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ON AIR BLOG / 2016.03.09 update


今日は、「保育園落ちた」と絶望的な気分を叫んだツイッターをきっかけに、国会も動かし、次々とプラカードを持って立ち上がるママさんたちにフォーカス。今日は、毎日新聞夕刊編集部、堀山明子さんに解説していただきました。

Q:「一億総活躍社会じゃねーのかよ。昨日見事に保育園落ちたわ。どうすんだよ私活躍出来ねーじゃねーか」と叫んだ匿名のブログが共感を広げ、国会デモにまで発展したそうですね。
A:ちょっと乱暴な言葉づかいのブログ、「私活躍できねーじゃねーか」という言葉に、働きたいのに機会を奪われた疎外感や怒りが込められてますよね。ブログが投稿されたのは2月15日なのですが4万6000件以上の「いいね!」が広がっています。

Q:強い言葉ではないと届かないのでは?
A:打てば響く政治ではないですからね。実際、この問題を2月末に国会で質問された安倍首相は、ブログが匿名であることを理由に「実際に起こっているのか確認しようがない。これ以上議論しようがない」と突き放し、議員席からは「本人を出せ」とヤジも飛びました。この対応に憤った市民が先週末の3月5日、「保育園落ちたの私だ」とプラカードを持って国会に集まりました。保育制度の充実を求めるインターネット署名運動も始まって、1週間足らずで2万7000人以上集まりました。さらには、保育園が広がらない背景に保育士の劣悪な労働環境があるという状況を訴えようと、「保育士辞めたの私だ」というツイッターへの賛同も広がっています。


Q:昨年1月にフランスの週刊誌「シャルリー・エブド」がイスラム過激派によるテロに遭った時、フランス市民が連帯の思いを込めて「私はシャルリー」とプラカードを掲げましたが、そんな感じの運動ですね。
A:ツイッターに「保育園落ちたのは私だ」というハッシュタグができたのは、安倍首相がつれない答弁をした2日後の3月2日です。当事者でなくても連帯表明として「私だ」と叫んでもいいですし、ネット署名のタイトルは「保育園落ちたのは私と私の仲間だ」というタイトルにして、多くの人が参加できるようになっています。こうした連帯が広がる中で国会デモが起きたのですが、呼びかけた人は50代女性で、「20年前の私だ。明日国会に行く」とつぶやいたのがきっかけです。デモを呼びかけたのではなく、「私は国会に行く」と宣言しただけなんですね。それを見て自然発生的に集まった。報道をみると、実際に赤ちゃんを抱えた看護師の女性が、復職したいのに保育所10カ所落ち続けたと訴えていました。子供のいない人も他人事ではない、と参加しました。

Q:「待機児童ゼロにしよう」というような標語は耳にしますが、実際にはどれだけの人が保育所に入れずに空きを待っているのでしょうか?
A:厚生労働省が発表した昨年4月現在の統計によると、全国で2万3000人以上います。保育所の定員は233万人で、毎年5万人前後定員枠を増やしていますが、利用者が増えるスピードに全然追いついていないのが現状です。働く女性が増えているので利用者が増えるのは当然ですが、その見通しが甘いとしか言いようがない。しかも、この待機児童の数え方が自治体によってバラバラで、国が認可した保育所に入れなくて仕方なく認可外保育所に入った人、子供を預けられなくて育児休業を延長した人は待機していることにされなかったりする場合もあります。だから、潜在的な待機児童はもっと多いはずです。

Q:子育て支援の基盤をしっかりせずに、女性活躍と言われても、活躍できない、どうするの私、と叫びたくなりますよね。
A:4月から女性活躍推進法が施行され、雇用者300人以上の企業は女性管理職の比率だとか、勤続年数の男女差だとか、様々なデータを公表しなければならないことになっています。女性幹部を増やし、産休後の職場復帰を促すために企業にプレッシャーをかけているわけです。でも、企業の努力だけで女性は活躍できませんよね。今回の叫びは、その意味でもとてもタイムリーで、子育てと仕事を両立させて活躍する社会をつくるにはどうすればいいか、問いかけていると思います。

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