みらい図鑑

VOL.336「ゆうれい寿司」

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山口県宇部市の山合いにある吉部地区(きべちく)に、
江戸時代中頃から伝わる「ゆうれい寿司」。

角型の押し寿司なのですが、
具を混ぜたり、乗せたりせずに、“真っ白な酢飯”のみでつくることから、
ゆうれい寿司と呼ばれています。

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現在も棚田の美しい景観が残る吉部地区。

古くから良質なお米の産地で、
具を入れなくても美味しい寿司が、地域の行事の際につくられてきました。

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「日本海と瀬戸内海の、ちょうど、真ん中あたりの地域なんですけどね。
山間部なので、やっぱり、山水を利用してお米を作っているので、
それこそミネラルが豊富なんでしょうね。
お米が美味しい地域なんですよ。」

そう話すのは、宇部市楠地区の「生活改善実行グループ」の、
井上清美代(いのうえ・きみよ)さん。

ゆうれい寿司を作り続けて、
次の世代へと伝える役割を担う、地元のお母さんたちのリーダーです。

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現在、このグループがつくっているゆうれい寿司は、
“表面は真っ白な酢飯”という特徴を残しつつも、
何層かに分かれた酢飯の中に具を入れたり、
表面に少し飾り付けをしたり、と、現代風にアレンジして、
見た目にも美しい仕上がりになっています。

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「いまは、みなさん、口が肥えていらっしゃるから、
私たち、イメージを変えて、二段重ねのお寿司にしましたけどね。

山のものを利用して、しいたけ、たけのこ、わらび、
そういう具を炊いたお寿司を下の段にして。
上の段は、昔ながらの、真っ白な寿司にして。

ぜひね、ずっとあるものですからね、
このゆうれい寿司、続けてほしいなと思います。」

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宇部市を代表する郷土料理でありながら、
地域の高齢化や後継者不足により、
その存続が危うくなってきているというゆうれい寿司。

生まれも育ちも吉部という井上さんは、
そのお米の美味しさと共に、いつまでも残っていてほしい、と話してくれました。

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“のっぺらぼう”の白い酢飯の押し寿司は、
自然の恵みと、地域を愛するお母さんたちの想いの証なんですね。

VOL.335「菊花せんこう」

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1977年の創業以来、40年以上に渡って、
無添加食品の製造・販売をおこなっている、「りんねしゃ」。

愛知県津島市に本社を置くこの会社が手掛けているのが、
100%天然成分の蚊取り線香、「菊花(きっか)せんこう」です。

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「菊花せんこう」の主な成分は、除虫菊。

かつては世界の生産量の大半を日本が占めていましたが、
今では、激減している花です。

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「りんねしゃ」が、除虫菊を初めて収穫したのは、1997年。

その頃、すでに日本には、栽培する農家がほとんどいなかったため、
日本人から除虫菊の栽培法を伝授された中国の農家と契約し、
除虫菊の栽培をスタート。

2001年に「菊花せんこう」の販売がはじまりました。

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その後、北海道に自社農場を構えた「りんねしゃ」。

環境と人に優しい無農薬栽培にこだわって、
除虫菊だけでなく、ハッカの栽培もおこなっています。

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「りんねしゃ」の大島幸枝(おおしま・さちえ)さんに、
「菊花せんこう」のエピソードを語って頂きました。

「ずっと昔から使っていただいているお客さまに、
あるとき、電話をいただいたことがあるんですね。

自分の大好きなおばあちゃんが、夏になって、この菊花せんこうの香りを嗅ぐと、
自分たちや孫が小さかった頃の話をしてくれて、
“ああ、夏が来たね”って言ってくれるという。

おばあちゃんの記憶の中に菊花せんこうの香りが残っていて、
思い出してくれるのが嬉しい。
だから施設に持っていって、線香を焚いているんです、
という話をしてくれて、それを伺ったときは、すごく嬉しかったですね。」

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化学成分・着色剤不使用で、自然な色味が特徴の「菊花せんこう」。

虫を殺すのではなく、嫌がる煙を焚くことで、虫を“遠ざける”という発想は、
暮らしと向き合う人にやさしいモノづくりを目指す「りんねしゃ」の、
創業以来、変わることのない想いです。
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