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ON AIR BLOG / 2018.12.05 update

今日は、このコーナーサイエンスニュース担当、毎日新聞専門編集委員、青野由利さんに解説していただきます。

Q:今日は中国の研究者が、「ゲノム編集で遺伝子操作した受精卵から、双子の女の子を誕生させた」という話ですね。
A:びっくりしました。世界中から批判が噴出しましたが、当然。この研究者は、中国・南方科技大学の賀建奎さん。先週、香港で開かれた「第二回ヒトゲノム編集国際サミット」という学術集会で、発表しました。

Q:どんな内容だったのでしょう?
A:夫がエイズウイルスに感染していて、妻は感染していない7組のカップルを対象に、体外受精をするときに、ゲノム編集の技術で、「CCR5」と呼ばれる遺伝子を改変したとのこと。

Q:ゲノム編集とは?
A:以前から「遺伝子組み換え」の技術はありましたが、細胞の中にある染色体の狙った遺伝子を正確に改変することはできませんでした。ランダムな場所に入ってしまって、遺伝子治療ではがん化が問題になることも。でも、ゲノム編集の「クリスパー」と呼ばれる技術が登場し、「正確に、手軽に、安く」ねらった遺伝子を改変することができるように。賀さんは、このクリスパーで受精卵を編集したんですが、CCR5が何かというと、エイズウイルスが感染する時の「入り口」。なので、その遺伝子を破壊すると、入り口がなくなって、エイズウイルスが感染できなくなるんです。

Q:なぜ、批判が噴出したのでしょう?
A:理由はたくさんあります。 まず、受精卵の遺伝子を改変しても安全かどうか、今の段階ではわからないから。生まれる子どもに思わぬ異常が起きる恐れがあります。しかも、改変した遺伝子は、その子どもだけでなく、子孫に伝わっていきます。さらに、今回編集したCCR5ですが、受精卵にそんな編集をする医学的な必要性はまったくありません。なぜなら、父親がエイズウイルス感染者でも、体外受精で、子どもに感染させずにすむ方法があるから。この研究者は、きちんとした倫理的な審査も受けていなかったのではないかと思われます。

その子供がどんな風に育つのか?心配。。。 そのあとの人生にどんなことが待ち受けているのか?人知を超えた世界なんであまりに怖すぎます。

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