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ON AIR BLOG / 2017.05.31 update


今日のトピックスは「日本のサザエが新種と判明?」 このコーナーのサイエンスニュース担当、 毎日新聞・専門編集委員、青野由利さんに解説していただきました。

Q: 今日は日本のサザエが新種だったという話。 そんなことってあるんですか?

A:そうなんです。 不思議な話ですが、「日本のサザエには、これまで正しい学名がついていなかった」「なので、今回、岡山大の貝の分類学の専門家である福田宏先生が、 新しい学名をつけなおした」という話。


Q:どういうこと?

A:まず、20年ほど前まで、 日本のサザエと韓国や中国に分布するサザエは同じひとつの種だと考えられていました。その学名が「Turbo cornutus(トゥルボ・コルヌトゥス)」でした。ところが、1995年に日本と韓国のサザエは同じ種だけど、中国のサザエは種が違う、 ということが日本の研究でわかったんですね。そこで、中国のサザエは新種として「ナンカイサザエ」(種名は Turbo chinensis)と つけられました。ところが、今回、福田さんが、最初にサザエに「トゥルボ・コルヌトゥス」という 名前がつけられた時の原典を見直してみたところ、びっくりすることがわかったんです。

Q:それはいつのこと?

A:1786年、英国の僧侶で博物学者のライトフットさんという人が名付けたんですが、それに載せられていた図をちゃんと見ると、「ナンカイサザエ」の図だったんです。


Q:つまり、中国に分布するサザエだった?

A:そうです。つまり、1995年に「ナンカイサザエ(Turbo chinensis)」と 名付けられた中国のサザエこそが、 もともとの「サザエ(トゥルボ・コルヌトゥス)」だったということになります。
 


Q:でも、なんで日本のサザエの方が「トゥルボ・コルヌトゥス」だと思われてきたの?

A:それは、1848年にロンドンの貝類学者であるリーブさんが、 日本のサザエの絵を示して、これが「トゥルボ・コルヌトゥス」だとしたからです。

Q:そこで、日本のサザエに新しい学名をつけることになった?
A:そうなんですが、さらにややこしい話があります。このリーブさんは、有名なシーボルトが日本で採取したトゲのないサザエに 「トゥルボ・ジャポニカス」という、いかにも日本産らしい名前をつけていました。


Q:このリーブさんがあわてんぼうだったということなんでしょうか?
A:どういう人だったのか、興味がありますが、いったん誰かが間違うと、 それが伝言ゲームで伝わっていってしまうという話でもあります。整理すると、1786年に、 ライトフットさんが中国のサザエに「トゥルボ・コルヌトゥス」と学名をつけた。それなのに、それから60年後にリーブさんが日本のサザエの絵に 「トゥルボ・コルヌトゥス」を対応させてしまった。それが、ずっと尾を引いてきた、という話なんです。なので、日本のサザエは「トゥルボ・ジャポニカス」でいいじゃないか、 となりそうなんですが、なんと、このリーブさん、何を勘違いしたか、 モーリシャス産のサザエも、この「トゥルボ・ジャポニカス」という名前で 呼んでしまっていたんです。今では、モーリシャス産のサザエが「トゥルボ・ジャポニカス」 だということになっていて、もう日本産のサザエにはつけられないということに。というわけで、日本のサザエの学名がなくなってしまったので、 今回、新たにつけなおして、「トゥルボ・サザエ」となった、というわけです
。

学名って意外とラフな感じで付けられてるというのにびっくり。 *サザエのつぼ焼きを食べるときにこのストーリーを思い出すようにします(笑)

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