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ON AIR BLOG / 2017.08.09 update

今日のトピックスは「ゲノム編集でヒトの受精卵の遺伝子変異を修正した」というお話。 毎日新聞専門編集委員、青野由利さんに解説していただきました。

Q:ゲノム編集でヒトの受精卵の遺伝子変異を修正した??
A:そうなんです。日本ではあまり大きなニュースになっていませんが、ゲノム編集の将来を占うできごとかもしれないなと思いました。

Q:どういうことでしょう?
A ゲノム編集技術のおさらいをすると、狙った遺伝子を自在に編集できる技術でした。これまでも、遺伝子組み換え技術で、遺伝子組み換え作物を作ったり、 人間で遺伝子治療を行ったりしてきましたが、ねらった遺伝子を、 思い通りに操作するのは至難のわざでした。効率も悪く、すごく手間暇がかかりました。

Q:ゲノム編集は、それに比べて、効率がよく、簡単に、正確にできるんでしたね?
A:はい。中でもクリスパー・キャス9という技術は、従来の組み換えに比べて「簡単で正確、効率がよく、安い」という技術なんです。

Q:それを、今回はヒトの受精卵に使った?
A:そうなんです。アメリカのオレゴン健康科学大学などの国際チームが行った実験で、遺伝性の肥大型心筋症を起こす原因遺伝子を標的にしました。 若者の突然死につながることのある病気です。まず、この遺伝子変異を持つボランティアの男性から精子を提供してもらい、 それとは別にボランティアの複数の女性から遺伝子変異のない卵子を提供してもらい、 試験管の中で受精しました。その時に病気の遺伝子を標的とする クリスパー・キャス9もいっしょに入れたんです。そうしたら? A:精子が持っていた遺伝子が、正常な遺伝子に修復されたというんです。58 個のうち 42 個の受精卵で修復できたということで、効率は72%。かなりのものです。

Q:この受精卵から子どもを育てれば、病気にはならない?
A:理論的にはそういうことになりますが、今は遺伝子を操作した受精卵を子宮に戻して育てることは禁じられています。生まれてくる子どもにとって、本当に安全かどうかわかりませんし、 安全だとしても、世代を超えて伝わるような遺伝子を操作していいのかどうか、 意見は分かれています。でも、今回のニュースを聞いて、遺伝性の病気を持つ人の中には、 この方法を使ってみたいと思う人が、やがてでてくるかもしれません。

風邪もひかない、病気もしない時代が来る???もちろん病気が亡くなる人が減る、という意味では、ポジティブに捉えたいもの。
と、同時に倫理的に触れてはいけない、人間の神秘の部分にタッチし始めたところに一抹の怖さも感じます。
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