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ON AIR BLOG / 2018.10.10 update

「本庶佑さんにノーベル賞!」のニュースについて。毎日新聞専門編集委員 青野由利さんに解説していただきました。

Q:今年のノーベル賞が発表されましたね!
A:今年のノーベル医学生理学賞は、京都大の本庶佑さんと、アメリカ・テキサス大学のジェームズ・アリソンさんに。いつ受賞してもおかしくない業績なので、いつかは受賞すると山はかけていましたが今年だとはわからず。

Q:どういう業績なんでしょう?
A:ひとことでいうと、体の免疫の働きを利用した新しい「がん治療法」を開発した、というもの。がんの治療法は、これまで、外科治療、放射線治療、抗がん剤治療の3つがあって、それに加えて、免疫細胞の攻撃力を高める方法が研究されてきました。でも、これまでの「免疫療法」は、顕著な効果が確実にみとめられないままでした。本庶さんとアリソンさんが考えたのは、逆転の発想。それぞれ注目したのは、免疫細胞の一種であるT細胞が持つ「ブレーキ役」の分子です。


Q:T細胞?
A:T細胞は、がん細胞を異物として攻撃する働きがあるが、攻撃にブレーキをかける分子ももっていて、がん細胞がそのブレーキを踏むと、攻撃ができなくなってしまう。本庶さんが見つけたブレーキは、「PDー1」と呼ばれる分子。アリソンさんは、別のブレーキ分子「CTLA-4」を研究していました。いずれも、1990年代の話。

Q:随分前から研究をされていたんですね?
A:二人とも、「このブレーキをブロックしまえば、T細胞の攻撃力が高まる」と考えて、それがブレーキ分子にフタをする薬剤の開発に結びつきました。本庶さんの場合は、これが「オプジーボ」(一般名はニボルマブ)でした。聞いたこと、ありますよね?悪性の皮膚がんであるメラノーマを皮切りに、肺がんや腎臓がん、胃がんなどに効果があることがわかりました。アリソンさんの研究も、やはりブレーキをブロックする治療薬に結びつきました。これらの薬は、「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれますが、そこに至るまでに、アリソンさんも本庶さんも、共通して苦労したことがあります。

Q:・・・というと?
A:大手の製薬企業が関心を示してくれず、薬を開発してくれるところが見つからなかったこと。最初にアリソンさんと組んで治療薬を開発したのは、ベンチャー企業で、本庶さんの場合も、このベンチャー企業が関心を示したことが開発のきっかけになったそうです。

政府からの開発援助も潤沢ではない中、今回の受賞は本当にすごいこと。本庶佑を含めて研究者の方が日々努力している先にあるのは、がんで苦しむ人が少しでも減るように。という思い。ガンの特効薬や万能薬が出る日が来ることを願って研究者の方々を応援したい。


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