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THE ONE 音楽界の偉人を毎週1人ピックアップ。アーティストの持つ世界をみつめます

2010年9月12日(日)
EGO-WRAPPIN’
Calling me / EGO-WRAPPIN’
「Calling me」
EGO-WRAPPIN’
中納良恵さんと森雅樹さん2人によるユニット、EGO-WRAPPIN’。ジャズやキャバレーミュージックなど、昭和の気配を色濃く残したサウンドで、デビュー当時から異彩を放つ、そんなバンドです。EGO-WRAPPIN’の結成は、大阪。友人の紹介で二人は出会い、1996年に結成されました。彼らのユニット名、「EGO-WRAPPIN’」という言葉は、彼らが好きなアーティスト、デ・ラ・ソウルが、インタビューの中で「最近の若者はEGO-WRAPPIN’が多い」・・・と発言しているのを聞いて、付けたそうです。このインタビューの中では、「自分を出さない」という例えで使っていましたが、二人は「エゴを包む」とも取れるこの言葉を気に入って、ユニット名にしたんだそうです。
幼いころからピアノを習い、「ザ・ベストテン」ごっこをして育ったヴォーカルの中納良恵さん。兄の影響から幅広い音楽を聞き、ドラマーとしてバンドを始め、ファッションの専門学校に通っていた森雅樹さん。二人の感性が融合して生まれるサウンドは、ジャズ・ソウル・昭和歌謡など、様々なジャンルの要素が絶妙なセンスで溶け合い、私たちの心に響いてきます。
BRAND NEW DAY / EGO-WRAPPIN’
「BRAND NEW DAY」
EGO-WRAPPIN’
今では、大阪を離れ、東京に住む二人ですが、デビューから14年が経ち、一番変わった事。それは、気持ちの穏やかさなんだそうです。中納さんは、大阪で活動していたころは、常に何かに対して怒っていたと振り返っています。しかし最近、気持ちがとても穏やかなんだそうです。「とにかく、こんなに人をいとおしいと思ったことはなかった。」と。
彼女たちの心の変化に対応するように、曲作りのスタンスも変わっています。2人が曲作りで心がけている事、それは自分たちが今、旬だと思う事を取り入れ、どれだけ正直になるか、どれだけ裸になれるかを追求すること。結成した当時は面白い事を歌おうと、奇をてらったり、頭でいろいろと考えて曲作りをしていたそうですが、現在は沸き上がる感情を、なるべくシンプルに表現することに力を注いでいるそうです。言葉では説明できない複雑な情感をシンプルに歌えるよう、心をフラットにして、気持ちの流れを捉えるやり方。穏やかに、自分の心に手を当てることができるからこそ、始められたスタイルです。
通算7枚目となる今回のアルバム。EGO-WRAPPIN’が自然体で吐き出すユーモアたっぷりの世界観は、私たちの期待を裏切らない、ジャンルレスの広がりを持っています。
色彩のブルース / EGO-WRAPPIN’
「色彩のブルース」
EGO-WRAPPIN’
順風満帆に、音楽の世界を渡り歩いてきたEGO-WRAPPIN’。ユニットを結成した1996年からの14年で、危機はなかったのでしょうか?
彼らは、1996年にエゴラッピンを結成し、98年にはインディーレーベルから初の音源をリリースし、活動を広げていました。そして、当時わき起こっていたインディーズミュージックへの注目も相まって、2000年にリリースされた「色彩のブルース」で、彼らは一躍注目を集める存在となりました。そんな彼らのファーストブレイクのタイミング、「色彩のブルース」を作っていた頃が、2人にとって一番の危機だったんだそうです。ユニットを結成して4年。当時、2人の間ではケンカが絶えませんでした。音楽に対する熱い気持ちが空回りし、お互いがお互いの細かな所に口を挟む・・・。2人のバランスは崩れ、ボーカルの中納さんは、「色彩のブルース」をリリースしたら、EGO-WRAPPIN’を辞めようと思っていたんだそうです。怒りと悲しみが混じった彼女の気持ちは、そのまま歌詞へと繋がっていきました。しかし、そんな悲しい気持ちで書いた「色彩のブルース」で、2人は一気にブレイク。戸惑いながらも、周りからの励ましや、曲への高い評価を受けて、もう一度、しっかり頑張ってみようと、気持ちを入れ直すことが出来たそうです。中納さん自身も、いまだに不思議な曲だと思うという「色彩のブルース」。愁いを漂わせるサウンドが、まるで煙のように心の隙間に入り込み、私たちを酔わせていきます。知らず知らずのうちに、2人の魅力に侵されていく私たち。ライブで直に観客と触れることができ、ユニットをやっていてよかったと、気持ちを入れ替え、楽しくやってきたからこそ救われたと感じているそうです。
結成から14年。EGO-WRAPPIN’の音楽は、「昭和の香り」とよく言われますが、昭和というより、日本の音楽の歴史を感じさせてくれるユニットなのではないでしょうか?心のままに音楽と向き合うことで、2人が消化してきた日本の文化・伝統が、ミックスされて表れる音楽。「素のままで行くのが一番いいでよね。シンプルってすごいです。」そう語るEGO-WRAPPIN’。彼らが作るハイブリッドな音楽は、これからも、私たちに元気を分けてくれることでしょう。
今夜は、EGO-WRAPPIN’をピックアップしました。