景色を夢見て。

 誰かと手を取り合い、共に歩みながらー

※ ※ ※ ※

演奏が終わった。
一瞬の静寂。その後に、大きな拍手が会場を包む。

鳴り止まない歓声の中、
里菜ちゃんと山田先生は一瞬目を合わせ、少しはにかみながら、ステージを後にした。

これから数年後。
里菜ちゃんは今日のLIVEのことを、どんな風に覚えているのだろう。

"片平 里菜"。

新たな地平へ向かって動き始めた彼女の物語は、まだ、始まってもいない。

SCHOOL OF LOCK!


おわり

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