VOL.216「日本で唯一、手作業で生糸を生産する宮坂製糸所」
古くは、絶世の美女・クレオパトラも愛したといわれる「シルク」。
その原料は、「蚕の繭」です。
蚕のエサとなる桑を栽培し、
蚕を育て、蚕が吐き出す繭を紡いで生糸を作る「養蚕業」。
かつて、日本では養蚕業が盛んでしたが、時代の変化と共に激減。
今ではとても貴重な産業となっています。
繭から生糸を作る「製糸工場」は、現在、日本に4工場ありますが、
そのなかで唯一、伝統的な、昔ながらの手作業で、生糸づくりをおこなっているのが、
長野県岡谷市にある「宮坂製糸所」。
3代目の高橋耕一さんに伺いました。
「じつは、いま、日本で流通しているシルクの99%は外国産なんですよね。
主に、中国産なんです。
養蚕農家も全国で300軒を切っていまして、
産業としては成り立たないぐらい、風前の灯なんです。」
外国産に圧されている養蚕業ですが、
高橋さんは、日本ならではの優れた点がある、といいます。
「日本には、お蚕さんに関わる貴重な歴史や技術、糸取り、
それを織って製品にする技術があります。
それは本当に、世界に誇れるものがあるんですね。
やはり、繭づくりから糸にして製品にするまで、
その循環をしっかりと残すことが大事じゃないかと思います。」
非常に高級な繊維として扱われているシルク。
機能性にも優れていて、
天然繊維の中でも特に保温性があり、蒸れないのが特徴です。
シルクは、“良質な素材”というイメージがあっても、
実際のところ、普段、身に纏う機会は、なかなかありません。
そこで、若い人にも、気軽にシルクの良さを感じてもらいたいと、
「宮坂製糸所」では、メイドインジャパンの「シルク石鹸」を作りに乗り出しました。
「その優しい手触りを、ぜひ、体験して欲しい」と、
高橋さんは語ります。
繊維だけでなく、石鹸や化粧品など、
機能性を活かした様々なアイテムに姿を変えるシルク。
使うたびに、その良さを実感できそうですね。